国内外の加害者プログラム
- 著者
- 信田 さよ子
- 出版日
- 2015-02-09
『加害者は変われるのか?: DVと虐待をみつめながら』では、諸外国の加害者への取り組みは、1970年代にスタートしたと述べられています。たとえば、女性運動が高まりを見せていたアメリカでは、1977年に連邦政府に対して「家庭内において暴力を受ける女性の救済対策強化への勧告決議案」が提出されました。
さらに1980年代には、アメリカの司法制度が州ごとに変わり、家庭内の虐待や暴力でも、警察が加害者を逮捕できるようになります。また裁判官によって更生の見込みがあると判断されれば、刑罰に代わって、更生プログラムの受講命令が下されるのです。
一方の日本では、2003年に「配偶者からの暴力の加害者更生に関する調査研究」が内閣府によって実施されました。しかし公的な加害者更生プログラムについては、実施に至っていないという現状があります(文庫版出版年の2015年時点)。
文庫版の解説によれば、著者の信田は、DVへの取り組みは、被害者を救済することはもちろんのこと、加害者に暴力行為をやめさせることも目指されるべきだということに長年注目してきたといいます。しかしドメスティック・バイオレンスなどの被害者に関わることが多かった著者が、被害者の存在をないがしろにすることはありません。
加害者プログラムについて知りたい方だけではなく、それに対していくらか抵抗感がある方にも、ぜひ手に取ってもらいたい1冊です。
DVの原因
加害者プログラムの講師でもある栗原は、ウートピの取材で、その原因を4点挙げます。
①社会のなかで、自分のほうが相手よりも偉いという価値観を学ぶため
②暴力を容認するメディアがあふれているため
③「女らしさ・男らしさ」に対する価値観が歪んでいるため
④幼少期に虐待を受けるなどトラウマを抱えているため
以上のようにして見てみると、背景には社会にある価値観やメディアのあり方、幼少期の体験などさまざまです。
とはいえ、④のトラウマ体験については慎重に考えていく必要があります。『DV・虐待 加害者の実体を知る: あなた自身の人生を取り戻すためのガイド』で、詳しく見ていきましょう。
俗説を正す1冊
- 著者
- ランディ バンクロフト
- 出版日
- 2008-11-27
『DV・虐待 加害者の実体を知る: あなた自身の人生を取り戻すためのガイド』の第2章では、「DV加害者たちに児童虐待を経験してきている傾向があるかどうかについては、複数の研究調査がありますが、関係性は薄いという結果が出ています」と述べられています(本書より引用)。
しかし、男性に対して暴力行為に及ぶ男性や女性に対して「かなり残忍な身体的暴力」に及ぶなどの男性は、児童虐待の被害者であることが多いといいます。とはいえ、女性に対してドメスティック・バイオレンスを行う男性と児童虐待の被害者との関係性ははっきりしていないのです。
著者はまた、幼少期の出来事を理由にして加害者になる男性について、以下のように主張します。
「私は、DV加害者である男性が子どものころに経験したつらい思い出に共感してはいけないと言っているのではありません。(略)しかし、虐待しない男性は、過去の出来事を理由に相手を傷つけたりしません。相手の男性をかわいそうに思うことで罠にかかってしまい、相手の虐待行動に立ち向かうことに罪悪感をもってしまう危険性があるのです」(本書より引用)
このように第2章では、「DV神話」に対するさまざまな疑問に対して答えを得ることができます。
また第3章では「DV加害者の考え方」に迫っていくのですが、そこで述べられている「DV加害者は言い訳の天才です」という言葉が印象的でした。
本書によれば、言い訳の材料になることとは、「相手のせいにしないときは、ストレスやお酒や子ども時代、あるいは自分の子どもや上司や不安感」。さらに加害者たちは、「言い訳をする特権が自分にはあると感じている」ともいいます。
このように本書では、ドメスティック・バイオレンスについて抱いていたぼんやりとした考えが、プラスの意味で一気に吹き飛ぶような感覚を得られます。
また初めに紹介した『愛を言い訳にする人たち』のなかでは、著者の山口が開設した加害者向け教育プログラムを行う「アウェア」へ取材を希望するメディア関係者におすすめする1冊として、本書が紹介されています。
それほどドメスティック・バイオレンスに対しては「神話」的なものが「事実」として、世間一般に受け入れられてしまっているのではないでしょうか。正しい理解を深める際に、ぜひ手に取りたい1冊です。