名作と称され文庫化されたミステリー小説は数多く存在しています。驚きのトリックが用意されていたり、独特な文章技法が使われていたり、何度も読み返しても面白い作品ばかりです。その中でも中毒性を持つオススメのミステリー小説をご紹介します。

2002年に文庫化された東野圭吾の『白夜行』は本編854ページにも及ぶ長編ミステリー小説です。ドラマ化や映画化までされた事で有名になり、東野圭吾作品の中でも最高傑作と言われるほど異彩を放った内容になっています。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
- 2002-05-17
1998年に文庫化された『すべてがFになる』は、工学博士であり推理作家でもある森博嗣が手掛けた理系ミステリー小説です。森博嗣は本作『すべてがFになる』でデビューし、メフィスト賞を受賞しました。
- 著者
- 森 博嗣
- 出版日
- 1998-12-11
推理作家・綾辻行人のデビュー作『十角館の殺人』は俗に『館シリーズ』と呼ばれる作品の第1作目になります。1987年に出版され2007年に新装改訂版が出版され、本作『十角館の殺人』の登場は「綾辻以降」という言葉が誕生したほど日本のミステリー界に衝撃を与えました。
- 著者
- 綾辻 行人
- 出版日
- 2007-10-16
2010年に文庫化された『インシテミル』は、同年に映画化された小説として一般的には知られています。「本格ミステリ・ベスト10」では4位、「このミステリーがすごい!」では10位を獲得し、本格ミステリー大賞の最終候補まで残った作品です。
- 著者
- 米澤 穂信
- 出版日
- 2010-06-10
湊かなえの3作目『贖罪』は2012年に文庫化し、日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門にノミネートされた作品です。各章ごとに事件に関わった1人1人の独白スタイルになっていて、それぞれの思いが手紙のように綴られています。
- 著者
- 湊かなえ
- 出版日
- 2012-06-06
現在、様々なジャンルの作家として知られる乙一のデビュー作『夏と花火と私の死体』は、乙一が16歳の時に書いたことでも知られた作品です。時代背景や人物の書き分けなどがしっかりとされている事が評価に繋がり、ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しています。
- 著者
- 乙一
- 出版日
2002年に文庫化した『ハサミ男』は殊能将之のデビュー作であり、メフィスト賞を受賞した作品です。2005年には、豊川悦司・麻生久美子の主演で映画化もされました。
- 著者
- 殊能 将之
- 出版日
- 2002-08-09
それから40年後、飯田美沙子という女性が占星学教室を開いていた御手洗潔の元に相談にやって来たのです。その内容は、自分の亡くなった父親が40年前の事件に関わったという手記を見つけてしまったというものでした。珍しく興味を持った御手洗が調査を始めるのですが……。
- 著者
- 島田 荘司
- 出版日
- 2013-08-09
同時期、将虎は後輩の芹澤清から想い人の久高愛子の相談に乗ってほしいと連絡を受けます。その相談というのは、先日事故で亡くなった祖父の死に不審な点があるというもの。その事故に詐欺集団・蓬莱倶楽部が関係し、祖父が保険金詐欺に巻き込まれていた証拠を手に入れて欲しいというものだったのですが……。
- 著者
- 歌野 晶午
- 出版日
1998年に文庫化した宮部みゆきの『火車』は、カード破産やサラ金などの多重債務に陥って人生を翻弄される女性とその女性を追う刑事を題材にした内容で、映画化やTVドラマにもなった作品です。多重債務によって自分が自分でなくなっていく心理描写は秀逸。普通の人間が普通の幸せを求めた結果、罪を犯してしまうという苦しい胸の内を見事に描いているため、罪人と分かっていながらも憎む事が出来ません。
- 著者
- 宮部 みゆき
- 出版日
- 1998-01-30
警察ならピシッと手帳を掲げて「○○署の者だ、大人しく投降しろ!!」。探偵なら関係者の不安げな視線を集めながら「犯人は、お前だ!!」。こんなカッコイイシーンを演じてみたいと思った事はありませんか?しかし、映画やドラマならともかく、実際にはなかなか見かけないものです。
しかし、こんな夢を実現するべく無駄な努力をする警察や探偵を見つけてしまいました。それが烏賊川市警の志木・砂川コンビと探偵の鵜飼・戸村コンビです。志木刑事に到っては、わざわざパトカーの中で犯人連行の予行練習を何度も行っているような人です。しかし、いざその時になると駄目になってしまうのは世の常でしょうか。そんな彼らが活躍する作品をご紹介いたします。
- 著者
- 東川 篤哉
- 出版日
事の発端から既にコントのような展開なのですが、読者の皆さんの楽しみを奪わないように簡単に説明すると、烏賊川市警の志木刑事と砂川警部の失態により密造拳銃が何者かに持ち逃げされてしまいます。流石に焦る志木に対し警部は、拳銃の使い道なんてそう沢山ない、出来ればコンクリートに向かって使って欲しいなどとのんびり構えていましたが、殺人は起きてしまいます。
拳銃による被害者は名門・十乗寺家の屋敷で花婿候補にまで及びました。しかも、部屋に通じる通路には常に不特定多数の目がある衆人環視の密室!!刑事と探偵達も、時には真剣に事件解明に奔走します!!
