まずは経営コンサルタントを含む業界の構造を知ろう
さてここからは、いくつかの本を題材に、より具体的な仕事内容、働き方、スキルなどへ迫っていきます。
まず、コンサルタントの仕事とは何かという基本について学ぶなら、本書がおすすめです。先ほどもふれたとおり、コンサルタントには「戦略」「IT」「組織人事」「経理」など、さまざまな種類があります。営業のことを(セールス))コンサルタントと呼んでいる人もいるくらいです。
それらの定義や仕事内容の違いを把握することで、相対的に「経営コンサルタントとはどんな仕事か」が浮き彫りになってくるでしょう。
- 著者
- 神川 貴実彦
- 出版日
- 2008-05-10
本書では、はじめにコンサルタントに関する基礎知識が網羅的に書かれ、その後各種コンサルタントの仕事内容をそれぞれ切り分けて解説されているため、自分の知りたい分野だけを拾い読みすることも可能です。6名のコンサルタントによる著作であり、編著者の神川貴実彦氏はボストンコンサルティンググループ出身の起業家です。
この本はタイトルに「基本」と書いてあるとおり、各コンサルティングファームの特徴やコンサルティング業界の変遷までを載せた、業界の入門書的な1冊となっています。「仕事内容」ならともかく、各ファームの情報まで載せている本はなかなかありません。基本事項を徹底的に学べるため、これから経営コンサルタントを目指す人には最適です。
対象読者は明確に「コンサルティング業界に転職・就職を希望している人」とされており、就職転職対策の章もあります。仕事内容や会社、年収などに軽くでも興味がある、という人は、まずはこの本を読んでみることをおすすめします。
戦略的思考をどのように身につけ、活用するのか
日本を代表する経営コンサルタントといえば、大前研一氏です。その大前氏が、現役時代に自らのノウハウを整理して記した本がこの『企業参謀』。
現在もビジネスの最前線で活躍を続ける大前氏ですが、コンサルタントに必要な「戦略的思考」とは何か、どのように活用するのか、の基本は本書の時代に既に築き上げています。逆に言えば、本書に描かれた基本があるからこそ、大前氏は現在もビジネスの最前線で活躍できているのでしょう。
とにもかくにも、経営コンサルタントを目指すのであれば、読んだことがないとは恥ずかしくて言えないほどの代表的な一冊です。
- 著者
- 大前 研一
- 出版日
- 1999-10-29
『企業参謀』の初版は1975年。紹介した新装版は、『企業参謀』と1977年刊の続編『続企業参謀』の合本です。40年以上前の著書ながら、内容は色あせず、私たちにさまざまな示唆を与えてくれます。
経営コンサルタントがよく用いる「フレームワーク」も紹介されていますが、本書ではむしろ、「戦略的思考」に基づいてそれらをどう活用するのか、という実践的なイメージの湧く1冊になっています。大前氏が30代前半で本書を執筆したという事実を知ると、その凄味がより増してくるでしょう。
本書のテーマである「戦略的思考」とは、物事の本質を見抜くための考え方。言葉を借りると「混然一体となったものを解きほぐして分析すること」とされています。一例として、世の中にあふれる「価格」はパッケージ化されているので、料金のうちどの部分がいくらにあたるのかが曖昧なことはよくある(裏を返せば、曖昧にしないで分析することで示唆が得られる)、という指摘には「なるほど確かに」と頷かされます。
「戦略的思考」とは、経営コンサルタントにとって基本的な、そして必須のスキルです。しかしそれ以外のビジネスパーソンにとっても有用であり、身につけることで他の人々と差をつけることができるスキルでしょう。その意味では、多くのビジネスパーソン必読の書です。
問題解決の肝は問題設定にあり
- 著者
- 安宅和人
- 出版日
- 2010-11-24
イシュー(issue)という単語は、直訳すれば「問題、論点」といった意味ですが、本書におけるイシューは、「今、考えるべき問題」とされています。はじめから問題ありきで「この問題をどうするか」と考えるのではなく、「それは今解決しなければいけない問題か」と検討することがイシュー設定のポイントであり、経営コンサルタントには必須の力なのです。
イシューを正確に見極めたうえで解決に導くためのステップとして、本書では次の4つのステップが挙げられています。
1.イシュードリブン:情報を集めてイシューを見極める
2.仮説ドリブン:イシューを分解し、ストーリー立てて絵コンテをつくる
3.アウトプットドリブン:分解したイシューを分析する
4.メッセージドリブン:本質的でシンプルにまとめ「伝える形」にする
また、各ステップを具体的にどのように行えばよいかも掘り下げて記しています。例えば、経営コンサルタントがよく使う「思考の道具」として「フレームワーク」がありますが、その使い方についても述べています。
「イシューの見極め」の段階でも、「イシューの分解」の段階でも、フレームワークは非常に役に立つものです。しかし本書では、イシューを無理やりフレームにはめ込んで本質を見失うことは危険である、と警鐘を鳴らしています。問題設定はいかに大切かが感じられる主張です。
毎日長時間働いているような、目の前の問題を疑うことなく必死に仕事をしている方にこそ、ぜひお読みいただきたい一冊です。解くべきではない問題と、ほんとうに解くべき問題を整理することで、自分の負担を軽減しながらも成果を上げることができるのです。「生産的な働き方」の参考にしていただければと思います。