破天荒な買い物女王と称された中村うさぎ
中村うさぎは自身の人生を赤裸々に綴ったエッセイで一躍有名になったエッセイストです。その内容から「買い物女王」「整形女王」と称されることもあります。テレビ番組「5時に夢中!」に出演し、美貌とユニークなコメントで日本中に彼女の名前が知れ渡りました。
福岡で生まれた中村うさぎ、本名中村典子は、同志社大学を卒業後、繊維会社に就職するも1年半で退社します。その後は雑誌のライターなどで生計を立て、1991年に角
川スニーカー文庫の『ゴクドーくん漫遊記』でデビューしました。
当初はこども向けのライトノベル作家で、ハンドルネームの中村うさぎもこの時期に「こども向けの小説なのだからこどもが覚えやすい名前で」と担当者に言われて出来たそうです。由来はその担当者編集者の飼っているペットがうさぎということから。「ゴクドーくん」シリーズはヒットとなりましたが、それが散財のはじまりだと後に彼女は述べています。
ライトノベルのヒットから散財をはじめたという彼女。最初はブランドものを買いあさっていたそうです。そのうち散財すること自体に依存するようになってしまいます。ホストクラブに通うようになってからは一層浪費が激しくなり、一時期は光熱費さえ払えないほどでした。その時の編集者にエッセイを書くことを勧められ、出版したエッセイが再びヒットすることに。
作家として成功をおさめた中村うさぎですが、通っていたホストクラブのホストに
振られ、その理由を自分が美しくないからだとし、2002年に顔の12か所を整形、2003年には豊胸手術を施しました。その後は「女の価値を確かめる」として2005年に風俗店で働きはじめます。
数々のヒットを生み出した中村うさぎですが、実はとても繊細でさみしがりな
面があるのかもしれません。特にエッセイを読むと彼女のその片鱗が見えます。
自由奔放にも見える繊細な彼女が歩んできた壮絶な人生。それは私たちの人生について新しい価値観を感じさせるものです。
5位:中村うさぎが語る、宗教とは、救いとは
中村うさぎは東日本震災後の日本の傾向について、朝日新聞デジタルにて苦言を呈したこともあるほど震災後の日本を重要視しています。その問題を宗教的観点から取り上げたのが『聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか』です。
- 著者
- ["佐藤 優", "中村 うさぎ"]
- 出版日
中村うさぎは中学、高校とミッション系の学校に通っていたため、クリスチャンで、洗礼名も持っています。と言っても、とても信心深く教会に通っていたわけではないそうですが。この作品は同じくプロテスタント系キリスト教徒の作家、佐藤優との
対談形式で進んでいきます。
佐藤優は、中村うさぎに対してとても熱心な教徒であったそうです。題名から難しそうに感じますが、聖書や村上春樹、エヴァンゲリヲンなど親しみやすい話題に繋げて震災後の日本の問題を分かりやすく解説しているので、とてもフランクに読めます。
ふたりは互いにキリスト教徒ではありますが、宗派が違うそうです。同じ宗教でも宗派で考え方や価値観が違うのが面白いところですし、仏教にも通じるところがあるので、親近感が湧きます。
また「宗教での救い」をテーマにしていますが、最後まで「宗教での救い」に定
義がつけられていないのも面白さの一つ。あくまで信仰は信仰で、そこに救いを
見いだすのもそれぞれだとしているのです。佐藤優は途中でこう述べています。
「理屈で理解出来ないから信じるのです」(『聖書を語る:宗教は震災後の日本を
救えるか』より引用)
あくまで終着点を作らない対談と、キリスト教視点から見た情勢には読んでいてはっとさせられる気づきがあります。
4位:自分嫌いのプロ、中村うさぎの自分との付き合い方
「こんな私が大嫌い」
多くの人が1度は思ったことがあるであろうタイトルが目を引きますよね。よく「嫌いな自分を好きになろう」や「自分を見つめ直そう」などといった「自分嫌い」への自己啓発本はありますが、これは全く違います。むしろその正反対の内容です。
- 著者
- 中村うさぎ
- 出版日
- 2011-10-04
中村うさぎ自身が「自分が嫌い」だと言っており、作中でも世間での認識を一蹴しています。
「あるがままの自分を受け入れて、自分を好きになりなさいってそんなのウソだろ」(『こんな私が大嫌い』より引用)
自分を好きになれるのならばそもそも嫌いになっていないと。そうですよね。でも嫌いな相手が自分だからこそ離れられない悩みに困ってしまうのです。
「『自分が嫌い』じゃなくなるってことは『自分への執着」から解放されるってことで、要するに『自分のことを好きでも嫌いでもなくなる』ってことなんだ」(『こんな私が大嫌い』より引用)
中村うさぎはこう綴っています。自分を嫌いなままでも良い、無理に好きにならなくても良いというのが彼女の考え方です。「自分が嫌い」という点以外でも「気分の落ち込み」など、日常でによくある悩みに対しても、解決策ではなく「人間だし仕方ない」と割り切っている、「彼女らしさ」が出た1冊です。
3位:愛されたい、だけど見返したい。全ての女性に投げかける『私という病』
中村うさぎが浪費家ということはあまりに有名ですし、そのなかでホストに入れあげたということも最初に記した通りです。作中での彼女は当時47歳。若い頃はセックスを「させてあげる」立場だった彼女も「させてもらってる」立場になってきたということを痛感したと言います。
「ああ、お願い、誰か、私に欲情して」(『私という病』より引用)
文庫本の帯にも使用された、この衝撃的な一文に彼女の思いが詰め込まれています。『私という病』は、ホストにフラれ「女としての価値」を見出そうと、中村うさぎが風俗店で働いた時の体験談です。作家として成功した「勝ち組」の彼女が「恋愛マーケットでは「負け組」で、「愛されたい」としたうえで「見返したい」というジレンマを抱えた内容は生々しく、だからこそ共感を得られます。
女性が社会進出をはじめ、女性も男性と同じ土俵で戦える現代。より良い仕事をして「男性を負かせたい」と思う女性も少なくなくなっているでしょう。その一方で結婚して子供を育てる「女性としてのありふれた幸せ」も欲しい。この矛盾に苦しめられる女性の言葉にできない「思い」を言葉にしているエッセイなのではないでしょうか。