米原万里のエネルギッシュな表現が楽しい書評集『打ちのめされるようなすごい本』
米原万里は大の読書家です。1日に7冊、20年間読み続けたとも言われる彼女の読書量は凄まじいものでした。そんな彼女が選りすぐりの本について語る『打ちのめされるようなすごい本』は、内容の濃い書評集です。
「一度読み出したら読み終えるまで寝食などどうでもよくなる」と本人が語る『きみの出番だ、同志モーゼル』(スコリャーチン著)などの有名作品はもちろん、「発声器官が笑い魔に乗っ取られていてちゃんと読めない」などの生き生きとした笑いが伝わる『趣味は読書。』(斎藤美奈子著)など、幅広い本に対する書評がテーマ別に掲載されています。
- 著者
- 米原 万里
- 出版日
- 2009-05-08
本書は、米原万里の本への愛が伝わる1冊です。彼女の評価はストレートで、表現に嘘がありません。時に褒め、時にぴしりと刺すような言葉を本に対して投げかける彼女は、まるで本の中で生きているようです。
2009年に発売された本作は、2000年代の米原が見た社会を本を通じて描かれている部分も多く、社会論としても価値のある文献と言えるでしょう。特に、スラヴ民族に関わる書評はなかなか米原でなくては見出せないようなラインナップなので、民族史に興味のある人にもおすすめできる書評集です。
米原万里の目が切り取った文化を感じるエッセイ集『心臓に毛が生えている理由』
『心臓に毛が生えている理由』は、米原の考えや経験が活きるエッセイ集です。
エッセイのテーマは、日本の文化を他国との差異で描くこと。日々暮らしている中では気が付けない日本文化について考える機会をくれるエッセイや、逆に他国の文化を紹介することで日本の現状を省みることのできるエッセイが満載です。
日本の文化の集大成と言われる茶道。その家元がロシア要人に招待された際に米原万里が見た、意外な一面とは……?(わたしの茶道&華道修業)
日本人は「カワイイ」が合言葉であるように、ロシアは「素晴らしい」が合言葉。いつでも気軽に言える賞賛の言葉から見る、文化の違いを描きます。(素晴らしい!)
- 著者
- 米原 万里
- 出版日
- 2011-04-23
新聞や雑誌に掲載されたものを多く含み、手軽に読める文章量のエッセイで構成されています。日ごろのちょっとした休憩時間に読んでは、くすりと笑えるような読み方ができますね。
米原本人の魅力でもある率直な物言いと、鋭い観察眼の光るテーマの切り出し方がとても面白い一冊です。人として彼女がとても素敵な人物だ、と身近に感じることのできる語り口調に引き込まれます。特に、翻訳家としての彼女の仕事術を描いたエッセイは尊敬できるでしょう。
普段は考えない、気付いていない部分に光をあてる『心臓に毛が生えている理由』は、米原万里という人生の先輩の頭の中を覗き見るようなエッセイ集です。
動物への愛が詰まった米原万里のエッセイ集『ヒトのオスは飼わないの?』
とても印象的なタイトルの『ヒトのオスは飼わないの?』は、彼女と動物たちの日々を綴ったエッセイ集です。
猫や犬を「毛深い家族」と呼んで人のように愛する米原。猫4匹、犬2匹と戯れながら過ごす風景は、平和そのもの。いつもは鋭い言葉の米原も、犬や猫にかかるとふにゃりと力が抜けるような一面が可愛らしいです。
タイトルの由来は、恩師に言われた「ネコイヌもいいけれどねえ、君、そんなことより、早くヒトのオスを飼いなさい、ヒトのオスを!!」という名言だそうです。
- 著者
- 米原 万里
- 出版日
- 2005-06-10
タイトルで誤解される方も多いのですが、ヒトのオスに関する話はほとんど出てきません。全編動物への愛で構成されています。
長編小説やノンフィクション小説で評価された高い表現力や、エッセイで光らせる観察眼の全てが、犬や猫に注がれた大変贅沢な一冊です。
今までの米原万里の作品とは全く違った一冊ですが、やはり米原の文章であると唸らせるものがあります。中には涙を誘うものもあり、豊かな感情を与えてくれる物語としても読めるでしょう。