ミステリ小説に堅苦しいイメージをお持ちの方には、是非とも読んで頂きたい作品です。
ミステリを探していると、ついつい館や城といった単語が入ったタイトルに惹かれてしまうと、よく聞きます。何故ならミステリの舞台においてこの2つはそれほどに魅力的なのです。
そして今回ご紹介する作品ですが、アリス・ミラー城とくれば、もう本を開く前からワクワクしてしまいます。そして期待を裏切らないのがこの城です。鏡の国のアリスの舞台のように、合わせ鏡の部屋・チェス盤をイメージしたタイル・小さなアリス・ドアの部屋……。もし実在するのなら、是非一度は行ってみたい所ですね!!
- 著者
- 北山 猛邦
- 出版日
- 2008-10-15
そんな夢のような城に集められたのは8人の探偵達です。城の持ち主でもあるルディの依頼はただ1つ。城の何処かにあるアリス・ミラーを探し出す事ですが、しかしそれを手に入れられるのは最後に残った者のみという不吉なルールがありました。
そして集められた次の日、不吉な言葉を証明するように、アリス・ドアと呼ばれる高さ30cm幅15cmほどの小さなドアの部屋で探偵の1人が殺害されてしまいます。それをきっかけに次々と、まるでチェスの駒を捨てるように殺される中、今度は城に潜むアリスの影が浮かびあがります。
全ては城を奪われたアリスの怨念による仕業なのか?そんな疑問を打ち消すべく繰り広げられる、腕自慢の探偵たちによる推理の数々。謎を解くのはどの探偵か、そしてアリスの正体を是非ご自身の目で確かめてみて下さい。
皆さんはミステリを読んでいる時に、どんな事を考えますか?こいつは怪しいぞとか、きっと犯人はこういうトリックを使ったんだなど、ついつい探偵達と一緒になって考えてしまう方も多いでしょう。
この作品は何と読者参加のミステリなのです!!今回の探偵役である牟礼田は、婚約者の奈々村に「先生みたい」と言われるほど、様々な問題や知識を読者に提供してくれます。さぁ、本の中の先生に会いに行きましょう!!
- 著者
- 中井 英夫
- 出版日
舞台となったのは牟礼田の遠縁である氷沼家で起きた事件です。家の風呂場にて氷沼家の弟の紅司が死亡、その後も次々と謎の死が続いていきます。これらは全て殺人なのか、それとも自殺か事故か。様々な見解を繰り広げる奈々村達ですが、特に牟礼田は事件に関わりながらも、誕生石の色や国内外ミステリなどの薀蓄も大いに披露してくれます。
それらは一体、事件とどう関係するのでしょうか?実はそれを考えるのは事件の関係者だけではないのです。そう、先ほども言ったように、読者である我々も参加して考えるようになっているのです。そして誰もが意表を突かれる驚愕の事実を知った時、あなたは三大奇書のひとつ『虚無への供物』の魅力を知る事になります!!
この作品で活躍するのは、何とまだ15歳の少年たちです。もう子供扱いはして欲しく無いけど大人になりきれない、難しい年齢ともいえます。しかし、考えてみれば一番真っ直ぐに人生を生きているのはこの頃ではないでしょうか。
今回、事件を追及する烏兎も獅子丸も、自分の信念に対し真っ直ぐに生きています。だからこそ、友の為に奔走する姿には感動し、作品を読み進めながら、心の中で応援してしまいます。
- 著者
- 麻耶 雄嵩
- 出版日
- 2014-06-25
今は廃墟となった塔に訪れたのは卯月烏兎と友人の獅子丸、そして祐今の3人です。そこはかつて祐今の母が殺された場所でした。しかし、同じ場所で今度は容疑者だった父が殺されていたのです。両親の無念と父の冤罪を照明するべく祐今は事件解明に乗り出しますが、とても大事にしてくれていた祖父まで殺されてしまい、失意の果てに寝込んでしまいます。
そんな友人を救うべく立ち上がる烏兎と獅子丸でしたが、何と通っている学校の生徒会でも機密漏洩事件の捜査を任されてしまいます。2つの事件と向き合いながらも、友の為に決して諦めない彼らの友情からは目が離せない、青春ミステリです!!
