ミステリー作家、柳広司とは?
柳広司は三重県出身のミステリー作家です。1967年生まれ。神戸大学法学部を卒業します。
2001年、『黄金の灰』で小説家デビューを果たします。同年に刊行された『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で朝日新人文学賞を受賞、2008年に刊行された『ジョーカー・ゲーム』では、吉川英治文学新人賞および日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞、「このミステリーがすごい!」で第2位、本屋大賞では第3位に輝くなど、高い評価を受けました。
歴史上の人物や戦争をテーマとして取り上げ、時には主人公として登場させて史実とは違った一面を描いてきた柳広司は、これまで自身が読んできた小説に登場していたカッコいい大人の男性に強い憧れを抱いていたそうです。そのため、自身が小説家になった現在、読者が憧れる様なカッコいい大人が登場する小説を書いていきたいと考えているようです。
柳広司の出世作!本格的スパイ小説
2008年に刊行された『ジョーカー・ゲーム』は柳広司の名前を広く知らしめたスパイ小説で、D機関シリーズとして『ダブル・ジョーカー』『パラダイス・ロスト』『ラスト・ワルツ』の3作が続編として刊行されています。
昭和12年に設立されたスパイ養成機関「D機関」を主としたD機関シリーズは、設立者・結城中佐を中心に、D機関所属メンバーの諜報活動時に起きた事件を描きます。これまで読者の中にあった、華やかなスパイというイメージを壊した斬新かつスタイリッシュな内容です。
- 著者
- 柳 広司
- 出版日
- 2011-06-23
諜報活動のため、全国各地に移住したメンバーの表向きにならない活躍がそれぞれ短編で書かれた本作は終始、ワクワクドキドキが止まりません。第1話では、親日家と知られるジョン・ゴードンがアメリカのスパイだという情報を元に、憲兵に扮したD機関メンバーが捜査にあたります。しかしこれは、すべてD機関の存在を嫌う軍上層部が仕組んだ罠だったのです。そこでD機関設立者であり、伝説的なスパイの結城中佐は、裏の裏を読んだ動きを見せていきます。
その緻密で狡猾な手法に驚くと同時に爽快感さえ覚えてしまうことでしょう。フィクションでありながら、どこかリアリティがありストーリーに引き込まれてしまうのです。ありえないことを平然とやってのけるD機関メンバーのカッコよさも、本作に惹きつけられる要因の一つといえます。
『坊ちゃん』が、傑作ミステリーとして復活?
柳広司が手掛けたパスティーシュ作品の中でも、秀逸とされる2001年刊行の『贋作「坊っちゃん」殺人事件』。かの文豪夏目漱石が書いた名作『坊ちゃん』の3年後を描いた作品で、主人公の「おれ」が四国の中学教師を辞める要因になった教頭「赤シャツ」の自殺の謎を追っていきます。無鉄砲で、考えるよりも口が先に出てしまう「おれ」が起こす行動で、事件の真相にどんどんと近づいていきながら判明していく『坊ちゃん』の中で描かれたエピソードの裏。『続・坊ちゃん』と称しても過言ではないほどの内容に感動すること間違いなしです。
- 著者
- 柳 広司
- 出版日
- 2010-11-25
文豪夏目漱石が読んでも納得してもらえるのではないかと思うストーリー展開と、謎が解けていく様子は、読み始めて数分で目が離せなくなってしまいます。『坊ちゃん』を読んだことがない方でも楽しめる内容の本作は、『坊ちゃん』を知っていればもっと楽しめるかもしれません。「おれ」のまっすぐな性格が見事に活かされ、夏目漱石の文体を見事に模写する作品を、お楽しみください。