1958年に『野獣死すべし』でデビューした時、まだ学生だった大藪春彦を文壇に推薦したのは江戸川乱歩でした。そのデビュー作はシリーズ物となり、野獣シリーズは没する前年の1995年までに11作品が世に送り出されました。他にも多くシリーズ小説を執筆している大藪春彦の代表作を通してその魅力が少しでも伝わればと思います。

- 著者
- 大薮 春彦
- 出版日
- 著者
- 大薮 春彦
- 出版日
- 著者
- 大薮 春彦
- 出版日
- 著者
- 大藪 春彦
- 出版日
- 著者
- 大藪 春彦
- 出版日
- 2008-06-12
石川克也は32歳、新東京製薬でプロパーとして働いています。プロパーとは製薬会社で製造した薬を病院や医者に売り込む仕事です。売り込みに成功すれば報酬は大きいのですが、売り込むまでには医者の接待や病院関係者へのご機嫌伺い等で出費を余儀なくされる厳しい仕事で、ライバル会社は山ほどいます。石川は傲慢な医者たちの要望に応えるため、昼夜を問わず多忙な日々を送っていました。
お愛想笑いをたたえ時には土下座もいとわずご機嫌取りに奔走する石川を、医師らは馬鹿にして下僕のように扱います。しかし普段はその高身長をドブネズミ色のスーツに包み、なすび型の眼鏡をかけて間の抜けたような印象を与える石川は、実は筋骨隆々で眼光鋭い冷徹な男です。西多摩の福生市にあるヨコタ基地のそばにあるアメリカン・ハウスに住み、米軍に所属する友人のボブから非合法に大量の武器を買い取り、それを家の地下に隠しています。
卑屈とも思えるほどの振る舞いで医師らに隷従し、好色な医者には女を世話し、女医やホモセクシュアルの男性医師には自らの体で応えてやる石川の目的は会社の売り上げに貢献するためなどではなく、彼自身の野望のためでした。
- 著者
- 大藪 春彦
- 出版日
- 2006-06-13
本作を読み始めると、まずは製薬会社と医者や病院との関係に驚かされます。少しでも現実を基に描かれたところがあるのかもしれないと考えると、非常に恐ろしい作品です。さらには医者たちの果てしない色欲と金銭欲に圧倒され、石川の感じる嫌悪感に同調するうち、読者は自然に石川に対し、ある期待を寄せるようになっていくでしょう。
スリリングな展開に心躍らされ、早く結果を知りたいと思って先を急ぎたくなる作品ですが、本筋の周りにも様々な読みどころがあります。
製薬会社と病院の関係や強烈な性描写はもちろんの事、石川の趣味のモトクロスや射撃、兵器類の扱いの描写も見事です。中でも狩猟を得意とする石川の作る肉料理は大変美味しそうで心引き付けられます。一人暮らしの石川が料理をする場面は何故か作品中に多数見られ、作品には描かれていない石川の心理をその料理から推測して読むのも楽しいかも知れません。日本のハードボイルド小説の代名詞といって過言ではない大藪春彦が描く、全編が衝撃的な圧巻の大作です。