パリの街中を塗下駄で“ポクポクと歩く”……林芙美子の魅力が凝縮された紀行文集
『放浪記』の印税を元手に、林芙美子がシベリア経由でパリからロンドンへ到着するまでの旅程と、当地での半年間の生活を記した随筆が収められています。またこの海外篇の他に、北海道の樺太、伊豆、大阪、東京といった国内各地の旅行記もあわせて併録されています。
- 著者
- 林 芙美子
- 出版日
- 2003-06-14
本書で特筆すべきは、表題の「下駄で歩いた巴里」というパリの滞在記にあります。旅先から現地を報告する林芙美子の文章は、国の内外を問わずいずれの場所でも、気取ったところが全く見当たりません。
著者は、どこか昔馴染みの町を散策するような心持ちで、旅先での出来事を綴ります。パリの街中を「塗下駄でポクポク歩きます」と述べる、著者の昔馴染みの町を散策するような語り口は、異国の街であることを思わず忘れてしまいそうになります。いずれの旅先においても、昔馴染みの町を報告するような林芙美子の飾らない姿勢に、読者は魅了されてしまうことでしょう。
林芙美子の作家活動を知るうえで、忘れてはならない一冊!
1938年に内閣情報部の「ペン部隊」として、中国の漢口に従軍した林芙美子のルポルタージュです。先の大戦で戦地へ駆り出されたのは、最前線で戦闘を繰り広げた兵士だけではありませんでした。国民の戦意高揚のため、世に知れ渡った文学者たちも「ペン部隊」として動員されたのです。なかでも林芙美子は、日中戦争から太平洋戦争にかけて積極的にペンで国家に奉仕した作家の代表格でした。
- 著者
- 林 芙美子
- 出版日
- 2014-08-23
著者は、1938年9月1日から約2ヵ月間、帝国陸軍第六師団の漢口攻略作戦に随行します。本書は、当作戦の進捗状況と、作戦を遂行する兵士の様子などに筆が割かれていますが、女性らしさが伺えるのは、負傷した兵士や戦況の激しさを目の当たりにした際に、要所要所で、感傷的な気分に浸るところです。
『戦線』の第一信には、敵国の砲弾がふりそそぐ小舎のなかで、これまでの生涯が走馬灯のように頭を駆け抜け「私は私の全生涯をかけて戦線にいるような気もして来ました」と記されています。著者の文学全集にも収録されていない『戦線』は、林芙美子の作家活動を知るうえで、忘れてはならない作品なのです。
東京暮らし30年。流行作家となり安住の地を得た芙美子の東京生活
昭和10年前後の随筆作品から選り抜かれた随筆集です。栃木の女刑務所を慰問する「新生の門」、恋愛についての考えを述べた「恋愛の微醺」、愛用した着物について考察をめぐらせた「着物雑考」など、バラエティーに富んだ作品が収録されています。注目したいのは、放浪者としての宿命を負い文学的な出発を遂げた林芙美子が、もっとも長く暮らした、東京の生活について記しているところです。
- 著者
- 林 芙美子
- 出版日
- 2003-02-14
『放浪記』の冒頭で、「私は宿命的に放浪者である」と述べた林芙美子の終の棲家は、新宿区落合町でした。芙美子は、大正11年から昭和26年までの約30年間、この地に暮らしたことになります。
本書には、小説家・尾崎翠の紹介で入居した上落合での生活を記す「落合町山川記」、パリ帰国後に下落合の西洋館に入居した際に執筆した「生活」、昭和16年から自宅で逝去するまで暮らした下落合周辺を記した「わが住む界隈」といった随想が収録されています。幼少期から放浪を繰り返した林芙美子が、流行作家となり安住の地を得たその生活ぶりを伺うことができるのです。