デビュー作『蛇にピアス』で、いきなりの芥川賞を受賞し、その若々しい容姿とは裏腹の、センセーショナルな作品内容が話題となった作家・金原ひとみ。ここでは、そんなデビュー作以降発表されたおすすめ作品をご紹介していきます。

アヤは村野に対して頻繁に「好きです」という言葉を発します。なんの脈略もなく、突然、そして何度も言い、村野はその言葉になんの反応も示しません。つかみどころがなく、何を考えているかわからない村野はミステリアスで独特な魅力があり、こちらまで興味をそそられてしまいます。
- 著者
- 金原 ひとみ
- 出版日
主人公・神田憂は、今日こそ精神科で診察を受けよう、と出かけていきます。そんな憂の前に決まって現れるのが、中年男性・カイズさんと、今時の若い男の子・ウツイくん。カイズさんは、ある時はブランドショップの店員、ある時はタクシー運転手などに変身して登場し、ウツイくんは、コンビニやラオックスの店員となって、憂の前に姿を見せます。
- 著者
- 金原 ひとみ
- 出版日
- 2012-06-08
どの主人公も、様々な事情を抱え、無力感と喪失感に苛まれています。冒頭、放射能の恐怖を敏感に感じ、あれこれと心配する修人と、気にしても仕方ないと、開き直る妻との不毛なやり取りには、身につまされる思いがすることでしょう。
- 著者
- 金原 ひとみ
- 出版日
- 2015-04-24
10代の姿と、作家になったあとの姿が、別人かと思ってしまうほど変わっているので驚かされます。娘を保育園に預け出かける、湘南での様子を綴った「夏旅」では、あんなにも愛に飢えていた少女が、時を経て愛を与えなければいけない、母となったことへの心情が、包み隠さず正直に語られていて、その成長に感動してしまいます。
- 著者
- 金原 ひとみ
- 出版日
- 2013-01-25
作家のユカ、専業主婦の涼子、モデルの五月の3人は同じ保育園に子供を預けています。ユカと涼子は高校時代の友達、五月とユカは仕事を通して以前から顔見知りの間柄、涼子と五月はユカを通して知り合い、それぞれ子育ての悩みや愚痴を語り合い一緒に食事をするなどして親密度を深めていきます。
3人とも出産を境に夫との関係が冷えており、ユカは薬物に依存して、五月は不倫をすることで心の安定を保っています。
専業主婦の涼子は、経済的な余裕があり時々家事代行やベビーシッターを頼めるユカや五月と違い、全てを1人で背負っています。毎日泣きわめく生後9か月の息子をあやしては授乳の繰り返しで疲れ切っており、腕も肩も痛めていますが、夫は時々子供をお風呂に入れる程度のことで自分は育児に協力的だと思い込んでおり、涼子の苦しさも自分が育児の本当の大変さを知らないことも認識していません。そんな涼子はある日、泣き叫びながら自分を求めて追いかけてくる息子から誰も助けてくれない現実に心が崩壊し、ついに息子を叩いてしまいます。そして涼子の心は歯止めがきかなくなり……。
- 著者
- 金原 ひとみ
- 出版日
- 2013-12-24
好きな男性と結婚し子供を産んで幸せな家庭を作るという当たり前の将来を夢見ていたはずなのに、赤ん坊が産まれてきた途端、自分の時間が全て失われ、ただ子供を育てるだけの存在と化した自分に3人は激しい喪失感を覚えるのです。「子育ては幸せ」という社会の概念の中、そうあらねばならないと思う彼女らは、自分が突然事故に遭ったり殺されたりする姿すら思い浮かべてしまいます。それは自らの意志では育児を止めることができないからなのです。
本作は母の愛に依存する社会を痛烈に批判しているとともに、「母親とはこうあるべき」という既成概念に縛られているのは、母親たち自身でもあると指摘しています。母親の幸せとは何なのか、読後も考えずにはいられません。
そんな「私」は時々、錯乱状態に陥ってしまい、そうなると無意識のうちに文章を打ち込み、錯乱した文章「錯文」を残す癖があります。その内容は支離滅裂。「私」は、無意識の「私」が何を伝えようとしているのかを、どうにか読み取ろうとします。
- 著者
- 金原 ひとみ
- 出版日
- 2008-01-18
金原ひとみのおすすめ作品をご紹介しました。『蛇にピアス』のイメージが、あまりにも強い作家ですが、その他にも読み応えのある作品がたくさんあります。気になったものがあれば、ぜひ読んでみていただければと思います。