密室が大好きで、そのせいでエリート街道を大きく外されてしまった黒星警部。そんな彼が、町で起こる密室殺人の解明に挑む、折原一の短編集です。体育館では横綱が発見され、書斎では大富豪が発見され……他にも屋敷の離れや核シェルターの中など、実に多くの密室が存在するものと感心してしまいます。
これら全てを解明すれば、また出世街道に戻れそうな気もしますが、そう上手くいかないのが黒星警部という人なのです。彼は密室は大好きですが、その推理は的外れな事が多く、結局は別の角度からの指摘や証言からやっと解決してしまうのですから。
- 著者
- 折原 一
- 出版日
- 2013-03-09
ところで、皆さんは密室トリックと言っても実は様々なパターンがあるのをご存知でしょうか?簡単に紹介すると、何も密室全てが犯人による施錠では無い、という事です。犯人だって、鍵を掛ける暇があるなら早く逃げた方がいいですものね。
この作品は七つの密室において全てタイプが異なっているので、密室を軽く楽しみたいという方や密室初心者の方におすすめの作品です。
人気シリーズ自選短編集の第1作目です。他作品で漫画化を担当している麻々原絵里依がイラストを担当しており、主役二人が素敵に表紙を飾っている様は、ずっと有栖川有栖を読んできたファンからすると少し気恥ずかしくも感じます。
- 著者
- 有栖川 有栖
- 出版日
- 2013-10-31
6編からなる自選短編集で、タイトル通り、密室での事件に限定されています。ここでは「人喰いの滝」をご紹介します。
飛び込み自殺が絶えない”人喰いの滝”と呼ばれる滝に、映画の撮影スタッフのひとりである加西好美が転落して亡くなります。その翌年、8人から7人になった撮影スタッフは再度、人喰いの滝を訪れます。すると去年と同じように男性が転落死するのです。その男性は、加西好美が転落した時の、目撃者の妻で……。
一体誰が、何のために、どうやって犯行を行ったのでしょうか。雪という密室の中で、滝を利用したトリックは、密室と言えば建物の中というイメージを大きく変えます。
そのほかの作品も、様々な密室ミステリーが短い時間で楽しめるので、時間のあまりない方にもおすすめの作品です。
本格ミステリ大賞を受賞したこちらの作品も、一風変わったミステリーです。なんと主人公である名探偵襟音ママエは、真実を映し出す鏡を持っているのです。
つまり依頼人が何かを話す前に、真相がわかってしまうのです!ところがママエは推理が大の苦手。ということで、助手である小人のグランピーに助けられながら、真相から推理を導くという、あべこべミステリーなのです。
- 著者
- 森川 智喜
- 出版日
小人のグランピーでお察しの通り、白雪姫になぞらえたキャラクターや物語になっていて、ママエの命を狙う人物も登場します。
第一部は3話のいわゆる謎解きとなっているのに対し、「リンゴをどうぞ」と題された第二部では、ママエの身にに魔の手が忍び寄ります。そんな窮地を救うべく集まった小人の兄弟が、7人揃ったことで力強さが倍増するところも見ものです。果たしてママエは自分の身を守れるのでしょうか。
「本格ミステリ」大賞?と思うような軽いタッチの文に、トンデモな設定。しかし実はそれだけで終わらないのが受賞の所以です。読んで見なくてはわからないその秘密、ぜひお手に取ってみてください。
両親からも顔を背けられて育った鈴木誠は、あるきっかけで美しいモデル美縞絵里と出会います。女性と無縁だった誠は、心惹かれるあまり、絵里のストーカーとなります。やがて絵里の周辺で殺人事件が起きるようになり……。
ハンディキャップを背負って生きてきた誠のゆがんだ愛情は、読んでいても、絵里が感じている恐怖を同じように感じるほどです。非常に分厚い作品ですが、意外にもさらりと読めてしまう方が多いのではないでしょうか。
- 著者
- 井上 夢人
- 出版日
- 2014-06-13
そして、最後の方まで、真実にたどり着ける方は少ないと思います。各登場人物の視点でストーリーが進むため、見事に騙されてしまうでしょう。
ここではミステリーとしてピックアップしましたが、恋愛小説としても非常に優れている作品といえるでしょう。誠の想いに対する印象が変わります。ストーリーも見事。
