選考委員も絶賛した美しい文章と巧みなストーリー展開を持つデビュー作『夜市』は直木賞候補となり、その後も立て続けに山本周五郎賞候補、吉川英治文学新人賞候補に挙がるなどして文壇の注目を集め続ける恒川光太郎。今回はその作品の魅力を紹介します。

一読して一番に感じるのは、その文章の無駄のなさ。幻想的でありながら、冗長さが一切感じられない文章力の高さは、デビュー作とは思えないすばらしい完成度です。そしてその端正な文章で綴られるのは、人の業の深さとその虚しさ、人の弱さ、強さ、悲しさと、決してハッピーエンドとは呼べないけれど心に小さく温かな灯がともるようなエンディングです。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2008-05-24
「穏(おん)」という隔絶された村に住む少年が、ある事件をきっかけに「穏」を追われ、少年に取り憑く「風わいわい」という物の怪とともに旅に出る、というストーリーの本作。ストーリーが進むにつれて、「穏」の秘密やある日忽然と消えてしまった少年の姉の秘密が明かされていき、ページを繰る手が止まらなくなります。そして「穏」を追われた少年を待ち受ける最後とは……。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2009-08-25
タイムループ、限定状況に置かれた人間の起こす悲喜交々。使い古されたテーマではありますが、恒川の手にかかるとこれが今までの作品とはひと味もふた味も違った瑞々しい作品となります。妻の不貞を知ってしまった男のドロドロとした感情、仲間内での不協和音、そんな負の側面もきちんと描きつつも、信頼できる仲間だけでの楽しい旅行やそこはかとない恋愛感情などの爽やかな印象が残る良作です。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2010-09-25
地続きの不思議な世界と、そこに迷い込んだ者が抱える深い業。それらを淡淡と描く無駄のない筆致。そして連作短編ならではの、そこかしこに散りばめられた他作品との繋がり。これぞまさに王道と呼ぶべき、恒川の魅力が凝集されたファン必読の作品です。また連作とはいえ短編集ですから非常に読みやすく、「手軽に恒川作品の魅力を知りたい」という方にもお薦めの一作です。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2011-04-26
「金色様」と呼ばれる謎の存在を通して人の善と悪、生と死などのテーマを扱う、恒川作品としては少々珍しい重厚な作品となっています。しかし無駄のない文章、独特の世界観は健在。章ごとに変わる主人公と、時代が次第に結びついていくストーリー展開も、恒川ならではのものです。恒川の新境地を知る、という意味では中級編としてお薦めの作品です。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2016-05-10
日常と地続きの非日常を描くことの多かった恒川作品とは大きく違う舞台設定の本作ですが、しかしそこはやはり恒川作品。読み進むにつれ、ただのSFとはひと味違う恒川ワールドに引き込まれて行くことになります。
- 著者
- 恒川 光太郎
- 出版日
- 2014-08-30
6作品の紹介、いかがでしたでしょうか。この機会にぜひ恒川光太郎を手に取ってみてください。