3位:後悔。この言葉と縁が切れるなら、金に糸目はつけないのだが…
- 著者
- 佐藤 愛子
- 出版日
この一冊は題名の通り、「何でこうなるの」というエピソード集です。
「撃ちてしやまん」は、引越しの朝の出来事を書いていますが、これがまた傑作です。疲れているから休みたいと佐藤愛子は切望するのですが、次から次へと手伝いの人が来てくれて休めません。そんな慌ただしい中一本の電話がかかって来ます。
「この糞忙しい時に」と思いつつ、電話に出る佐藤愛子。その時手伝いの人が著者の大事な陶器を無造作に持ち歩いているのが目に入ります。落とされたら「さあ大変」と焦る著者に電話の主の年配の女性はお構いなく喋りまくります。「婿がお金の為にホストクラブに転職し、とある客から百万円で男妾の話を持ちかけられているがどうしたものか」という相談です。
佐藤愛子ともあろう人が、すっぱりと断れずにずるずると相手のペースに引き込まれるさまが何とも滑稽で、思わず笑いこけてしまうエピソードです。
「何でこうなるの?」、でも「こうなっちゃうんだよね」という、一見そうは見えない著者の人情家の一面が垣間見られます。
2位:なっちゃったものは仕方が無い。ケセ・ラ・セラだー!
- 著者
- 佐藤 愛子
- 出版日
ああならない様に、こうならない様に、そんなこと考えてたら間違いなく病気に向かってっちゃうぞーと忠告してくれる本です。
「理想の孫ムコ」は、佐藤愛子が抱いている理想の日本男子像は「フム・フム、こんなんなのか?」と思わせてくれ、著者らしいと納得出来る話です。
昨今日本男子の軟弱化が取り沙汰されていますが、このエッセイが書かれた1997年ごろからすでに、そういう傾向があったんだなぁ、と改めて考えさせられます。
佐藤愛子の五歳の孫娘が、同年の男の子と「結婚した」と言います。その真相は?「結婚しよう」「ウンいいよ」と言って手を繋いだから「結婚した」事になったという、子供の世界のファンタジー。
その孫の相手は、だらしない服装の鼻たれ小僧で、いわゆる教育ママの理想の男の子ではないのですが、著者は孫娘の理想のムコというのです。
小さいうちから英才教育だ何だと、親の理想を振りかざして子供を洗脳するから、大人になってもなかなか自立できない男が増えるのだと、子供は親の背中を見て育つというのは現代にもちゃんと通用するんだよ、と著者は言いたいのです。
最近そう叫ぶ大人が減ってきている事を思う時、佐藤愛子の文章は魅力が一杯。ゲラゲラ笑わせながら、現代社会の風刺がピリリと効いたエッセイ集です。
1位:佐藤愛子の大傑作エッセイ
- 著者
- 佐藤 愛子
- 出版日
- 2010-11-10
佐藤愛子がある銀行のPRの一環として依頼された講演で、「近頃の男は妻と一緒になって、将来の為にとか何とか言って、金を溜める事ばかり考えている。不甲斐ない事極まりない」という内容の話をして喝采を浴び、終わってから自分の話の内容に頭を抱えたというくだりがあります。
講演依頼の趣旨を忘れ、日頃の自分の想いをマグマのように噴出させる著者ですが、現実に目を向けると、将来の為の貯蓄が必要という考えも否定できません。とはいえこのような前のめりの姿勢こそ佐藤愛子の真骨頂。この「老い力」には、老いてますます健筆になった著者の小気味よい語り口が満載です。
余生を自分らしく、ジタバタせずに生きたいという佐藤愛子の底力には、読者としても「なにくそ」精神の昂揚を促されます。人間の死亡率は100パーセントですから、余生に突入したらその時こそ、自分を生き抜く為に、渾身の努力をする必要がある事を気付かせてくれるエッセイ集です。