皆さんにとって顧客は誰ですか?また、顧客のことをどれだけ知っていますか?ドキッとされた方もいらっしゃるかもしれないですね。成熟社会に突入し、価値観の多様化が進んでいると言われて久しい昨今。同じ個人でも置かれる状況によって行動や価値観などは変わってくるものです。顧客に対する理解がますます難しくなってきていると言えるのかもしれません。だからこそ、楽しくもあり、チャンスもあるのですが。今回は、顧客をより理解するために不可欠な技術や考え方などをまとめた本(定性調査を中心に取り上げたもの)をご紹介します。
まずは現在のトレンドも含め、定性的に顧客を理解する方法の全体像を把握する。
- 著者
- 梅津 順江
- 出版日
- 2015-05-30
人について理解を深めるために用いる手法を「定性調査」を中心に網羅しておさえることができるものが本著。手法や技術的な話に加え、基本的な考え方についても一通り学ぶことができるものです。
著者も述べていますが、「人の気持ちや真実が知りたい」というのは、人類の永遠の課題と言ってもいいかもしれません。「十人十色」という言葉がありますが、今では価値観の多様化や生活者個人の中でも多様化が進み「一人十色」とも言われるようになりました。皆様もその時々の状況に応じて、「働く自分」「友人と遊んでいる自分」「家族と過ごしている自分」など自分の役割を担っているのではないでしょうか。そして、そのときの役割に応じて感じていること、大切にしていること、とる行動が変わるということがあると思います。人の活動範囲が広がっていく中、そのように一人が担う役割も多様化していきやすい状況にあると言うことができるのではないでしょうか。それが、人に対する理解をますます複雑にしていると言えそうです。
また、「氷山モデル」や「ジョハリの窓」などの理論でも共通して指摘していますが、人の意識や気持ちには階層や領域が存在しており、それを掘り下げてつかみにいかないと人の行動や態度の核心に迫ることは困難です。そのために、これまで様々な手法や考え方、ノウハウが培われてきました。
著者も指摘しているのが、「みる・きく・感じることの重要性」です。インタビューや行動観察など、手法は様々ですが、直接人に会って話を聞き行動を見たりすることで得られる気付きは多くあります。もちろん、その気付きを得るためには実施する側の瞬時に「必要な情報(原石)を見分ける力」と「感じる力」が求められます。それによって、得られる成果も雲泥の差が出てくるものです。
市場や生活者の変化をどのように「みて(見る、視る、観る)」、どのように「きいて(聞く、聴く、訊く)」、そこからどのように「感じて」何に気づけるのか。そして、そこからどう「カタチにしていく(役立てる)」のか。勘所をつかむためにも、その積み重ねを大切にしていく必要があります。そのためのヒントを、本著を通して得ることもできるのではないでしょうか。
「定量調査」も重要な手法ですが、その解釈を行い意味あるアクションにつなげていくためにも、「定性調査」を通してこのような勘所をおさえておくことが役に立つはずではないでしょうか。
人から話を聴くとき、本当に相手の話を「聴けて」いますか?
- 著者
- 船川 淳志
- 出版日
- 2006-12-01
インタビューのために特化した本ではありませんが、そのために必要な基礎力の一端がまとめられていると思えるのが本著。ノウハウに関わる書籍は多くありますが、それを使いこなすための基礎力があってノウハウも初めて活きてくるものなのではないでしょうか。
著者によると、ロジカルリスニングとは「相手の話を聞きながら、相手の頭の組み立て方とその意図を理解する」スキルのことです。そのためには、人とコミュニケーションをとるために必要な「対人力」と物事を筋道立てて考える「思考力」のどちらも不可欠。自分の頭の中で「ものごと」を組み立て、それを相手にわかりやすく伝え、話を聞きながら相手の頭の中で組み立てられたことを理解し、複数の相手とお互いの考えを共有しながら新たな考え等を共創していくことができる力とも言えます。
スキル教育の分野では保有能力と表出能力という視点で能力を分類する方法があります。著者が挙げている例を紹介すると、100mを11秒で走れるというのは保有能力であり、野球選手であれば走塁が早くできる、盗塁が確実にできるというのが発揮能力になります。保有能力を高めれば、試合の際に発揮能力をより高いレベルで実現できるでしょう。
では、ロジカルリスニングを発揮能力として見た場合、その保有能力は何なのでしょうか?著者はそれを、知性、感性、理性の3つに分けています。
知性には、コミュニケーションに関する「知識」と「思考力」が含まれます。そして、感性には人に対する「感受性」、それを高めるために不可欠な「オープンマインド(心を開いている状態)」が含まれます。最後の理性には、自分自身の思考のバイアスや感情などを認知する「自己認知力」と、感情などをコントロールする「自己管理力」が含まれます。
知性がいかに優れていてロジカルに質問をすることができたとしても、相手の気持ちや立場などを理解して汲み取れなくては相手の本音を聞くことができないということもあるでしょう。また、自分の色眼鏡に気づかなければ、それに基づいて相手から得られた情報を判断してしまい、結論を歪めてしまうこともあり得ます。
インタビューに限った話ではないですが、これらを意識して鍛錬しているか否かで、成果は大きく変わってきます。具体的なテクニックや方法論に入る前に、「聴く」ということを考え直してみる。気づきが多い1冊です。