役に立たない事が役に立つ
現代社会では、考える事が仕事になっている人が大勢います。文章を書いて、色々な事を計算し、会議では役立つアイディアを出さなければいけません。そのような時、どうすれば効果的に考え、成果を上げることができるのか、著者なりの考えを記したのが、この本『思考の整理学』。
- 著者
- 外山 滋比古
- 出版日
- 1986-04-24
この本のポイントとして、一見すると役に立たないことの重要性を論じている点に注目。役に立たないことが役に立つとはどういうことなのでしょうか。
例えば、昔の教育機関や塾、道場では、入門してもすぐに教えるようなことはしませんでした。新入りは、薪割りや水くみ、子守りなどの面白くない仕事ばかりさせられていたのです。そして、このような教育法は、現代社会にも受け継がれている点がポイント。学校の勉強でも、ことわざをひたすら暗記させられたり、歴史の年号を延々と覚えたり、と何の役に立つのか分からない事をさせられます。
しかし、このような経験が、ある時、意味のある出来事と結びつくことがあります。例えば、時代小説を読んでいた時、ひたすら覚えさせられたことわざの元となった出来事が記述されており、ことわざの真相が、豊かな彩りをもって実感させられた、といった事はないでしょうか。
例えば、四面楚歌という言葉も、教科書で習えばただの暗記すべき言葉のひとつですが、物語の中で四面楚歌の場面に出くわした時、そこにある悲劇や重厚さが、リアリティをもってよみがえってきます。そして、これが四面楚歌か、と実感を伴って感じる事ができ、単なる暗記ではない身についた知識として、自身の中に活きてくるようになります。
このように、役に立ちそうにない知識が、ある場面で活かされ、日常を豊かにするという事は、昔の人が経験的に知っていた知恵なのでしょう。
そのように考えると、学校の勉強も無駄なことではなく、自分を成長させてくれるものであり、あるとき意味をもつようになるかもしれないということが分かります。同じように、日常生活の些細な事も、あるとき意味を見出す事が出来るようになるかもしれず、意味のないと思われる事が他の場面で活かされ、そこに意味を見いだせるようになるかもしれません。
どのような事も何かの糧になる、と考えれば、様々な雑事も、やる気をもってのぞむことが出来るようになり、色あせていた日常が豊かになるのではないでしょうか。
また、著者は、雑用をする行為について、したいことを制限することでやる気を生み出す効果がある、と説明。そのような考えも、なるほど、と頷いてしまうものなのですが、その点について興味のある人は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
見る側と見られる側
会社などに属していると、プレゼンテーションなどで、大勢の前で話さなければいけない事があります。そして、いざプレゼンをするという時になると、どうしても緊張してしまいますよね。そのような問題に真っ向から取り組むのが、本書『人前であがらずに話す技法』。
- 著者
- 森下 裕道
- 出版日
- 2011-07-22
よく見られる意見として「自分のことをよく見せようとするから緊張するんだ。ありのままの自分でいけば、緊張なんかしない」というものがあります。しかし、著者は、このような意見を否定。そのように思っても、緊張する時は緊張してしまいます、と説明します。
では、どのようにすれば緊張しなくなるかというと、著者は、見られている側から見ている側へと変更すれば、緊張しなくなる、と解説。その点を、面接の場合を例示して説明します。
面接をしている時、面接を受けている側である受験生は緊張しますよね。しかし、面接をしている側に目を向けるとどうでしょうか。面接官の中に緊張している人は、一人もいないと思います。著者は、その違いを分析し、これを見ている側と見られている側の違いであると定義。そこに緊張するかどうかの違いがあると説明します。そして、実際にその点を裏付ける例を紹介していきます。
例えば、先ほどの面接官の話でも、面接官の中にひとり会社の偉い人が入ってくると、面接官も緊張します。面接官が見ている側から見られている側に回るから、というのがその理由。学校の先生も、普段の授業では緊張しませんが、授業参観では緊張します。それは、子供たちを見ている側から、子供たちの父母に見られている側に変わるからです。
このように、著者は、緊張する時のポイントを見ている側と見られている側に分けて説明。この見方は、緊張する人のポイントを捉えています。また、この点から、緊張した時の対策として、自分は見られているのではなく、見ているのだと思えばいい、と説明。著者の述べる緊張を解く方法のポイントはここにあります。
このように、著者は緊張しない方法を多く紹介。人前に出る機会の多い現代人だからこそ、身につけておきたい考えが多く、卓見に満ちた優れた一冊です。ここに記した考え方に興味を持った人は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
息を整えればリラックスできる
どのような社会においても、ストレスを減らす事で、楽に生きられるようになります。そこで、重要になってくるのが呼吸法。姿勢をよくして効果的な呼吸を身につければ、普段の生活が疲れにくくなります。そこで、効果的な呼吸法についてまとめたのが、本書『呼吸入門』。呼吸についての優れた考えを学ぶ事が出来ます。
- 著者
- 齋藤 孝
- 出版日
- 2008-04-25
まず、呼吸を整えるには、立ち方から整える必要があります。そこで重要なのが、荘子の、真人の息は踵を以てし、という言葉。試しにかかとに重心を置いて立ってみてください。つま先の方に重心をのせると、前屈みになりやすいのに対して、かかとに重心をのせると、身体がまっすぐになり安定するのが分かるのではないでしょうか。そして、自分の身体に中心軸を作るようにすると、余計な力が抜けるので、リラックスした状態になりやすく、呼吸も楽になります。
このように、呼吸を整えるためには、まず身体を整える事が必要。そうしてから、効果的な呼吸法を実践していく事になります。
中でも、著者が勧める呼吸法は、鼻から三秒息を吸って、二秒お腹の中にぐっと溜めて、十五秒かけて口から細くゆっくりと吐く、という方法。試しに、この呼吸法を実践してみると、初めのうちは、息を吐く動作が長く苦しいのですが、続けていると次第に気持ちがリラックスしてくるようになります。この呼吸法は、著者が20年かけて編み出したものであり、万人に効果のある優れた呼吸法ですので、気になる方は、ぜひ取り入れてみてください。
そして、著者は、呼吸は他の人と合わせることで大きな力が発揮される、と指摘。例えば、御輿を担いでいる時の様子を想像すると分かりやすいと説明します。
大きなかけ声と共に、自分の力と息が、全体の力を支えている感覚。著者は、これが大切だと説明します。息が合う、という言葉があるように、ひとつの息が全体の息と調和している時、一体感が生まれたり、安らかな気持ちになったり、疲れないように感じられます。
この他にも、ゲーテは呼吸における息を地球規模で考え「私は大気につつまれた地球を、ちょうどたえまなく息を吸い、息を吐いている大きな生き物のようにかんがえている」と説明。これなどは、面白い考えですよね。
息は、人が生きていくために必要なものであり、息を整えれば身体を整えリラックスする事ができます。ここで紹介した呼吸法の他にも、本書には役立ち面白い考えが盛りだくさん。気になる人は、ぜひ読んでみてください。