子どもの貧困の実態
- 著者
- ["中嶋 哲彦", "平湯 真人", "松本 伊智朗", "湯澤 直美", "山野 良一"]
- 出版日
- 2016-12-02
JK産業に携わる少女たちのなかには、経済的な貧困状態に陥っている子どもたちもいました。そもそも子どもの貧困について、その実態や対策はどのようなものなのでしょうか。『子どもの貧困ハンドブック』を参考に整理してみます。
まず、17歳以下の子どもの貧困率の実態について、2012年時点では約6人に1人、全国では320万人以上の子どもが貧困状態に直面しているとされます。なおここでいう子どもの貧困率とは、すべての子ども数に対して、貧困線(たとえば2人世帯では約172万円、3人世帯では約211万円)未満の世帯で暮らす子どもの割合を指します。
これに対して2013 年、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が制定されました。この法律は「教育支援」「生活支援」「就労支援」「経済的支援」という4本柱から構成される子どもの貧困対策の実施を義務づける法律です(2017年5月時点)。
本書では、同法を「子どもの貧困対策を法律で義務づけた」という点からは「意義深い」とします。その一方で、①「子どもの貧困」の定義が明確になっていない点、②貧困対策の基本が「子どもの自助努力を促すことにあって、貧困そのものを減らしたり、貧困を生み出す社会的メカニズム自体を除去したりすることが目的ではない」点が課題として挙げられています(本書より引用)。
というのは、家庭環境や社会的経験の全体としての改善がなければ、「子どもが自分や親への肯定的感情や将来への希望をもつことは難し」くなることが予想されるからです。子どもの将来は、家庭全体が貧困から抜け出せたときに開けるのです。
このように、子どもの貧困について実態から対策まで学べる本書は、JKビジネス問題から改めて子どもの貧困問題について気になった人にぴったりでしょう。教科書的な要素が強い印象で、子どもの貧困率の定義などについても丁寧に学べます。ですので基礎から知りたい、改めて基礎を確認したい人には特におすすめしたい1冊となっています。
以下の項目では、なぜJKビジネスは根絶されないのか、ということに迫っていきます。
なぜJKビジネスはなくならないのか
JKビジネスがなくならない背景には、どのようなことが考えられるのでしょうか。前述の一般社団法人Colaboの代表である仁藤の会見(2015)を参考にして、「公的な問題」と「日本社会の問題」という観点から、それぞれ3点整理してみます。
まず「公的な問題」という立場では、以下のような指摘がなされています。
①深刻な家庭状況や経済状況に直面している少女たちへの公的な支援が貧しい
※仁藤は、困窮状態にある少女たちに対する警察や児童相談所の対応やその限界を問題視しています。さらに児童相談所では、予算や人材、研修制度、職員の専門性などが不十分だという指摘も行っています。
②街頭やネット上などで行われる巧みな勧誘の危険性について、教育されていない
③法規制に抜け穴がある
続いてJKビジネスがなくならない背景として、「日本社会の問題」という視点から、以下の3点をまとめました。
①少女たちが売春する際の切迫した背景への理解が進んでおらず、自己責任や貞操観の問題として捉えられがち
②子どもの人権を守る意識が低く、少女を性の対象とするカルチャーもある
③JKビジネスが、人身売買や児童買春の温床になるという理解が進んでいない
このように、JKビジネスがなくならない背景はさまざまです。一人ひとりがJKビジネスの実態について、正しい理解を進めていくことが求められているでしょう。
ここから先は、JKビジネスへの対策について述べていきます。
JKビジネスへの対策
JKビジネスへの対策(2017年4月時点)としては、どのようなものがあるのでしょうか。3点整理しました。
①神奈川県や愛知県は、青少年保護育成条例を改正
※神奈川県では店舗型の個室接客の規制(2011年)、愛知県では全国で初めてJKビジネスを全面的に規制(2015年)しました。
②東京都は2017年、全国で初めてJKビジネス規制に絞り込んだ条例を可決
※弁護士ドットコムニュース(2017年4月9日)によれば、同条例は神奈川県・愛知県の規制よりも対象範囲は広範で、営業を行う際には「届け出制」を導入しています。
③国や民間団体で、啓発活動や支援活動などを実施
※国は2017年3月31日、JKビジネスやアダルトビデオへの出演強要で深刻化する性被害を受けて、対策会議を開き、緊急対策をまとめました。また先述した、孤立状態にある10代の少女たちへの支援などを行う一般社団法人Colaboでも、講演などを通した啓発活動やJKビジネスなどを経験した少女たちの「背景」に目を向けさせる展覧会などを主催しています。
このように、地方自治体や国、そして民間の団体によって、JKビジネス根絶に向けての対策が進められているのです。JKビジネスによって搾取されたり性被害にあう少女たちがいなくなるよう、今後より一層の対策が求められているといえるでしょう。