6位:勇者になれなかった俺の仕事観『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』
この作品は、魔王を倒すための勇者が活躍している世界の物語です。主人公のラウル・チェイサーは、そんな勇者に憧れる勇者マニアな少年。しかし、成績優秀で憧れの勇者まであと一歩というところで、なんと当の魔王が倒されてしまいます。
魔王が倒されるまでの物語は数あれど、魔王が倒されたあとの世界の物語は、なかなかありません。現実と異世界が入り混じったようなファンタジー小説です。
勇者マニアで勇者になることだけを考えて頑張っていたラウルは、魔王が倒されたことで勇者になるという夢を叶えることができなくなってしまいます。しかし、世は就職氷河期。意に沿わぬ仕事をしなくてはいけない現実。
これは、現代社会で誰もが一度は感じることのある物語なのではないでしょうか。そんなラウルの前に現れたのは、なんと倒された魔王の娘・フェノで……。
- 著者
- 左京 潤
- 出版日
- 2012-01-20
勇者になりたかった少年と、魔王の娘が織り成すファンタジックドタバタコメディです。コメディですが、どこか考えさせられる物語でもあります。「働くとは」という大きなテーマについて考えさせられます。
この作品は最初のシーンから読者をそんな問いに引き込みます。マジックショップで働くラウルの前に現れるフェノ。勇者学校で首席だったのになぜ?と彼に迫る彼女に根負けして、ラウルは変わってしまった環境を言い募ります。
「それで諦めたっていうの!?」となおも迫るフェノにラウルは反論しようと苦い記憶を引き摺り出します。それは異世界の状況でありながらも就職活動をしたことのある者なら誰しも覚えのあるような痛みを感じます。そんな彼が反論しながらも次第に勢いを失っていく様子はやるせなくて悲しい。「仕事」というテーマについて考えざるを得ません。
夢が叶わなかったとき、夢をあきらめなくてはいけなくなったとき、人はどうやって立直っていけばいいのか、その参考になる物語です。
5位:流星さえ射落とす!百発百中の弓の達人が繰り広げる英雄譚『魔弾の王と戦姫』
主人公ティグルヴルムド=ヴォルンは辺境の領主です。狩りを好み、弓の腕は超一流。しかし母国、ブリューヌ王国では弓を臆病と蔑む風潮がありました。不当なまでに低い評価のなか、彼は隣国ジスタートで指揮官としての才能を開花します。そして率いる軍勢はこう謳われます。「銀の流星軍」と。
ティグルの放つ弓は威力、距離、精度どれをとっても常人を凌駕します。いち早くその彼の才能に気づいたのは、隣国ジスタートを守る戦姫エレオノーラ=ヴィルターリアでした。彼女はその力を高く評価し捕虜として手厚く迎えたのです。作中初めから突出している華麗な弓技は常人を超えてはいますが超能力や魔法といったものではない純粋な業です。
- 著者
- 川口 士
- 出版日
- 2011-04-20
恋愛色が強いわけではないのですが、ヒロインは隣国の戦姫と呼ばれる魅力的な女性たちです。どこか掴みどころがなく気分屋で楽天家のエレオノーラ=ヴィルターリア、冷たく見えるけど何かと面倒見の良いツンデレのリュミドラ=ルリエ、優しく包んでくれるオーラを纏うが国を守る戦姫としての威厳も併せ持つ美女ソフィーヤ=オベルタス。
戦姫は特殊な武器「竜具」を手に戦場で一騎当千の活躍を見せてくれます。しかし女性らしく弱い部分も持ち合わせていて、主人公ティグルを取り巻くライトなハーレム状態もこのラノベ作品の魅力です。
ストーリーが少し進むとティグルは先祖代々伝わる「黒弓」を手にします。この弓には特殊な力が宿っていて魔法のようにも感じました。ですが本作では意外と魔法色は薄く、純粋な軍略と政略が楽しめるでしょう。そしてティグルの「黒弓」、7人の戦姫が持つ「竜具」の持つ不思議な力が、物語に伝奇的なスパイスも加えてくれます。渦巻く謎に好奇心が膨らみます。
物語の随所に人間ではない「怪人」が現れるのですが、持つ武器と人物には何かしらの意味があるように思えました。題名にもなっている「魔弾の王」、これについては謎だらけですが、主人公との関わりを想像すること必須ですね。いにしえより伝わる謎多き武器と魅力的なヒロイン達と不思議な冒険を味わいたい方におすすめです。
4位:やる気ゼロの天才軍師が寝ながら進む出世物語『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』
主人公のイクタ・ソロークは昼寝と女を漁るのが趣味の怠け者です。彼が住まう世界は精霊が実体として存在し、人間のパートナーとして共生しています。物語は昔馴染みの赤髪の美女ヤトリシノと国立図書館司書のポストを交換条件に、イクタが高等士官試験に挑むところから始まります。
怠け者で女遊びが好きな彼ですが、軍師としての能力は傑出しています。眼には見えない敵軍と友軍の動きをイクタは想像と論理で補完します。敵から見れば恐ろしく、仲間から見れば預言者のように頼もしいですね。
彼が軍師として語る軍略の基礎は価値観を変えるでしょう。作中、各個撃破により少数でも大多数の軍勢に勝った戦略を士官学校で学ぶ場面があります。イクタ曰く本当に見るべきものは、戦略によって少人数でも大多数の敵を倒すことが出来るということ。それが歴史的に証明されたことが重要だと。
上記のような場面では、イクタの授業を受けているように思えて新鮮でした。
- 著者
- 宇野朴人
- 出版日
- 2012-06-08
そしてそんな彼を咎めるヤトリシノは帝国の皇族に忠誠を誓っている騎士です、二刀流剣術は凄まじく士官学生とは思えない程。イクタの言葉は間違ってはいない、理屈ではない忠誠心だけで動く彼女を理解しがたく思うこともあるでしょう。本作では皇族や英雄を嫌うイクタと、皇族に絶対の忠誠を抱くヤトリシノの関係に要注目です。
親友であるはずなのに立場が違う二人。無駄死にしか見えていない戦地に軍人を送る
カトヴァーナ帝国に、イクタは腐敗を指摘しました。そしてヤトリシノはイクタの無礼を力ずくで謝らせ、必要とあらば首を刎ねる覚悟もしているようでした。痛ましい気持ちにもなりますが、だからこそ続きが気になる作品でもあります。
国を治そうとする者、国にただ忠誠を誓う者、迷う者、従うだけの者。沢山の人間の思惑と感情が主人公を取り巻く本作は悲しみと苛立たしさを抱きます。しかし、それでもイクタと国を変えていきたい方におすすめです。