3位: 戦争の追体験ができる
中公文庫から出版されている大作『レイテ戦記』は、レイテ島における日本軍8万4千人の戦死者の鎮魂歌です。
一兵卒の視点から書く小説とは違い、レイテ島攻防を「兵士の視点を重視」しつつ全体像を明らかにしていきます。その都度差し込まれる地図と詳細な時間経過を頭に入れながら読み進めて行くと、戦場のイメージが広がっていきます。つまり小説としての面白さよりも、歴史書としての面白さに重点が置かれているわけです。
- 著者
- 大岡 昇平
- 出版日
- 1974-09-10
太平洋戦争の天王山と呼ばれたレイテ島戦は、実は大本営のレイテ島放棄の決意によって早い時期に負け戦は決定していました。大本営としては、米軍の本土攻略が現実味を帯びていたこの時期にレイテ島どころではなかったのです。
補給もなく、作戦もない兵隊が敵に囲まれた島の中。ただただ飢え死にを待つ者もいました。自ら爆死を選ぶ者もいました。歩ける者は日本兵の死体を道標として、裸足で山中を彷徨いました。天皇陛下からの賜りものである小銃を捨て、飯盒のみを持っての行進でした。
公式の報告書などはもちろんのこと、生還者の証言、当時の司令官の日記、回想録などの資料をもとにして書かれた『レイテ戦記』。先の大戦での軍部への強い批判のこもった歴史小説といえるでしょう。
2位: 大岡昇平による推理小説
戦争作家のイメージの強い大岡昇平。ここで氏の残した秀作の中から、当時の推理小説の最高傑作を1編ご紹介します。何人かのアドバイザーと共に書き上げた本小説は、幾度か映像化もされました。1978年の映画版では日本アカデミー賞作品賞をはじめ、数々のタイトルを獲得しています。
- 著者
- 大岡 昇平
- 出版日
- 1980-08-27
事件は神奈川県の田舎町で起こります。単純な刺殺事件であると思われたこの事件には、複雑な事情が絡んでいました。その謎を解いていく、ベテラン弁護士菊池。「自白」のある殺人事件は、公判中に菊池の手で姿を変えていきます。はたして司法は真実にたどり着けるのでしょうか?
徹底的なリアリズムを描き出す本書。読み手は裁判を見守る傍聴人として参加している気分になれるでしょう。日本推理作家協会賞を得た、深く考えさせられる上質な推理・裁判小説をぜひ読んでみてくださいね。
1位: 大岡昇平による圧倒的リアリズム!
圧倒的リアリズムを描く大岡昇平の第1位は、『野火』。2位から5位までの作品で描かれたリアルとの違いを感じていただければ嬉しい限りです。2度の映画化で話題にもなりましたから、どのような内容なのかをわかっておられる方も多いでしょう。しかし映画では当然のように表現がマイルドになっています。本書はぜひ文字で読んで、おののいてください。
- 著者
- 大岡 昇平
- 出版日
- 1954-05-12
行くアテが「死」しかなくなったとき、それが極限の飢餓が理由だったとき、人は人を喰うのか……? フィリピン・レイテ島での敗残兵の生還率は、約3%といわれています。主人公田村は「猿」の干肉を戦友と焼いて喰います。その肉の正体を知っていながら……。
極限状態の人間の行為はどこまでが許容の範囲なのでしょうか。敵を殺す。殺した敵を喰う。原住民を殺す。殺した原住民を喰う。死んだ戦友を喰う。戦友を「殺して」喰う。宗教や哲学をもってしても答えの出にくい問題です
もちろんレイテにおける人肉食の実態も未だ明らかにはされていません。愚かなのは人肉食ではなく、そこに追い込んだ戦争そのものなのでしょう。本書で、あなたなりの答えを導き出していただければ幸いです。