血なまぐさい野望の先は狂気の世界だった……。亡霊と魔女が交差する暗黒の物語『マクベス』
- 著者
- シェイクスピア
- 出版日
- 1969-09-02
おそらくシェイクスピア悲劇の中でもっとも陰惨で血なまぐさい物語がこれでしょう。奇妙な言葉とともに三人の魔女たちがマクベスの運命を狂わせる予言をする冒頭がすでにホラーじみています。
スコットランド王ダンカンに仕えるマクベスとバンクォーは遠征から帰る途中に、歌を歌っている不気味な魔女三人と出会います。魔女たちは予言をします。マクベスがコーダーの領主になり、やがてデンマーク王になることを、またバンクォー自身は王にはならないが、その息子たちが代々王になるであろうことを。
予言の後すぐに、コーダー領主の地位がマクベスに与えられるという伝令が届きます。王になるというもう一つの予言に期待を膨らませるマクベス。しかしダンカンは息子マルカムに王位を譲るつもりであることを知り、マクベスは王の暗殺を計画します。しかし小心なところがあるマクベスには迷いがありました。そんなマクベスの背中を押したのがマクベス夫人です。夫をけしかけ、王を殺させ、動揺する夫をしりめに冷静に血まみれの凶器の剣を処分します。
マルカムを犯人に仕立て上げ、もくろみ通り王位に就いたマクベス。しかし一緒に予言を聞いていたバンクォーはマクベスを疑います。バンクォーの息子が王位に就くという予言を恐れたマクベスはバンクォーとその息子を殺そうとしますが、バンクォーは殺害できたものの息子は逃がしてしまいます。
疑心暗鬼に陥り、不安定になるマクベス。次第に殺したバンクォーの亡霊に悩まされるようになります。またマクベス夫人も精神の安定を欠いていき、自殺してしまうのでした。やがて貴族マクダフは前王殺害の嫌疑で逃亡していたマルカムと組んで、マクベスに向かってきます。マクベスは再び魔女の予言を頼ります。「女から生まれてきたものにはマクベスは倒せない」という言葉にほっとするマクベスですが……。
野望に取りつかれながら、実のところ小心者のマクベスが徐々に狂気に侵されていく様がとても怖ろしい物語です。バンクォーの亡霊が見えるところなどは、完全なホラー。
またマクベスに輪をかけて恐ろしいのが、マクベス夫人です。夫以上の野心家であり、王の殺害にもためらうところがありません。その夫人の狂いっぷりがまたぞっとさせます。夜な夜な徘徊し、手を洗うしぐさを繰り返す夫人。「まだここに血の匂いが」(『マクベス』より引用 松岡和子訳)とつぶやきます。この血こそダンカンを殺したときの剣についていた血の幻なのです。いくら洗っても消えない血が両手にべったりとついている、恐ろしいシーンです。裏切りによる破滅を書いた傑作です。
甘い言葉に騙された老王をけなげな娘コーデリアの愛が包む『リア王』
- 著者
- ウィリアム シェイクスピア
- 出版日
- 1967-11-28
うわべに騙されること、傲慢であることが、本当に自分を愛してくれている大切な人たちを見誤らせ、悲劇を起こすという物語です。
主人公のリア王はイングランドの王ですが、年老いて傲慢になっていました。高齢の彼は3人の愛娘に国土を分配して、跡を継がせようと考えます。うぬぼれが強くなっている老人、リア王は娘たちに自分をどれだけ愛しているのかを語らせたがります。要求にこたえて、長女のゴネリルと次女リーガンは耳障りの良い大げさな言葉を並べ立てますが、気立ての良い末娘のコーデリアは追従を嫌い、素朴な愛の言葉のみを語るのでした。
姉たちに比べ、妹の言葉がそっけなく感じたリア王は激怒し、コーデリアを国から追い出します。そしてコーデリアをかばった忠臣ケントも追放してしまうのでした。
権力を手に入れたゴネリルとリーガンはリア王を邪魔者扱いしだします。追放されたコーデリアの夫フランス王は姉二人の仕打ちを見過ごせず、イングランドに兵を向けます。再会するリア王とコーデリア。コーデリアはリア王を温かく迎え、リア王の狂気は癒えていきます。しかし、コーデリアには哀しい運命が待ち受けているのでした。
最後まで自分を苦境に追い込んだ父を見捨てない娘、追放されながらも最後まで忠誠を誓ってくれる臣下、主人に背いてでも善行をなそうとする召使などは、読者の心を動かすはずです。沢山の登場人物が登場し、戦いを繰り広げるシェイクスピア悲劇の中でも壮大な物語となっています。
シェイクスピアの作品をお得に読む
人種問題をはらんだ悲劇!貞淑な妻を信じられなかった男の転落『オセロー』
- 著者
- シェイクスピア
- 出版日
- 1951-08-01
ムーア人で黒人のオセロが美しい白人の娘デズデモーナを妻にしたことから始まる悲劇です。
オセロはヴェネチア軍の優秀な指揮官で、周りからも尊敬されていました。しかし、そんな彼ですら白人の美人妻を迎えるとなると、良い顔をしないものたくさんいました。特にデズデモーナに惚れていたロデリーゴや、オセロの副官キャシオはデズデモーナの結婚を惜しんでいました。この状況にオセロを憎んでいるオセロの部下、イアーゴは一計を案じます。
トルコ軍との戦いにキプロス島まで出撃するヴェネチア軍。新妻のデズデモーナはオセロについていきたがり、一緒に戦地まで赴きます。そこでイアーゴはキャシオが酒に弱いことを利用し、わざと乱闘を起こさせ、オセロがキャシオを軍隊から除名するよう仕向けました。
絶望したキャシオにイアーゴはデズデモーナに軍隊に戻れるよう口添えしてもらえばいいとささやきます。キャシオの懇願にデズデモーナは快く応じ、オセロにキャシオの部隊復帰を促します。一方イアーゴはそれとなくオセロにデズデモーナとキャシオの密通の話を吹き込みます。
デズデモーナの熱心なキャシオに関する弁明とイアーゴの話が相まって徐々に妻への信頼が揺らぐオセロ。さらにイアーゴはデズデモーナのハンカチを手に入れ、これをキャシオが使っていたとオセロに吹き込むのです。イアーゴの口車に乗せられ、オセロの憎しみは膨れ上がっていき……。
おなじみのゲーム「オセロ」の語源となった悲劇です。