自らの体験を元にした、がんのドキュメンタリー
「がん」というものに、立花隆が実体験を通してアプローチした、渾身の作品です。
がんという病気が困難で、対処し難いということが良く分かります。しかし、がんに罹ってもなお腐らず、「なぜ?」という気持ちで好奇心を忘れずに突き進んでゆく、立花隆の姿勢には驚かされます。
分からない物を自分自身で調べたい、どういうものか確かめたい、という気持ちが病気や死の恐怖を上回っているのでしょう。これはNHKスペシャルでドキュメンタリー番組として放送されましたが、巻末にその時の完成台本が載っています。実際に映像を見なくても、その時の臨場感が伝わってくるようです。
- 著者
- ["立花 隆", "NHKスペシャル取材班"]
- 出版日
- 2013-08-06
著者が局所麻酔で手術をしてもらっている際、なんとモニターに映る自分の患部を見ながら医師に質問をしていたそうです。ところが、はじめは色々と答えてくれていた医師も、次々と質問してくる立花に色んな気持ちがあったのでしょう。
「もう何もしゃべらないで下さい。危ないですから。黙っててください。しゃべるとお腹が動くんです」 ビシっという感じだった。それはもう反論も質問も許さないというほど強い口調だった。(『がん 生と死の謎に挑む』より引用)
まるでコントのような話ですが、映像に映し出される患部の姿を実際に目にして、気づいたことや感じたことなどを聞かずにはいられなかったのでしょう。
立花は、自分が疑問に思ったことは必ず文献にあたって調べ、それでも分からないことや調べて改めて疑問に思ったことを後日専門家に聞くという、徹底ぶりででした。
近親者や尊敬する先輩たちが次々とがんに倒れていき、自分自身もがんにかかった立花隆でしたが、知りたいというその気持は失せるどころか、ますます強くなったようです。自身のがんの治療法についても、主治医から詳細に聞いており、「死」に関することも、飽くなき探究心で淡々と聞いていたことに驚きでした。
あの野口聡一に宇宙飛行士を志させた本
脳科学者の茂木健一郎のおすすめ本でもあり、野口聡一がこの本を読んで宇宙飛行士を志した、という一冊です。実際に宇宙に行った宇宙飛行士にインタビューをして、まとめた内容となっています。
立花隆はインタビューで、表層的なものをなぞるのではなく、彼らの内面に切り込んでいくスタイルをとりました。もちろん自分の興味があることを聞きたい、ということでインタビューを行ったのでしょうが、今まで宇宙飛行士に対して、ここまで精神的なところに触れたものはなかったように思います。
- 著者
- 立花 隆
- 出版日
- 1985-07-10
宇宙体験という限られた人のみが経験する事象で、宇宙飛行士たちはそれぞれ内面の変化により、詩人になったり、画家になったり、宗教に目覚めたり、政治家になったりしています。
個々の人格によって違いがあり、何の影響をもなかったと断言する者もいれば、精神病院に入院してしまった者もいました。強く神を意識した者もおり、帰還後の人生を変える原因になったといえます。
人生のターニングポイントを迎える「宇宙体験」を、この本を読むことで、追体験することができます。そしてやはり、実際に強烈な宇宙体験をしてみたいと思う、そんな1冊です。
巻末には、作者立花隆と宇宙飛行士の野口聡一との対談も掲載されています。
立花隆の頭の中が一体どうなっているのか、驚かされる本
本書は立花の読書の記録ですが、守備範囲の広さに驚きを隠せません。ノンフィクションから政治、文化、科学や学術書に至るまで、ありとあらゆる本を読んでいます。ただし小説の類はあまり読まないようで、唯一『カラマーゾフの兄弟』があるぐらいです。
しかし、多忙の立花隆がどうしてここまで本を読んでいるのか、不思議になるのと同時に、自分の浅さにも気付かされます。深い洞察と文章を的確に捉えることの出来る能力は、さすがとしか言いようがありません。
- 著者
- 立花 隆
- 出版日
- 2016-07-08
本好きの方なら似たような体験があると思いますが、自分の興味があるものだけの読書を続けると、似たような本にばかり目がいってしまい、知識も偏りがちになってしまいます。
冒険しようと違うジャンルから本を読もうとしても、本選びで失敗することを恐れ、世間で評判の良い物を意識的に選んでしまいがちです。そこにはもう冒険はありません。
そんな時に、知的好奇心に溢れ、興味対象が幅広い立花隆の視点で選ばれた本を教えてもらえるというのは、とてもありがたいです。
ただし時折、驚くようなトンデモ本が紹介されていて、オカルトや神秘主義に寄っていたことを思い出します。人間らしくて、こういうところも良いかもしれませんね。