なぜ、高学歴ワーキングプアになるのか
高学歴である大学院博士課程修了者たちは、なぜワーキングプアに陥るのでしょうか。『高学歴ワーキングプア』では、その背景として1991年に文部省によって打ち出された大学院重点化政策があるとします。
大学院の拡充などが目指されたその政策は、大学にとっては、若者の人口が減少していく中で、大学院生からも授業料収入を得られるという利点がありました。
さらに文部省が重点化政策に合致していると考えた大学の予算は、25%アップします。かくして、大学院重点化政策は、文部省と大学の両方によって推し進められ、増産された大学院生たちは行き場を失ったのです。
本書を読むと、高学歴ワーキングプアの現状は「必然的」につくられたものであると感じることでしょう。大学院へ進学した人の責任なのではないのかーーそのような見方を、180度変えてしまうであろう1冊です。
- 著者
- 水月 昭道
- 出版日
- 2007-10-16
公務員は、不安定?
公務員は、安定しているーー漠然と共有されているこの常識は、もはや幻想かもしれません。
2012年の自治労調査によれば、非正規雇用の公務員は3人に1人。全国の自治体で進むこの非正規雇用化によって「官製ワーキングプア」が生まれているのです。
しかしなぜ、非正規労働は増えたのでしょうか。『なくそう!官製ワーキングプア』ではその背景として、財政が危機的な自治体による「人件費の削減」を挙げます。そしてその背後にあったものが、新自由主義や小さな政府論が掲げた民営化と規制緩和というイデオロギーだったのです。
ワーキングプアというと、公務員は無関係であるかのような印象を受ける人も多いかもしれません。しかし雇用は不安定化しており、やがてはそれが、市民一人ひとりのための公務公共サービスの劣化へと繋がっていくことが予想されているのです。
公務員が直面している過酷な「リアル」を知るきっかけとして、読んでみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 出版日
- 2010-05-06
4つのワーキングプア対策
それでは、ここまで見てきたワーキングプアを解消するためには、どのような対策が考えられるのでしょうか。以下に4点、整理してみます。
①非正規雇用者の削減
②同一労働同一賃金(雇用形態に関わらず、同じ内容の仕事には同じ賃金)の実現
※2017年3月に政府がまとめた「働き方改革の実行計画」では、同一労働同一賃金の導入などが盛り込まれました。
③最低賃金の時給1500円以上への引き上げ
④ベーシックインカム(=全ての個人に必要最低限の生活費が給付される)の導入
①の非正規雇用削減については、繰り返し主張されてきたことでしょう。②の同一労働同一賃金や③の最低賃金引き上げについても、徐々にではありますが変化が見られます。
それでは、あまり聞きなれないかもしれない④の「ベーシックインカム」とは、そもそも何なのでしょうか。より詳しく見ていきましょう。
まず、「ベーシックインカム」という社会政策のもとでは、個人が働いていても求職中であっても、政府によって必要最低限の所得が無条件に与えられます。この政策が導入されれば、誰も働かなくなるのではないかという反論も当然あります。
しかし2011年には、「カナダの州で1970年代に行われたベーシックインカムの実験は、貧困を減らすために有効であった」との報告が、経済学者によってなされました(ハフィントンポストを参考)。なおその報告によれば、ワーキングプア層にも経済的な安定が生み出されたといいます。
また2017年からは、フィンランドがベーシックインカムの試験的な導入を開始。国家レベルではヨーロッパ初の試みで、ベーシックインカムと失業率の関係性を調査していくといいます(ニューズウィークを参考)。