森鴎外は夏目漱石と並んで近代日本文学を代表する小説家です。昔の文学を普段あまり読まない方、難しく考えないでください。鴎外の作品はとてもドラマティック。現代でも楽しめるものがたくさんあります。 ところで、青空文庫についてご存知ですか?これは、著作権が消滅した作品のテキストを無料で公開しているインターネット上の電子図書館です。 今回は、青空文庫で読める森鴎外のおすすめ小説を集めてみました。味わい深い世界観をお楽しみください。

「お母あさまとご一しょに岩代を出てから、わたしどもは恐ろしい人にばかり出逢ったが、人の運が開けるものなら、よい人に出逢わぬにも限りません。お前はこれから思いきって、この土地を逃げ延びて、どうぞ都へ登っておくれ。」(『山椒大夫』青空文庫より引用)
- 著者
- 森鴎外
- 出版日
- 2014-02-27
「どうぞ堪忍してくれ。どうせなおりそうにもない病気だから、早く死んで少しでも兄きにらくがさせたいと思ったのだ。笛を切ったら、すぐ死ねるだろうと思ったが息がそこから漏れるだけで死ねない」(『高瀬舟』青空文庫より引用)
- 著者
- 森 鴎外
- 出版日
弥一右衛門は優秀ながらなんとなく忠利にとって「合わない」人間だったのです。たびたびの殉死の願いも退けられ、やがて忠利は亡くなります。すると殉死しない弥一右衛門に対し、周囲からは「命が惜しいのだ」という、陰口がたたかれるようになるのです。憤慨した弥一右衛門はある日、家族を集め、その場で切腹してみせるのでした。
- 著者
- 森 鴎外
- 出版日
しかし、その淡々とした文章表現が実に面白いんです。エッチな本を見ていた近所のおばさん、父親の部屋で見つけた性器の部分だけ拡大されたイガガワしい本、男子寮で男に迫られ、危うく手籠めにされそうになった話、吉原での初体験の末、病気が怖くて震えていた話などなど、普通に考えればむちゃくちゃ下世話に聞こえる話題を鴎外はまるで涼しい顔をして書くのですから、逆に滑稽なのです。
- 著者
- 森 鴎外
- 出版日
「あの裂けた紅唐紙の切れのぶら下っている下は、一面の粟稈(あわがら)だ。その上に長い髪をうねらせて、浅葱色(あさぎいろ)の着物の前が開いて、鼠色によごれた肌着が皺くちゃになって、あいつが仰向けに寝ていやがる。」(『鼠坂』より引用)
- 著者
- 森鴎外
- 出版日
- 2016-07-31
この話は怪談めいていますが、幽霊や怪奇現象は起こりません。話にでてくる登場人物からおおよその筋は読めてしまいます。それなのに、最後まで読み手を引き付ける筆力。なによりすばらしいのが、この『心中』全体に作用している、「ひゅうひゅう」という擬音です。
- 著者
- 森鴎外
- 出版日
- 2016-07-31
森鷗外は、渋江抽斎という人物像にこの上ない興味を惹きつけられ、ありとあらゆる方法ですべての情報をかき集め調べあげました。抽斎に対して、親愛、畏敬、敬慕などの根深い気持ちがあり、この最高傑作の史伝を仕上げたのです。
抽斎は、医学を伊沢蘭軒、儒教を狩谷エキ斎らに学び、弘前藩医を経て、幕府医学館蠐寿館の講師となり、「医心方」の校訂にあたりました
また考証学に通じ、森立之(りっし)らと『経籍訪古志』(全8巻。日本に伝わる漢籍の所蔵・伝来・体裁等を記したもので、江戸期における書誌学最高の業績ともいえる書)を表し、他に種痘治療法を記述した『護痘要法』などの作品があります。
約30年、よどみなく書き連ねて来た『経籍訪古志』。「経籍」とは漢籍のこと、「志」は現在であれば「誌」とか「目録」とも言います。
抽斎は医者であり、官史であり、経書や諸子のような哲学書も読み、詩文集のような文芸書も読み、多種多様なキャリアを身につけていました。
名前は全善、幼名は恒吉、字は道純、または子良、通称を道純と言います。また、抽斎というのは号であり(今で言うペンネーム)、他にもいくつかの号を使用していた模様です。
生涯で4人の妻を持ち、1人は離縁し、2人は死別し、そして最後の妻である五百は抽斎没後の渋江家を守り、1884年に息を引き取りました。数々の武勇伝を残し、抽斎の手となり足となり誠心誠意支えました。
- 著者
- 森 鴎外
- 出版日
- 1999-05-17
この史伝は、全部で119節からなり、抽斎という像を明らかにしようとする鷗外のひたむきな奮闘努力が滲み出ています。森鷗外は抽斎家系の墓まで調べ、谷中の感応寺まで足を運びます。
そして抽斎に対して羨望と自立の尊厳を感じ、達成しがたい人間の暖かさ、生きることのぬくもりを痛感したようです。
非常に様々な文筆活動を行った森鴎外。青空文庫では翻訳物を含む彼の100を超える作品が公開されています。ここで紹介したのは比較的読みやすい森鴎外の作品ですが、鴎外って難しくない、おもしろいと思われた方は他の作品も発掘してみてください。