本が好きなあなたは、きっと華恵に恋をする『本を読むわたし』
4歳から14歳までの本を読む自分について、15歳の華恵が綴ったエッセイ集。本作は、書評集ではありません。あくまで本を読んでいる華恵の感受性を読む一冊です。
華恵にとっての読書は、自分と向き合う時間。孤独や葛藤と向き合う時、彼女の相談相手として本はすぐそばにいたのでしょう。華恵の本との関わり方は美しく、図書館で笑って楽しみ、本を読むと爽快になる、といった表現が心地よいです。
- 著者
- 華恵
- 出版日
日本では教育の一貫として読書が強制されたり、勉強の延長線上に語られたりすることが多いように感じます。しかし、本来読書は文字を通じた自分自身との対話で、ストレス発散や相談などの役割を果たすのでは?
そんなことを考えさせてくれる華恵の読書に対する愛情は、読書好きにとってなんとも好感が持てるものです。「わかる!」と共感する部分が多くあり、いつしか本への愛を素直に語る華恵に対して愛情が湧いてきます。
特に本作内のオススメは「はせがわくんきらいや」。「はせがわくんきらいや」は、ヒ素入りのミルクを飲んで体が不自由になった長谷川君と、長谷川君を嫌いながらも叱咤激励する主人公が描かれた絵本です。
自分の意思でどうにもできない弱さを持って生まれた人と、その周りにいる人の弱さ。そして、弱さを受け入れる本当の優しさとは……?小学四年生の華恵が本を通じて感じる、優しさと弱さの意味。読んでいて胸が痛くなる想いが静かに語られます。
きっと読書好きのあなたが華恵のファンになる一冊です。
一番感受性が揺れる時期……18歳の華恵の心『たまごボーロのように』
『たまごボーロのように』は18歳の華恵によるエッセイ集。『寄りみちこみち』同様、美しく日常が描き出されていますが、たった1年で全く違う一冊になっています。
18歳の彼女は、大人と子供の価値観の間で揺れており、文才や感受性は変わりませんが、今までと何かが大きく変わる予感を抱える、高校生特有の不安定さが垣間見えます。感受性が豊かであるがゆえに、時に揺れる感情の起伏やハッとするような鋭角な目線が美しく光るのです。
- 著者
- 華恵
- 出版日
- 2010-02-27
彼女のフィルターを通じて大人の女性になることについて考える機会をくれるところがまた良いです。才がある一方、等身大で平均的な考えを持つ彼女の感性のバランスは絶妙で、誰しもが知る成長を追体験することができます。
本作は、書いている華恵が反抗期ということもあってか、家族との対話が印象に残るエッセイが多いです。特に母と携帯電話の料金についてもめるエピソードはとても身近に感じられて、母娘の強い絆を感じられます。
ちなみに華恵のお母様はとても素敵な人です。彼女がエッセイを書く際も、書く前に必ず母に台所でテーマについて話し、感想を聴いてから書くのだとか。
幼い頃の文章は「なんて大人っぽい」という衝撃がありますが、本作では逆に「ちょっと傲慢で素直な部分も出てきたなあ」という印象が。でもそれが、また可愛いのです。
相変わらず優しくて素直な良い子だな……という温かい読後感を残すところは、さすが天性の文才を持つ華恵。まるで親戚の可愛く素直な女の子を見守っているような温かい気持ちになれる。大人の女性におすすめしたい一冊です。
山を通じて描かれる華恵の成長『華恵、山に行く。』
『華恵、山に行く。』は、 『山と溪谷』の好評連載を書籍化したものです。これまでの作品は華恵の内面の奥深くがあふれ出るような表現が多いですが、今回は他者に目線が向きます。
更に成長した華恵の目は、山の美しさや恐さ、山にかかわる人々を瑞々しく描いています。
- 著者
- 華恵
- 出版日
- 2010-07-09
華恵の登山に対する想いは、富士山登頂に向けて成長していきます。その過程で起こる様々な登山エピソードや、あらゆる国内の山を描く描写も楽しめる一冊。
山ガールという登山好きな女性を指す言葉が広まったきっかけとも言われるエッセイは必読です。モデルである華恵が本格的に取り組む登山姿には、憧れを抱く女性も多かったのではないでしょうか。登山の専門用語はほとんど出てきませんので、登山初心者の方も安心して読める一作です。
他エッセイ集にも登場している山の師匠こと今井さんのエピソードは特にオススメ。そのほかにも、偶然山で知り合ったおじさんとの心温まる交流や、そこから学んだことが丁寧に描かれています。
更に、本作はカラー写真がところどころ散りばめられており、華恵の感じる世界を視覚的にも楽しめます。
ちなみに、登山をしている時、華恵はほとんど話さなくなるのだそうです。自分の呼吸の音や木々のざわめきを聴き、自分自身と向き合う時間が流れる、と華恵は語ります。
どう登山を楽しむか、どんな時間がそこに待っているのかを語る華恵流の登山法、それが本作の魅力です。山や人、自然に対する慈しみが芽生える文章が詰まっています。登山が好きな方も、これから登山を始めたい方も、是非読んでみてください。