英雄ひしめく幕末を飄々と生き抜いた男、勝海舟
多くの方が、かつて歴史の授業で習ったであろう勝海舟という人物。名前は知っていても、彼の人生や、溢れる魅力を知る方は多くないかもしれません。本書では、そんな勝海舟の魅力的な生涯が綴られます。
時代:幕末
舞台:江戸(本所深川近辺など)
主要人物:勝海舟
- 著者
- 子母沢 寛
- 出版日
- 1968-12-03
勝海舟は、貧しいながらも幕府直属の家来の家に生まれ、やや破天荒な父と愛情溢れる母のもとで育ちました。
海舟が青年になる頃、黒船が浦賀に来航します。それに対して幕府は、鎖国を解くべきかなどの意見を広く募集しました。当時ヨーロッパなどの学問を学んでいた海舟は、勇んで意見書を提出します。それが幕府に評価され、咸臨丸の艦長としてサンフランシスコへの留学が認められました。
留学から帰国した後は、幕府の海軍を統括する役職に就き、神戸に海軍の塾を作ります。その塾の塾頭は坂本龍馬です。海舟は龍馬らと一緒に、今までと違う新しい海軍を作ろうと奔走しますが、反対勢力の抵抗にあって罷免されてしまいます。
ところが、京都で端を発した国内の内戦が江戸まで飛び火しそうになったとき、困った幕府は海舟を呼び戻しました。そして海舟は、内戦を起こしていた薩摩藩(今の鹿児島県)の西郷隆盛との会談で江戸に攻め入らないでほしいと交渉します。江戸で戦争になっても誰も得をしないばかりか、内戦で首都が疲弊したタイミングに外国に攻め込まれて侵略されてしまうと考えたからです。その代わり、将軍の身柄を備前藩(今の岡山県)に預け、江戸城は明け渡し、武器も引き渡す約束をしました。
幕府に翻弄されながらも自分自身を貫き、困難な交渉も胆力を持って最後まで渡り合った勝海舟。その波乱に満ちた生涯を、歴史小説の巨人とも言われる子母澤寛の筆で余すところなく味わい尽くせます。
人生のほとんどが戦争
世界史上類をみない大国、モンゴル帝国を作り上げたチンギス・ハーン。彼の強大な征服欲の源はいったい何だったのでしょうか。反町隆史が主人公を演じた映画の原作です。
時代:12~13世紀(日本だと鎌倉時代)
舞台:モンゴル帝国
主要人物:成吉思汗(チンギス・ハーン)
- 著者
- 井上 靖
- 出版日
- 1954-06-29
主人公は、モンゴル帝国を一代で築き上げたチンギス・ハーン。この作品は彼の出生の秘密について疑問を投げかけるところから始まります。
彼の父はモンゴル人の主権者です。母は他民族に略奪された後、さらに父に略奪されてきた女性でした。戦いの後には略奪が起こるのが日常の時代、母も度重なる略奪の中で出産したため、チンギス・ハーンは自分がモンゴル人なのか他民族の子なのか分かりません。
そして彼は幼くして父を亡くし、権力争いに巻き込まれながら成長していきます。争いの中で不利な立場にいた少年時代のチンギス・ハーンは、「上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨白き牝鹿ありき」というモンゴルに伝わる伝説の一文に強く惹かれました。
その伝説を知って、彼は自分がモンゴル人で狼の末裔だと信じるようになります。そうでありたいとも強く願います。それならば一日も早く狼となって、敵を倒し征服しようという想いを持って大人になっていきました。そして、戦いと略奪を繰り返す生涯を送ることになるのです。
常に走り続けていなくては存在意義が証明されない、生きるためには誰よりも強くあらねばならない孤高のプライドを抱え、モンゴルの大草原をダイナミックに駆け抜けるチンギス・ハーンの一代記です。
愛され続ける坂本龍馬の生涯とは?
日本史上有数の人気者である、坂本竜馬。彼は多くのことを成し遂げ、現代を生きる私たちにも影響を与えています。その人生を歴史小説の名手である司馬遼太郎が、生き生きと描き出しました。
時代:幕末
舞台:全国
主要人物:坂本龍馬
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
- 1998-09-10
土佐藩(今の高知県)に生まれた坂本竜馬は、幼い頃から手のかかる子どもでしたが、剣才には人一倍恵まれていました。大人になった竜馬が、江戸遊学の間に様々な人と出会い、刺激を受けて土佐へ戻ってきます。彼は遊学を通して、今までの幕府の体制に疑問を持ち、天皇中心の国にすべく脱藩し、江戸へと向かいます。その途中、竜馬は勝海舟や西郷隆盛、大久保利通らと会い、薩長同盟と大政奉還という偉業を成し遂げるのでした……。
坂本龍馬をテーマにした時代小説の草分けでもある本作、竜馬の長所が全編にわたって書き尽くされているのが魅力です。現代の読者がイメージする竜馬のイメージは、本作によって作り出されたともいわれています。
竜馬の魅力というときりがありませんが、作中で描かれている一部分を紹介するなら、人の立場で物事を考えられる点が挙げられます。なにより人に対して優しさがある人物であると、作中で描かれています。さらに、竜馬はほめ上手で聞き上手、自分の分をわきまえつつも熱く夢を語る人物でもありました。
そんな魅力たくさんの竜馬。彼は日本を分断するような内乱に終止符を打ち、その使命を全うした途端に命が尽きてしまいます。彼の死は未だに謎に包まれたままです。ただ、竜馬が生きた足跡は各地に残り、それをもとに書かれた本書は、数多くの読者の心に竜馬の姿をとどめ続けています。