3位:東日本大震災の記憶を綴る哀切の詩集『眼の海』
宮城県石巻市生まれの辺見庸が東日本大震災以後に書き綴った詩集。
当時住んでいた街は、この震災で跡形もなくなってしまったのだそうです。
この中に「水のなかから水のなかへ」という詩があるのですが、
「半世紀まえ 眼にまつわったひとつぶの予感の涙から 海がうるんで浮んだ 海は暗い底にびっしりと声たちをしずめていた」の部分にぐっと胸を掴まれました。
ここにある半世紀前とは、辺見も経験した1960年の「チリ地震津波」の記憶によるものだそうです。
未曾有の震災による被害による実際の姿を伝えるのに、多くの言葉を使うことができず、詩という表現方法を選んだ辺見庸の心の痛みを感じ、苦しくなりました。
- 著者
- 辺見 庸
- 出版日
- 2011-12-01
当たり前にあるべきはずだった故郷、なくなるはずがないと思っていた場所が失われてしまうなんて、想像すら追いつかない辛さだと思います。それだけに辺見庸の言葉は、当時のどんな報道よりもリアリティをもって迫ってくるのです。
ふだん詩を読まない人にも、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
2位:辺見庸が基地と原発を語る『この国はどこで間違えたのか ~沖縄と福島から見えた日本~』
基地と原発をテーマにして「沖縄タイムス」で連載されていたインタビュー記事を書籍化したものです。
辺見庸はこの作品の中で、東日本大震災直後のことについて語っています。
駐日大使が被災地を訪問したことに触れ、トモダチ作戦や感動的シーンの陰に戦略的演出があり、それに気づきつつもメディアが書かなかったこと、メルトダウンに関しても報道せずに通り過ぎてしまったこと……などを通して、日本の報道メディアの敗北だと言い切っているのです。
- 著者
- ["内田樹", "小熊英二", "開沼博", "佐藤栄佐久", "佐野眞一", "清水修二", "広井良典", "辺見庸"]
- 出版日
- 2012-11-21
それを読んでどう判断するかは個々の考え方だとは思いますが、「国という幻想や擬制が一人ひとりの人間存在や命と引き合うものかをまず考えたほうがいい」と言い切ってしまうあたりに現在の日本の本質を見抜いていて、さすが鋭く社会を見ている、と感心させられます。
辺見庸と同じく他の方のインタビューも考えさせられるものばかりで、充実した本になっています。地方紙の企画だからこそ作り上げることのできた辺見庸の一冊です。
1位:「食」を取り囲む問題を辺見庸が著す『もの食う人びと』
「人びとと同じものを、できるだけいっしょに、食べ、かつ飲む」――これを目的に世界中を回った「食」についてのルポタージュ。
「食」をテーマにしているからと言って、食欲が湧く本ではありません。「それ、食べていいの?」と思うものすら食べねば生きていけないような、極限状態にある人々が多く登場し、著者同様に、恵まれた環境にある人間として、困惑や迷いが生まれてしまいます。
従軍慰安婦の話があったり、戦争中のミンダオ島での食事の話が生々しく語られたり、世界各地ではまだ「第二次世界大戦」は終わっていないのかもしれないと感じさせる過酷さも描かれていました。
- 著者
- 辺見 庸
- 出版日
キリスト教系国際救援団体「ワールド・ビジョン」で働くフレッドの助言を受けて、エイズ孤児や孤児を引き取っている家にいろいろなものを配るエピソードが書かれている章があります。
物を配るという行為の中にある「偽善」のようなものに困惑している辺見庸に対して、フレッドが言い放つ「驚いたり、嘆いたりならだれにでもできる」という言葉がとても重たく沁み込みました。
こんなことをしつつも、辺見は社会情勢に物申すという気持ちで世界を巡ったわけではなく、ただの行き当たりばったりだったのだとか。
だからこそのリアリティや率直な感想が書かれていて、読みやすいルポとなっています。身構えずに読めるのと同時に、世界の「食」について改めて深く考えさせられることでしょう。