林真理子が世に出るきっかけとなった一作
林真理子が1980年代に刊行した『ルンルンを買っておうちに帰ろう』。彼女がまだコピーライターとして活動していた頃に出版された最初のエッセイで、彼女が作家としてデビューした作品として有名です。
この本の内容は、一言で言えば、自分も含めた女性の「内面」の暴露。この記事で紹介する5作の中でも、林真理子の人物像が全面的に強く醸し出されているのが特徴となっています。
- 著者
- 林 真理子
- 出版日
「友人のことはなるべく悪くいいたくないのだが、わたしの女友だちというのはかなり性格が良くないのが多い。おまけに嫉妬深いので、群を抜いてお金持ちの私は、いろいろと苦労が絶えないのだ。」(『ルンルンを買っておうちに帰ろう』から引用)
例として挙げたこの一文のように、読んでいてどこか気まずくなるほど、辛口評論家並みに遠慮というものがありません。しかし、同時に自分のありのままに、個人的に思ったことを話す。たとえ良いことでも悪いことでも、そして嫌なことでも、一切飾ることなくそれをここまで書き立てるほど、林真理子がかなりの気概の持ち主であることが感じられます。
普通ならば他人には見せず、日記のように自分の中にまとめるだけに留まる、ドロドロとした感情と、自分と自分の周りの人間への見方。それらをこの『ルンルンを買っておうちに帰ろう』という一冊の形にまとめあげた、林真理子という作家の人物像が気になる方は、是非読んでみるのもいいでしょう。
林真理子が見てきた日本での365日間
『不機嫌な果実』原作の連載の後に刊行された、林真理子の『踊って歌って大合戦』。
お洒落に目覚めて、美人編集者に勧められた流行のサンダル。履いてみようとしたら、足に合わなくて痛いばかり。美人を目指してダイエットを始めても、美味しい料理やスイーツに目がいき、ついつい手が伸びてしまってなかなか進まない。そんな人生において誰もが経験するような日常の中の出来事が、ユーモラスな文章で面白おかしく描かれています。
- 著者
- 林 真理子
- 出版日
他にも、たまごっちやプリクラ、キムタクや松田聖子、はてはダイアナ元妃の訃報など……。政治から流行まで、林真理子が365日、即ち1年の間に見てきた日本での出来事。それらを見た感想が面白い、楽しいは勿論、つまらない、無意味だと思ったことだとしても、この本書にこれでもかとばかりに詰め込まれています。
誰もが生きて過ごしていくことになる、365日という長い時間。この時間の中でその見たものや出来事の全てをありのままにまとめ、その上で人に読ませる文章に仕立て、一冊の本という形にまとめあげた才能。皆さんも是非、林真理子と共に日本における365日間をのぞきに行ってはみませんか?
成功と失敗、両方をネタにした減量奮闘記
これまでに紹介してきた4作と同じく、林真理子が自身の体験を元にして生み出した『美女の七光り』。
この作品の中での、当時の林真理子はいろいろなダイエットを試していましたが、どれをやってもうまくいかず、頭を抱える日々を送っていました。そんな中、最後に活路として見出したのが、専門クリニックでした。そこで徹底的な食事指導とサプリメントの服用による診療を受けることになり、しかもその効果はてきめん。診療を受けるごとに体重は面白いように減っていき、さらに美容面も改善されていき、真理子は天にも昇る心地でいました。
- 著者
- 林 真理子
- 出版日
- 2015-02-26
しかし、その天にも昇る心地は長続きせず、ある一件を境にまたリバウンドしてしまう真理子。そんな専門クリニックの診療による減量の大成功による自慢と、リバウンドで元の体重に戻ってしまうことへの自虐。このように、自分の中だけに留めておきたい失敗談ですら、林真理子は何の躊躇いもなしに、先述の成功談と同じく堂々と書き立てているのです。
そのダイエットの成功談と失敗談、どちらの描写も面白おかしい文体となっているため、読めば一度は笑いと興味を誘われ、ページがスラスラ進むことは間違いないでしょう。そんな自分が苦杯を味わった経験ですら、ネタとして堂々と扱う林真理子の才能が、この『美女の七光り』からも、ありありと感じさせてくれます。