全ての作品に共通するのは、三谷幸喜の人間に対する温かい眼差し
様々な芸術作品で、安定した活躍を見せ続ける三谷幸喜。長年に及ぶ活動の中でも、その才能は止まるところを知りません。脚本家、劇作家、演出家、俳優、映画監督、そして作家と、どの方面でもその活動は常に注目の的に。
三谷幸喜は1961年(昭和36年)東京都世田谷区の生まれ。日本大学藝術学部演劇学科に在学中の1983年、「東京サンシャインボーイズ」という劇団を立ち上げます(1994年以降「充電期間」に入り、2009年単発的に再結成したが現在も活動休止中)。劇団と並行して放送作家、ドラマの脚本家としても活動を開始。活動の幅を着々と広げていきます。
作家としての活動は初めての小説『経費ではおちない戦争』を出版した1991年に遡り、その後は小説、対談集、エッセイ、シナリオ・戯曲から作詞に至るまで、ジャンルを問わず活躍中。作家活動で最もよく知られているのは、2017年現在も朝日新聞で連載継続中の『三谷幸喜のありふれた生活』。内容は主に著者の身の回りで起きる事柄についてで、著者本人曰く「エッセイというより、日記のようなもの」だそう。
今回はそんな作家・三谷幸喜の『ありふれた生活』だけではない、他の優れた著書5選をご紹介。活字の三谷ワールドが堪能できるよう、幅広く様々なジャンルのものを厳選しました。
手がける作品のほとんどが、心温まる人間群像劇を中心とした「喜劇」を基本としている著者。作家活動でもその基本は失われず、それに「思わずクスッと笑ってしまう」要素が加わって、他にはない独特の魅力を醸し出しています。5冊のうちどれから読んでも楽しめ、読後は「読んでよかった!」という爽快感が残るはず。
三谷幸喜の第一エッセイ集!面白すぎて読む手が止まらない
どんなに気持ちが落ち込んでいても、この本を読めば元気になれる!三谷幸喜の初エッセイ集はそんな魅力を持ったとっておきの一冊。一旦読み始めたら最後、ページをめくる手が止まらなくて困ってしまうかも。毎日はこんなに面白いことで溢れていたのだと、自分の人生に対する新しい発見にもつながるかもしれません。
- 著者
- 三谷 幸喜
- 出版日
このエッセイを構成しているのは三谷幸喜が毎日の中で出会う、面白おかしいエピソードたち。
たとえば「悪党」では、家から耳にペンをはさんだまま出かけてしまったときのエピソードが語られています。耳にペンをはさんだまま出かけること自体がまず面白いのですが、さすが三谷幸喜、それだけでは収まりません。たどりついた文房具店でそれに気づき、万引き犯と間違われてしまうのを恐れ、なんとそのペンをそっと売り場に置いてくるのです。著者の頭の中では自分の行動でさえも、脚本を書いているような流れで理解されているのかもしれません。
「長嶋」では、モノマネにまつわるエピソードが面白おかしく記されています。似てると言われながらモノマネをしたのにもかかわらず、なぜか見ていた皆に罵声を浴びせられ、最後には「本人が思っているほど似ていない」と言われてしまうオチ。「人にきついことを言われると涙目になってしまう」と自称している三谷幸喜の様子が目に浮かぶようで、親近感が湧いてきます。
また、著者が14キロの減量に成功した時の話も意表をついていて面白さ満点。ダイエット中定期的に証明写真を撮っておき、ついに減量に成功した時その写真をまとめ、パラパラ漫画のように自分が痩せていく過程を見て楽しんだというのです。
日常のどんな些細な出来事でも、三谷幸喜の人柄にかかれば全てが面白おかしく見えてくる。三谷流の価値観を通して見た世界をこの本で体験することで、自分の価値観を見直す楽しい機会となるかもしれません。
連続ドラマ「合言葉は勇気」のシナリオ集!ドラマファンでなくても楽しめる
本書は2000年7月〜9月までCX系で放映された連続ドラマ『合言葉は勇気』のシナリオ集。元はコメディー作家の 三谷幸喜。文章が活き活きとしており、テレビドラマを観ていなくても想像力が掻き立てられ、どんな人でも楽しめる一冊となっています。
- 著者
- 三谷 幸喜
- 出版日
- 2002-12-25
連続ドラマ『合言葉は勇気』は当時あまり視聴率が高くなかったようですが、このシナリオ集を読めばそれが不思議に思えてくるはず。
このドラマは、ゴミ処理会社の産業廃棄によって環境破壊の危機に陥った村が舞台。その危機をなんとか救おうと奮闘する青年と、青年が見つけた売れない役者が弁護士に扮し、村を守るため戦っていく……という話です。本書のまえがきで著者は、
「1・ニセモノが本物以上に活躍する話。2・自分とは関係ない人たちの為に命を賭ける話。3・仲間を集めていく話。4・知恵くらべ…舞台はできれば法廷が望ましい。」(『合言葉は勇気』より引用)
という4つの要素を本作に盛り込みたかったと述べています。ドキドキ、ハラハラさせるけれども最後には感動できるような、そんな作品作りを目指したそう。
裁判とコメディという難しい設定の組み合わせですが、肩肘張って読む必要は全くありません。著者の好きな要素をふんだんに盛り込んで作られており、著者が楽しんでこのシナリオを書いたことがひしひしと伝わってくるように感じられます。読了後または読んでいる途中でも合わせてドラマが観たくなる、好奇心を掻き立てる作品になっています。