“失われた鉄道を求めて”各地を訪ね歩く、歴史ロマンが香る1冊
本書は7つの廃線跡を訪ね歩く紀行文集です。沖縄では、戦前に県中枢部の交通手段として県民に利用された沖縄県営鉄道の跡を訪ね、島根県では、大正15年に現在の出雲市と広島県三次市を繋いでいた大社宮島鉄道の痕跡を探すなど、著者は往時の鉄道の痕跡を求めて各地を訪ね歩きます。
また国内に限らず、アメリカ合衆国の自治領であるサイパン島で、戦前に日本人がサトウキビを搬出するために敷設した砂糖鉄道の跡を探訪するなど、往時の痕跡を求めて、国内外の廃線跡を追う旅へと出るのです。
- 著者
- 宮脇 俊三
- 出版日
- 2011-05-10
鉄道ファンにとっては、現役で走る列車のみが嗜好の対象とはなりません。往時の鉄道を偲びその線路跡を訪ねることも、人々の好奇心を満たす嗜好のひとつなのです。宮脇俊三は、全国のローカル路線が消えてゆく現状を嘆きながら、いまだ路線が咲き乱れていた昭和30年代以前の鉄道跡を訪ねる旅へと出発します。
『失われた鉄道を求めて』というタイトルが表すように、本書から伺えるのは、ノスタルジックと好奇心、冒険心とが織りまぜになった宮脇の心中が、本文から立ちのぼってくるところにあるでしょうか。通常の列車旅とはひと味違った、歴史ロマンあふれる旅を、ぜひ堪能してください。
幼少期と当時の鉄道の記憶が交錯する出色の昭和体験史!
本書は、自身の幼少期と列車との記憶を絡めながら、昭和8年から昭和23年までの出来事を回想してゆく、体験的昭和史ともいえるエッセイ集。宮脇俊三が作中で「古い時刻表を眺めていると、私の記憶を甦らせてくれることが多い。もうろうとした記憶がはっきりしてきて、忘れていたことさえ思い出してくる」と述べる通り、私たちが教科書でしか知らない当時の記憶が回想されていきます。
- 著者
- 宮脇 俊三
- 出版日
- 2015-04-25
たとえば、第1章の「山手線」では、渋谷駅の改札口前で、主人の帰りを待つハチ公を目撃した際の光景を綴り、第4章の「不定期231列車横浜港行」では、2.26事件が起こった早朝、市電が運休し学校まで徒歩で通った出来事が回想されています。また、国民に敗戦が告げられた玉音放送が流れた当日、地方の列車は通常通りに運航していた、といった貴重な証言も記されています。
宮脇俊三の生い立ちと列車とのかかわりを綴る本書は、現在から過去へと移動するタイムトラベル小説のような趣を醸します。本書は個人史としても昭和史としても楽しめる、出色の一冊なのです。
バスに揺られてひなびた地方をまわる、ローカル路線バスの旅
本書は鉄道が通じない国内の僻地を、宮脇俊三がローカルバスで旅をしたバス紀行集です。
著者は旅の基準として、①乗車時間が一時間以上であること。②行先が有名観光地でないこと。③年間を通じて運行される路線に限ること。④著者にとって未知の路線・終点であること、の4つの項目が挙げています。またこの他に、各地の地名に魅了されたり、地図からその土地に興趣を覚えたりといった、上記に記されていない旅の条件も加味されているようです。
- 著者
- 宮脇 俊三
- 出版日
- 2010-12-04
宮脇俊三といえば、鉄道をこよなく愛した作家として世に知られています。しかしながら、鉄道紀行のみを愛したのではありません。国内のひなびた場所へ、バスでの旅も敢行しているのです。著者はローカルバスに魅かれる理由を、「行くほどに客が降りて、終点に着くときは私ひとりということもあり、ローカル鉄道に似通うものであったが、終点の風情は鉄道よりも一段と鄙びていた。心を惹かれた。」と述べています。
近年は、ローカルバスを乗り継ぐ旅番組が頻繁に放映されることもあり、バス旅がブームとなっていますが、文字を追って各地を訪ねることも、映像では感じられない旅情が感じられるのではないでしょうか。国内各地をめぐるバス旅を、本書で味わってください。