在日として生きた戦争前後の親子の物語
姜尚中が母との思い出をつづった、自伝的小説。自伝書ではなく、あくまで小説ですので、より母の心情に迫れるように、姜尚中のこれまでに刊行されている作品よりやわらかい文章で話は進んでいきます。
- 著者
- 姜 尚中
- 出版日
- 2013-03-19
文字の書けない母から息子への遺言。社会全体が貧しかった戦中や戦後時代を「在日」として異郷の地を生き抜いた親子二代の物語です。
韓国から日本に嫁ぎ、敗戦の混乱と長男の死を乗り越え、貧しい中で家族と仲間を支え、商売を始め、子どもを育てることは、とても大変だと察します。苦難を乗り越え生きぬいた母(オモニ)に対する思いが感じ取れる本です。
本を発売した際の著者インタビューで、姜尚中はこう語っています。「僕が書きたかったのはある意味で「和解劇」です。母の物語を書くことによって、自分自身と和解していく。それは同時に、日本と朝鮮半島との和解の物語でもあるのです。」
この本を通じ、日本と朝鮮半島和解についても考えていくことができるでしょう。
東京の魅力を改めて知る
2年半に及ぶ雑誌「バイラ」の連載作品をまとめた一作。姜尚中が東京のさまざまな場所を訪れ、さまざまな発見や思想をつづっていく本です。
- 著者
- 姜尚中
- 出版日
- 2011-06-03
本書は珍しく、政治的見解や思想が入らず、写真で東京のスポットを6ページほどで紹介したり、その土地にまつわる思い出話などをつづったりしています。
「秋葉原ー 流砂化は止められるか?」といった固い話もあれば、「猫カフェ(世田谷区北沢)ー猫カフェブームに見る脱欲望化」といったほっこりする話もあり、一作が短いので、読み辛い話の時は、すぐ別の話を読むこともできます。東京だけ取り上げているので話題になった場所に訪れやすいということも本書の魅力の一つです。
東京は、何かのチャンスに溢れ、未知のエキサイティングな事件や人に出くわすかもしれないと10代の姜尚中が思っていた場所です。その頃のトーキョーストレンジャーの気持ちで、東京を彷徨ってみています。東京がさまざまな魅力を内包していることを教えてくれる本です。
仕事とは何か、生き方を豊かにするためのヒント
改めて仕事とは何かを考え、仕事の課題に向き合う上で役立つ手掛かりに触れています。仕事で悩んでいる人やどう関わるべきか行き詰っている人、これから就職する方へおすすめの本です。
- 著者
- 姜 尚中
- 出版日
- 2016-11-08
雇用不安や経済の低成長などの不確実な時代だからこそ、社会人は小手先のノウハウではなく、古典や歴史などの「人文知」に学ぶ必要があると姜尚中は主張しています。
2008年にアメリカで起きたリーマンショックから日本経済も大きな打撃を被り、倒産や廃業件数が増え、大きな働き口が失われました。経済のグローバル化により海外のほかの国で起きた経済危機が日本を襲う一方、東日本大震災や津波、熊本地震などの自然環境で以前にもまして先の見通しが立たない状況になっています。
非常事態が常態化してきている時代だからこそ、仕事についても従来型のマニュアルで考えることはできなくなってきているのです。
人文知から入り、人はなぜ働くのか、ドラッカーや石橋湛山を手掛かりに時代の潮流をつかみ、困難に打ち勝つこれからの働き方を示していきます。単なる自己啓発書ではなく、逆境だらけの半生だからこそ書けるような自叙伝も記載されており、自己啓発本が苦手な方も読みやすいでしょう。
本書には、逆境に心折れそうなときに詠む本の紹介や資本主義の精神を読むためのおすすめの小説も取り上げられており、読書好きの方へもおすすめの本となっています。