泉鏡花といえば、幻想文学の先駆けとして有名です。泉鏡花は独特な世界観のもと、彼なりの「ロマン」を描き、そしてその世界観を、高い表現力で余すことなく表現していました。そんな彼の、独特な世界観を持つ作品を6つ、ご紹介していきます。

『高野聖』は短いストーリーながらも、小説のよさがしっかりと詰まっており、泉鏡花という作家を知るうえで最適な一作だといえるでしょう。
- 著者
- 泉 鏡花
- 出版日
『照葉狂言』においては、叔母と雪が対立する女性として、その間にいる主人公の生き様をありありと描いています。文章を読むと、そのすみずみに男が幼いころ失った母の痕跡を読み取れることでしょう。これは泉鏡花自身、母を失った悲しみを映しとっているために、写実的で、雄弁に男の心情を語りきっているのです。男の結末はぜひ本を開いて確かめてみてください。
- 著者
- 泉 鏡花
- 出版日
読後には、泉鏡花が考える、人の感情の美しさに胸を打たれることでしょう。一度かなわぬ片思いをしたことがある人には、特におすすめの作品となっています。
- 著者
- 泉 鏡花
- 出版日
- 1991-09-17
今でも続く伝統芸である、能。芸の世界の奥深さを泉鏡花の幻想的な文体に乗せて読んでみてください。特に、誰にも譲れない一芸がある、というものがある、もしくはあった、という人は是非手に取ってみてはどうでしょうか。
- 著者
- 泉 鏡花
- 出版日
- 1988-09-16
融通の利かない、ともすれば生真面目すぎる八田巡査が、どんな考え方をして、どんな結末に至るのか、身近な真面目な人を思い浮かべながら読んでみると、その人の人生や、その人との付き合い方を考えるいい機会になると思います。
- 著者
- 泉 鏡花
- 出版日
- 2016-07-20
ほかほかと、でも少し汗ばむような春の日のさす山間を散策する散策人。目指す山寺についた彼は寺の中に貼ってある一枚の札に興味をそそられます。
「うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき 玉脇みを」
そこに寺の僧がやってきて、ふたりは腰を落ち着け世間話に興じます。そしてその世間話は札の女人に心を奪われ命を落とした一人の男「客人」の話へと変わっていくのです。
- 著者
- 泉 鏡花
- 出版日
- 1987-04-16
『春昼』はこの二人の世間話で終始するのですが、二人の対話がテンポよく、親しみやすいタッチで描かれているので、僧の話に強く興味を示す散策人におかしみを感じながら、身近な感覚で読み進められます。
『春昼後刻』は摩訶不思議な物語を聞き終え寺を後にした散策人が、先ほど僧が語っていたうわさの女人「みを」と出会うところから始まります。「みを」は夫のいる身ですが、胸に恋い焦がれる想い人の存在があります。『春昼』で「みを」を想い、焦がれ死んだ「客人」はその想い人とどこか似通っていたのです。そして散策子も……。
狂うほどに焦がれる相手にはどうしても会えない……。せめて身近にいる似た男性を探し、我が心を慰めている、そんな日々を送っていると、散策子に語るのです。
「みを」の現実と夢が交差し語りは終焉に向かいます。
はたして、焦がれる相手とその相手に似た男の狭間で「みを」の心は本当に慰められたのでしょうか……。ふわふわと漂う感のある「みを」の精神愛のなかに、現実身を帯びた愛への問いかけがあるように感じるのです。
泉鏡花の作品はどれも表現が巧みで、かつ、語り口がはっきりとしています。これは、泉鏡花自身が能に造詣が深かったため、言葉のリズムのようなものをしっかりと意識しているからでしょう。彼の作品は現代で見ると古語として扱われるものが多いのですが、彼が意識したであろうリズムを想像しながら読んでみてください。見た目よりも読みやすく、すいすいと読み進めることが出来るでしょう。面白い物語を読みながら、こんなに言葉のリズムを考えられることに、感心してしまうこと間違いなしです。