美しく繊細な文章で独特の空想を描写し、読むものの心に残る、梶井基次郎の作品。数々の優れた短篇を世に遺し、今なお人気が衰えることはありません。 ここでは、そんな梶井基次郎の、魅力溢れるおすすめの短篇をご紹介していきましょう。

1901年、大阪生まれの梶井基次郎は、父親の転勤に伴い、転居の多い子供時代を送ります。教育熱心な母親に育てられ、学校での成績は優秀。人柄も良く、周りの人たちからもたいへん好かれていたようです。夏目漱石に大きく影響を受け、作品のほとんどを暗記してしまうほどだったのだとか。
1925年、同人らと創刊した雑誌「青空」で、『檸檬』を発表しますが、当時はあまり評価されませんでした。肺の病気に苦しめられ、度々高熱で寝込むこともありましたが、周りには元気に振舞っていたようで、文学仲間のまとめ役として頼りにされていたのだそうです。
20篇余りの短篇を執筆した梶井基次郎は、仲間たちの奮闘もあり、次第に評価され始めますが、1932年、結核のため31歳の若さでこの世を去ります。梶井基次郎の作品が、多くの作家たちから賞賛されたのは、梶井が亡くなった後のことでした。
ふと目に入った八百屋に、檸檬を見つけた「私」は、それを購入することにしますが、その場面の描写がとても素敵です。「レモンエロウの絵具をチューブから絞り出して固めたようなあの単純な色、あの丈の詰まった紡錘形の格好」と表現された、「私」が好きだという檸檬。その色彩のイメージが、鮮やかに脳裏に焼きつき、静かに淡々と語られているにもかかわらず、効果的にインパクトを残しています。
- 著者
- 梶井 基次郎
- 出版日
- 2013-06-21
作品を通して、自暴自棄に陥っている主人公の姿が切なく、頭の中をめぐる空想は、暗く澱んでいます。「うっとりとした生の幻影で私を騙そうとする太陽」の光を、「だらしのない愛情」と表現する描写に惹きつけられ、太陽が沈み、静まり返った杉林の中で、研ぎ澄まされた感受性を芽生えさせていく様子が印象的です。
- 著者
- ["梶井 基次郎", "北條 民雄", "中谷 孝雄"]
- 出版日
- 2011-03-10
不安になる程美しすぎる桜も、その下に屍体が埋まり、その養分を吸い上げて咲いていると想像すれば、そのあまりの美しさにも納得できるという発想が、なんとも魅力的ではないでしょうか。
- 著者
- 梶井 基次郎
- 出版日
猫の爪をすべて切ってしまったらどうなるか、という空想は「私」を悲しくさせ、爪のない猫なんて、空想を失った詩人と同じだと嘆くのです。作品を通して暖かい雰囲気が流れ、優しい気持ちにさせてくれる、梶井基次郎の本作。猫が好きな方だったら、思わず共感してしまうことでしょう。
- 著者
- ["中島 敦", "梶井 基次郎"]
- 出版日
太陽の光でも電燈の光でもなく、「月の光が一番いい」と話すKが印象的で、不安定でぼんやりとした影を追うKは、本当に神秘的な存在に感じられ、今にもその姿が消えてしまいそうなのです。
- 著者
- 梶井 基次郎
- 出版日
- 2015-06-10
梶井基次郎のおすすめ短篇をご紹介しました。とても短い作品たちですが、魅力がぎゅっと凝縮された傑作ばかりです。梶井基次郎の作品に興味があるという方は、ぜひ読んでみてくださいね。