ワークライフバランス注目の裏側
『改訂版 ワークライフバランス: 考え方と導入法』では、ワークライフバランスが注目される最大の要因として、急激な少子化に対する政府の危機感と、それに対する対応策を挙げています。
少子化問題は、1989年に出生率が戦後最低の1.58を下回る「1.57ショック」が起き、注目を浴びました。1990年代からは、政府が育休制度の整備や保育所拡充を行ったとされていますが、出生率低下への改善は、さほど見られませんでした。
その後、法律や制度の整備が進められていくなかで、ワークライフバランスにもスポットが当てられるようになったといいます。
以上のような政府の動きに対して、企業も次第にワークライフバランスに関心を寄せるようになります。なぜならば、ワークライフバランスは、企業の業績が悪化するなかで、より高い生産性と競争力を得られるカギになり得えたからです。
生産性と競争力について補足しましょう。ワークライフバランスでは、以下の4点に期待が寄せられています。
①子育てする社員などの退職を防げる
②優秀な人材確保が有利になる
③いま働く人材のポテンシャルを引き出せる
④職場全体のモチーベーションがアップする
すなわちワークライフバランスは、少子化に歯止めをかけたい政府、生産性や競争力を高めたい企業、そして、仕事と生活の両立を望む多くの働き手にとって意義あるものだったのです。このような理由から、今では官民の両方によってワークライフバランスの推進が行われています。
本書では、上述したワークライフバランスについての基礎的な情報だけではなく、ワークライフバランスに対する企業の取り組みについても紹介されています。
なお「はじめに」によれば、本書は、人事部やワークライフバランス改革の推進担当者向けの実務入門書ということですが、個人的には、企業の情報を集めたい就活生にも、おすすめできる1冊であるように感じられました。
それでは、実際にワークライフバランスに取り組んだ組織を見ていきましょう。
- 著者
- 小室 淑恵
- 出版日
- 2010-03-19
ワークライフバランスへの取り組み例
保育事業などに取り組む認定NPO法人フローレンスでは、スタッフの平均残業時間が1日なんと約15分(2016年時点)。
具体的には、長時間労働削減のために、事業部内で個人の残業時間を公開したり、残業ゼロ月間を限定的に取り入れて業務の優先度を改めて認識(「業務の断捨離」)したりするなどの取り組みを行っています。
また2009年には、ワークライフバランスに関する優れた取り組みを行う中小企業に送られる「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に認定されました。
しかしフローレンスの代表である駒崎は、かつてはかなり多忙な日々を送っていたといいます。
それでは、駒崎や組織が「働き方」を「革命」したきっかけは、何だったのでしょうか。
働きすぎな人生を変えたい人は、必読!
駒崎の働き方を変えるきっかけは、アメリカでのリーダーシップ研修だったといいます。
『働き方革命: あなたが今日から日本を変える方法』では、著者であり、認定NPO法人フローレンスの代表である駒崎自身の働き方、そして、組織の働き方がどのように変わっていったか、ということが読み取れます。
駒崎は、アメリカでのリーダシップ研修後、自らのライフビジョンを設定したうえで、定時退社するなど、働き方を180度変え、組織内の働き方改革にも取り組み始めました。
たとえば、単独で集中して文書や企画をつくる作業などには在宅勤務、マニュアルを作成するときには一時的に外出先(カフェ)で作業できる「パーソナルひきこもりタイム」を導入したといいます。
そんな本書の魅力は、働き方を改革していく際の試行錯誤が見える点でしょう。問題にぶつかりながらもその都度工夫し、駒崎自身の仕事や組織がスマート化されていくという、人間らしいプロセスが見て取れます。
また文章もブログのようにカジュアルで面白く、読みやすい点もおすすめポイントです。とはいえ、「こんな風に働き方を革命したい」という理想・ビジョンが、実際の働き方にきちんと反映されており、説得力は抜群といえるでしょう。
「働きすぎの人生はもう嫌だ!」と考えているすべての人に手に取ってもらいたい1冊です。自らのライフビジョンを、夢や理想で終わらせない道筋が見えてくるかもしれません。
このように、いいことばかりのように見えるワークライフバランスですが、問題点はあるのでしょうか。
- 著者
- 駒崎 弘樹
- 出版日