近代日本文学を語るうえで、欠くことのできない作家「谷崎潤一郎」。濃密、美麗な文体で描く女性像はエロティシズムを越えた魅力を含んでいます。 ここでは、その作品群から厳選した6作品を紹介していきます。

谷崎潤一郎は1886年生まれ、1965年没の日本を代表する小説家です。年号にして明治、大正、昭和をまたにかけ常に第一線で活躍しました。
その文章の美しさと、作品の芸術性において国内外で高い評価を受けています。ノーベル文学賞にも最終候補までノミネートされている数少ない作家のひとりです。
その作品は耽美的な雰囲気を携え、美しく魅力的な女性像を描くことに特徴があります。性的なイメージも頻発しますが、そのなかに深い人間洞察が重ねられます。そしてストーリーはドラマティックで強烈な印象を与えるものが多いです。通俗性と芸術性を兼ね備えた作品世界は現在でも色褪せることなく、読者の前に色鮮やかに展開されていきます。
ではさっそくその作品のなかからおすすめの5作品を紹介していきましょう。
先にも触れましたが、非常に短い作品です。その文章は、美文と呼ぶにふさわしく豪華絢爛の語彙を見せてくれます。そして、視覚的に描かれたこの世界は想像もしやすく、映像化作品も数多いです。
- 著者
- 谷崎 潤一郎
- 出版日
- 1969-08-05
綿貫が現れて以降も、さらに物語は二転三転します。綿貫と園子が契約を結び、それが世間に公表され、さらに夫を騙すための心中計画があったりと、読者を飽きさせません。
- 著者
- 谷崎 潤一郎
- 出版日
- 1951-12-12
耽美的な作品の多い谷崎潤一郎ですが、その頂点ともいわれる短篇です。ページ数は少なく、あっという間に読み終わります。その短い文章のなかに、整然とした世界が繰り広げられます。
- 著者
- 谷崎 潤一郎
- 出版日
- 1951-02-02
谷崎潤一郎の実体験を下敷きに描かれている作品であり、義娘の渡邊千萬子との往復書簡が公開されています。私生活でも当時の谷崎と重なる部分が多いのです。
- 著者
- 谷崎 潤一郎
- 出版日
- 2001-03-25
それぞれの姉妹のキャラクターが個性豊かに描き分けられています。特に末娘の妙子は大正から昭和に向かう時代のなかで新しい女性像を提示しているのです。トラブルメイカーとして姉たちを巻き込みストーリーを引っ張りますが、恋多く、利己的で、周りの理解を得られずに孤立。しかし、他人よりも自分の考えを大事にし、自分の力で立とうとする現代に通ずる女性像を体現しています。
- 著者
- 谷崎 潤一郎
- 出版日
- 1983-01-10
譲治は宇都宮から上京し、都内の有名な工業学校を卒業した後に電気技師となり経済的に不自由のない生活を送っていましたが、28歳の現在も独身のため淋しい1人暮らしの生活に彩りを求めていました。また西洋に対する憧れもあり、時々立ち寄るカフェで給仕女をしている15歳のナオミの日本人離れした美貌にひかれます。
譲治はナオミを映画や食事へと誘いますが、いつもナオミは断らずついてきました。譲治はナオミも自分に好意があるのだろうと思い、ナオミを引き取って教育を受けさせさらに美貌に磨きをかけ、自分の理想の女性に育ててやろうと思うのでした。
- 著者
- 谷崎 潤一郎
- 出版日
- 1947-11-12
名目上は女中としてナオミを引き取った譲治は、ナオミに英語とピアノを習わせはじめます。そして新しい着物や靴を次々と買い与え、美しく着飾ったナオミを眺めては楽しんでいました。当初は友達のように暮らしていこうと話していた2人でしたが、毎日じゃれ合うように生活しているうち、自然に肉体関係に至り夫婦になります。
しかし譲治は、一緒に暮らすうちナオミが怠惰な性格であることを知ります。掃除も洗濯もしないので家の中は常にホコリと汚れた服が散らかり放題になり、料理も嫌がるので外食や出前を繰り返し、食費とクリーニング代、ナオミの衣装代が家計を圧迫するようになり、余裕のあった譲治の貯金は無くなってしまいました。さらに譲治は、学校に行っているにも関わらずナオミの英語が全く上達していないことにも気が付きます。彼女には勉強意欲もまったく無く、何事にも移り気で飽きやすいのでした。
譲治はナオミの内面には失望しますが、外見だけは理想どおりに美しく育っていくナオミの巧みな甘え方に抗えず、わがままと贅沢を許してしまいます。譲治は、ナオミに贅沢をさせてやれるのは自分だけで、ナオミもそれに感謝して自分を愛しているはずだと思っていました。ところがナオミは謙治の留守中に若い男と密会を重ねていたのです。しかも相手の男性は1人ではありませんでした。
本作は昭和初期に描かれた作品なので登場人物の言葉使い等に時代を感じますが、現代では耳慣れないナオミの言葉遣いは返って生々しいエロスを感じさせ、時代を超えて読み継がれる名作とはまさにこのような作品なのだろうと感動します。最終的に2人の関係はある決着を見るのですが、それは意外でもあり当然とも言えるでしょう。
以上6冊を紹介致しました。いかかでしょうか。谷崎潤一郎は「大谷崎」と称されるほど文学界において評価の高い作家です。エンターティメントのおもしろさと純文学のアート性を兼ねそろえた作品は時代を越えて読者に訴えかけてきます。まだ読んだことのない方はこれを機会にぜひ、読んでみてくださいね。