いわゆる謎解きはありませんが、ミステリーとして衝撃的な結末が待っています。誠が唯一社会と接点を持っていたのはビートルズ評論を書くという仕事でした。ストーリー全体を通して、誠の周りにはビートルズが流れています。ビートルズ好きにも堪らない作品です。ぜひビートルズのアルバム「ラバーソウル」をBGMに聞きながら、お楽しみいただきたい作品です。
1977年に探偵小説専門誌『幻影城』に発表された竹本健治のデビュー作です。小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』や夢野久作の『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供物』の「日本三大奇書」の強い影響のもとに作られた世界観が魅力の推理小説。この作品は1979年に、日本推理作家協会賞(長編部門)の候補作になりました。
ミステリーマニアの大学生の仲間たちが推理小説のような殺され方をするたびに、周囲の人間たちが華麗なる推理合戦を繰り広げます。果たして犯人は誰なのか。そして探偵は誰なのか。証人は誰なのか。ミステリー小説の新しい時代の幕開けを飾った作品です。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
- 2015-12-15
個の推理小説はアンチ・ミステリー小説の形をとりながら、オカルト的設定や推理小説の仕掛けを用意し、推理小説における「密室」とは何かを問う一冊です。
この小説は前述の「日本三大奇書」をつけ加えて「日本四大奇書」とも言われています。その後に生まれた新本格ムーブメントの先駆け的作品として、多大な影響力を持っているのです。
また、新本格の代表作家である綾辻行人の小説世界との違いは、綾辻の小説がエドガー・アラン・ポーのようなゴシックな世界観を基礎にしているのに対して、竹本健治の小説世界は、キャラクターの共感性に重きが置かれています。歴史的一冊を、ぜひともお読みください。
元日本人の英国人ケン・ベニングは、イギリスで新進気鋭の舞台演出家。ある日、日本の劇団から『ハムレット』の演出依頼が届きます。そこに書かれた出演者には、母を捨てた歌舞伎役者の名前がありました。ケンは稽古期間中に、歌舞伎役者を殺そうと計画し……。
- 著者
- 服部 まゆみ
- 出版日
1997年に発表された『ハムレット狂詩曲』。物語は『ハムレット』の舞台演出を主軸として、展開されます。犯罪計画を遂行するケンと、ハムレット役となった雪雄の二人の思惑が絡み合います。全体としては明るい雰囲気で、青春小説の様相があります。
本作の魅力は、『ハムレット』へのオマージュでしょう。ケンと雪雄、二人の関係性が『ハムレット』をなぞらえられています。『ハムレット』を知っている方は、より楽しめる作品になるはずです。ただ冒頭に『ハムレット』の簡単な要約がありますので、同作を知らなくても十分に楽しめますよ!
人間性を描き出した、貴志祐介の本格ミステリです。介護関係を手がける会社社長が、社長室で倒れているのを、ビルの窓拭き清掃員の青年に発見されます。現場はビル12階で、部屋の前に設置された監視カメラからは誰の侵入もなく……!?
現代的な密室に挑む青砥順子弁護士は、自分1人の力では解明出来ないと、あるユニークな助っ人を呼びます。それは防犯ショップ経営者であり、周りから防犯探偵と呼ばれている榎本怪ですが、裏の顔は泥棒なのです。正に防犯のプロですね。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
ところで、皆さんはミステリの犯人について深く考えた事はありますか?愛情や憎悪や復習、そして欲望……。犯人たちはそれぞれに強い感情に囚われ殺人を行います。しかし、人間はそんな簡単に感情に身を任せてしまうでしょうか。人を憎んだ経験が無い人はそうそういませんが、だからと言って簡単に殺人に踏み切る人もいません。
この作品の犯人も、決して一時の激情だけで行動したのでは無いのです。作品の後半においては、犯人の人生から犯行動機に到るまでのその心情が痛切に描かれていて、憎むべきはずのその人物に対し、同情の念と共に、他に方法は無かったのだろうかと考えずにはいられません。
一様にミステリーと言っても様々な細かいジャンル分けが存在しますが、どこに重点を置いた作品が好きなのかは人ぞれぞれです。そんな中で、自分のお気に入りを見つけた時の喜びは感動に近いモノがあります。ぜひ、自分にあったお気に入りの1冊を探してみて下さい。