日本のミステリー界には「四大奇書」という奇抜で、幻惑的なミステリーがあります。そのうちのひとつ『匣の中の失楽』の著者が竹本健治です。今回は、奇才・竹本健治のおすすめ小説をご紹介します。

中国の九星術や、心理学のカタストロフィー理論、量子力学や化学物質の構造式など様々な講義やうんちくを繰り広げながら、数多くの推理が矢継ぎ早に披露されます。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
- 2015-12-15
『ウロボロスの偽書』は1991年に発表された作品です。竹本健治を中心とした出来事、殺人鬼の手記、作中作の三つの物語が絡み合いながら、やがて融合していくという複雑な構造をしています。そのため、理解するのが難しく、『匣の中の失楽』に並ぶ幻惑感があります。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
『囲碁殺人事件』は1980年に発表された作品で、ゲーム三部作の第一作目です。奇想のミステリーを多く書いていた竹本健治が、ストレートな本格ミステリーを書いたとして驚かれました。軽快なテンポと比較的抑えた専門知識のおかげで、読みやすい作品となっています。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
その一方で、競技かるたや囲碁、花札、ビリヤードなど多種多様な娯楽にのめり込み、どれも達人級の腕前を誇っていました。そんな黒岩涙香が仕掛けた暗号は一筋縄でいくはずもなく、天才と呼ばれる智久でも苦心します。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
- 2016-03-10
『闇のなかの赤い馬』は2004年、ジュブナイル小説のレーベル・講談社ミステリーランドにて発表された竹本健治作品です。ミッションスクールを舞台として、オカルトチックな事件が展開されます。子供向けレーベルなのに、陰惨な場面は出てくるし、同性愛のような耽美なものを感じさせますので、大人のミステリー好きも唸らせる内容です。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
- 2004-01-31
1993年に発表された第1短編集。プロデビュー後、15年間に及ぶ執筆活動の間に描かれた短編を網羅した初の短編集です。作品の内容はホラーありSFありと、ミステリー小説にとどまらない根源的な恐怖やオカルト的要素を取り入れたものが多く収録されています。
作品の発表時期にばらつきがありデビュー前に同人誌に発表された作品も収録されています。そのため、質の違いはありますが、竹本健治の一筋縄ではいかないソリッドかつナンセンスな感性が光る作品集です。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
この短編集の特徴は、人間が持ちえる恐怖の根源を描き出そうとしているところです。
ミステリー小説の定義が、事件を論理的に解決しようとすることで快感を味わせる物語と見るとすれば、ホラー小説とは、論理的思考によって暴き出される真実に恐れおののく人間の姿を見ることで、快感を味わう意地悪な物語です。
竹本健治はミステリー小説自体にホラーを取り入れることにより、ミステリー小説をホラーからの目線でとらえています。つまり、物語における恐怖の捉え方が一定の視点にとどまっていません。登場人物を個人の心理と群衆心理を分けて描き出しているのです。
そこには、群衆心理と個人の妄想は、個人的体験だけでは収まりきらない恐ろしさが表現されています。読みやすく、恐怖に魅了されることを受けあい。ぜひお読み下さい。
本書は、第1短編集の『閉じ箱』から約8年後に発表されました。作品の内容は第1短編集と同じく、ホラーやSFといったミステリーだけではない多岐にわたる作品が収められた短篇集です。
特に、この短編集に収録されている「チェス殺人事件」は『囲碁殺人事件』からなる「ゲーム三部作」に登場した天才少年探偵が再登場しており、エドガー・アラン・ポーの推理小説『モルグ街の殺人』を題材に、推理小説における名探偵とはどういうものかについて、一つの回答を提示しています。 ホラーからアンチ・ミステリーまで、一筋縄ではいかない竹本健治の多彩な世界を楽しめる一冊です。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
- 2005-10-25
この短編集の特徴は、感性のリリカルさに重点が置かれているところです。何もないところに何かある、と考えることの不毛さが、この短編集においては、肯定的に描かれています。数理における真実を追求し続ける少年の姿を描いた表題作「フォア・フォーズの素数」は最後まで孤独なままの少年の姿を描きながら、結末にはさわやかさを提示しています。
人間の持つ妄想と孤独な心理状態を描きながらも、そこに生まれる内面の豊饒さを描き出せるのが竹本健治の真骨頂です。ぜひとも読んでみて下さい。
ちなみに「フォア・フォーズ」とは4つの「4」と数学記号を使い、様々な数を作ることを目指す数学パズルを指します。
宇宙航空士をしているティナの恐怖と逃走を描いたSFホラー小説です。
個人にはどうしようもない現象がどのように作られたものか、宇宙空間といった密室空間が恐怖を増幅させて、不穏な雰囲気を作り上げています。著者によると『匣の中の失楽』や『ウロボロスの偽書』以上に個人的に気に入っている作品だそうです。
- 著者
- 竹本 健治
- 出版日
- 2018-01-25
「もし人間が、本当に逃げ場のないところで恐怖を感じるならば」という人間の心理の極限状態をテーマにした物語です。題材は近代文学のテーマの一つである「個人の喪失」と近いものがあるのですが、それよりもスピード感があり、より行動的な人間が、自分自身に理解できないことに関わっていく姿が描かれています。
恐怖が概念化している時代に、いかに悪夢を顕現させられるか。その部分を「個人の喪失」と「記憶の喪失」のつながりから問いかけています。過ぎてしまった時間は取り戻せません。人間の持ちえる思考の絶対値は、喪失をいかに認識するか、そして認識をいかに喪失するか、の違いによって生まれます。
SFホラーを超えて、ポスト・モダン文学のテーマの一つのコミュニケーションの断絶をより明確にした作品です。 恐怖を体験したい人も、そうでない人にもおすすめです。
以上、竹本健治のおすすめ小説をご紹介しました。奇才の発想ゆえに必ずしも読みやすいとは言えませんが、他の作家にはない驚きや幻惑感を味わうことができます。ぜひ、竹本健治の奇想を体験してみてください。