ジェンダー論入門書
フェミニズムをはじめて学ぶ方には、『女性学/男性学 (ヒューマニティーズ)』がおすすめです。著者である千田有紀氏は、日本における「家」という封建制度を専攻研究したのち、現在は武蔵大学教授として教鞭をとっている社会学者です。フェミニストの大家である上野千鶴子の弟子でもあります。
本作出版の発端は、普段は難しい論文を書いている著者に対して編集者が「高校生でも読めるように」書いてほしいと依頼したことが始まり。ですから彼らに向けて書くために、文章は話し言葉に近い「です、ます」調で、構造はシンプルに、あまり話を飛躍させたり深く追求しすぎたりしないよう配慮したといいます。
- 著者
- 千田 有紀
- 出版日
- 2009-11-27
著者ははじめに、女性史を問う前にそもそも「女性」は存在するのかという問いを投げかけています。人は皆、男や女である前に1人の個です。しかし社会においては、自明のものとして考えられてきた女と男というカテゴリに振り分けられてしまっているもの。ここに疑問を持つことから本書は始まっています。
社会学的に見て「性別」はどのような歴史をたどり形成されてきたのか、女性学においてどのような考え方がされてきているいのか、これからの女性学、男性学はどういった方向に進むのか。男性学についてはそれほど多くは触れていませんが、女性学の概説としては十分充実した内容になっています。フェミニズムの入門書としても、最適な1冊といえるでしょう。
女性の身体的問題に焦点を当てた
国内外のフェミニズムについて、女性の身体、健康問題に焦点を当てて書かれた『女のからだ : フェミニズム以後』。著者である荻野 美穂は、女性史やジェンダー研究を専門とする歴史学者です。本書では1970年代に全米で始まり日本のウーマン・リブ運動に大きく影響を与えた「女の健康運動」について、詳しく解説しています。
- 著者
- 荻野 美穂
- 出版日
- 2014-03-21
妊娠、出産というイベントは女性の人生において多くの制約を生じさせるものであるにもかかわらず、長年において産む産まないの選択を個人ではなく社会的な圧力によって定められてきました。中絶や避妊を否定的にみる風潮、ホルモン剤によって妊娠をコントロールされ健康を害した女性たち。しかも女性の身体を扱う医者のほとんどは男性で、子宮や卵巣を子供をつくる部品としかみていないと著者は言います。
女性は自らの子宮や卵巣、月経、妊娠、性に関する問題となると、周囲にも隠し通す傾向があります。今もその風潮は色濃く残っていますが、フェミニズム運動が起こる以前はもっと顕著でした。女性たち自身のからだの問題であるにもかかわらず、それが論じられる時、個々の人格は無視され続けてきたのです。
フェミニズム以後、女性たちはこれまで社会に支配された自分たちのからだを取り戻そうと立ち上がりました。本書はそのきっかけになった時代背景や事件などについても触れながらまとめられています。身体的な問題は、ジェンダー論において避けて通れません。女性学について学ぶなら必読の一冊です。
多くのフェミニストたちの原点
鍼灸師でもある著者田中美津氏は、1970年代日本のウーマン・リブ運動における中心的な指導者として有名です。日本のフェミニズム運動の種を蒔いた伝説的人物であり、『いのちの女たちへ―とり乱しウーマン・リブ論』は約40年前に著者が初めて書いた本として知られています。学術書ではなく著者が運動をおこすに至った経緯が記された自伝的書物ともいえるでしょう
女が「母」か「便所=性欲処理機」の二通りのイメージしか持たれていなかった時代。8歳で性的被害にあい、中学生のときに母が不感症であることを知る彼女。しかし本書はそういった過去にとらわれる女性の物語ではありません。もっと強く自分の生き方を模索した強い女性の生の声が綴られているのです。
- 著者
- 田中 美津
- 出版日
ウーマン・リブ運動は、世間からたくさんの嘲笑と非難を浴びてきました。男性を敵と見ているとみなされたり、もてないブスのひがみによるものだと言われたり。しかし彼女らはただ、「自分」として生きたかっただけなのではないでしょうか。社会が持つ女性のイメージ、男性が持つ女性のイメージによるカテゴリから自由になりたかったという思いが本書から感じられます。そうでなければ、平穏に快適に生きていくことなどできなかった時代だったようです。
元々研究者ではない人物による著作なので、構造的な文章ではなく、かといってエッセイのように気軽さもありません。本のタイトルにもあるように、とり乱しながらも「いのち」を論じています。それは闘いつづけた女の心の叫びであり、今もなお多くのフェミニストたちの原点となっているのです。