「文壇の貴公子」といわれる島田雅彦。今回は彼の代表作6作品をご紹介します。

矛盾した感情が己の中に共存するもどかしさ、それは人間としての未熟さではないでしょうか。周囲との距離感を測ることができず、臆病で自虐的になる姫彦。そんな姿に思わず同情してしまうかもしれません。読者それぞれの青春時代を想起させてくれる作品です。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
- 2001-07-30
高等遊民のような生活を送る先生は自分に厳しく、菊人をはじめとする周りの人物が期待や愛情をかける様子が丁寧に描かれています。稀代の嘘つきである先生とその周囲にいる変な人達に振り回されていく菊人。後半の先生による日記のリアリティは秀逸です。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
「考えられる限り、もっとも危険で、甘美で、それを描くことが難しい恋」と著者は語っています。この作品に描かれた恋は、その言葉にふさわしいもの。まっすぐな恋愛は、苦々しくも、また非情にも、そして美しくも映ります。世代を超えた恋愛を基盤に、日本という国家の近代史を描き直した力作です。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
- 2006-12-22
凄惨なシーンでさえ読み進めさせる筆力には思わず唸ります。世界の闇から目を離すのではなく、その闇と対峙し、対処法を考えるべきだということに気付かされるでしょう。前近代的なシャーマンと、現代の暴力による犠牲者の少女、そして現代を象徴するバイオレンスであるテロリズムを同じ枠組みの中で繋がり、展開させる筆力に魅せられること間違いなしです。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
- 2012-09-20
見どころは、明かされる諜報や政権の秘密はさることながら、島田の描く隣国との付き合い方です。至極綿密に、かつ鮮やかに描いています。そのアプローチはユニークながら、リアルであり、思わずはっとさせられる瞬間を迎えることも幾度とあるでしょう。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
- 2015-09-25
ある朝、ホームレスの男は目が覚めたら足元に100万円が置いてあるのを見つけます。男は突然の幸運を神に感謝し、新しい服を買い美容院に行くのですが、男の持つお金が公にできるものではないと見抜いた若い男性美容師は、友人と共謀して男からお金を強奪し、2人でキャバクラに行き豪遊するのでした。
ホームレスの男は一度大金を手にしたことから以前の生活に戻る気力がなくなり、ガソリンスタンドに火を放ち爆死します。2人の男が豪遊したキャバクラで働くモネは、その晩に受け取った給料を持って実家に帰るのですが、父の農業は破産寸前、母は病気で入院治療費が必要な状況でした。モネは給料を父親に渡し、そのお金を持って銀行に行った父は、偽造紙幣を持っていたとして警察から呼び出されるのです。
- 著者
- 島田 雅彦
- 出版日
- 2013-09-13
警視庁第二課ではマネーローンダリング組織の摘発が強化されており、陣頭指揮を執る日笠警部は、裏社会で「銭洗い弁天」の異名を持ち、表向きは宝石商を営む女社長の店に部下の宮園エリカを潜入させます。優秀なエリカはすぐに女社長の信頼を得て裏の事を教えてもらえるようになり、女社長に同行した中国で、数億の資産を持つと言われる野々宮という若い日本人男性の投資家を紹介されるのでした。
一方、日笠警部は日本で発見された偽札の調査を進めるうち「彼岸コミューン」という自給自足の団体の存在にたどり着きますが、その団体に多額の資金を提供しているのが野々宮だと判ります。野々宮はかつて「彼岸コミューン」に所属していたのです。日笠とエリカの双方から見えてきたのは、野々宮が企む日本国家を根底から揺るがす巨大な陰謀でした。
悪貨は良貨を駆逐するということわざのごとく、悪意は善良な人間を踏みにじり、巨大化した悪は濁流のごとく非力な一般人を飲み込んでいきます。各国で貨幣偽造が重罪とされるのは、人ひとりの人生を破壊するだけに止まらず国家の転覆にすら発展するおそれがあるからなのです。もはや物々交換の時代には戻れない、お金に頼らずには生きていけない我々に警鐘を鳴らす衝撃作です。
いかがでしたでしょうか。イケメン作家島田雅彦の作品を、この機会にぜひ楽しんでみてくださいね。