実存主義で知られる哲学者のニーチェ。名前は聞いたことがある方が多いでしょう。この記事では、ニヒリズムなど彼の思想や名言を解説したうえで、代表作とおすすめの関連本を紹介していきます。

1844年生まれ、当時のプロイセン王国出身のニーチェ。父親は裕福なルター派の牧師でした。幼少期から真面目な性格をしていたそうです。
大学で哲学を学び、古典文献学に傾倒。母親の意向もあって神学部にも籍を置いていましたが、初年度で信仰を放棄し、本格的に古典文献学者としての道を追求していきます。
ニーチェの思想として有名なのは「実存主義」というもの。本質や理念よりも、現在の現実を優位に置く考え方です。ソクラテスやアリストテレスなどの従来の学問体系を批判するもので、自然な思考様式から逸脱する思想でした。
またニーチェの言葉で「神は死んだ」というものがあります。当時のヨーロッパでは、虚無的で斜に構えたニヒリズムの精神状態が広がっていて、ヨーロッパの文化形成を主導していた価値観が失われたことを表しています。最高価値だった神という存在が揺らいだことを意味し、そこからの解放を望んで「神は死んだ」と言ったのです。
1883年から1885年にかけてニーチェが発表した『ツァラトゥストラはかく語りき』では、「超人」の思想が展開されています。「超人」は、恨みや妬みの感情をもたず、嫌な出来事はすぐに忘れ、従来の価値観にとらわれることなく常に創造力がある人間のこと。ニーチェの慣習にとらわれない開放的な考えが読み取れるでしょう。
「目的を忘れることは、愚かな人間にもっともありがちなことだ」
物事に熱中するあまり、目的を見失うことはよくあること。しかし目的を失ったままでは、最終的に自分の思い描いた理想の場所に辿り着くことはできません。何のためにやるのか、目的を明確にすることで、結果を出すことができるのです。
「樹木にとって最も大切なものは何かと問うたら、それは果実だと誰もが答えるだろう。しかし実際には種なのだ」
人間にとって樹木を育てる目的は果実を得るためだと考えるのが普通ですが、樹木が芽を出すにはまず種を植えることが必要不可欠。果実という結果は、種を植える行動がなければ得られません。つい目先のことばかりを考えて身動きがとれなくなりがちですが、まずは行動することが大切だと言っています。
「人が意見に反対するときはだいたいその伝え方が気に食わないときである」
誰かに反対されたり誰かを反対したりする時、意見そのものに反対しているのか、相手の態度を批判しているのか見極める必要があります。意見に反対している場合は考え方の違いをすりあわせることが大切でしょう。また人間は、どれだけ正しいことを言われたとしても、伝え方が悪ければ受け入れられないもの。誰かに意見を伝えたいのであれば、伝え方に気を配る必要があるのです。
「忘却はよりよき前進を生む」
人生では、時に忘れることで前に進めることもあります。経験の積み重ねも大切ですが、悲しみや憎しみなどのネガティブな感情を引きずらないことも重要なのです。
ヨーロッパ思想への批判的態度やニヒリズムなど、革新的な思想を展開したニーチェ。20世紀の哲学界に大きな影響を与えました。
本書では、そんな彼が残した言葉のなかでも、特に現代人に通じるものを抽出し、紹介しています。
- 著者
- 出版日
- 2010-01-12
「超訳」というタイトルのとおり、昔ながらの文章や文化を現代風の言葉で解説しているのが特徴。哲学に関する事前知識がなくても大丈夫です。
「他人はそれほど非難すべき存在ではないし、自分はそれほど甘く許容すべき存在ではない」「切れ者でありながら鈍くさくあれ」など、自身の内面を振り返り、気づきをもたらせてくれる名言がたくさん。日々の生活で悩みに直面した時に、助けになってくれるでしょう。
ニーチェの力強い意志を感じる、明るい言葉に元気をもらえる一冊です。
幼い頃から片頭痛や胃痛など、さまざまな健康上の問題を抱えていたニーチェ。大学教授として働くも、仕事に支障をきたすほど悪化したため、退職しています。彼が本格的に執筆活動を始めたのは、その後のことでした。
本書では、ニーチェの著作には「健康と病気」をめぐる洞察があるとして、その思想を深堀りしていきます。
- 著者
- 真木, 清水
- 出版日
ニーチェの思想の中心には「健康と病気」があるとして、どんな人が健康でどんな人が病人となるのか、強者と弱者の定義を解説。この根底を理解していれば、ニーチェの「超人」の思想も理解できるとしています。
また憎悪や憤りなど負の感情をもつことを「ルサンチマン」といいますが、ニーチェは自己と世界の関係性を考察する際、キリスト教信者はルサンチマンのなかで超越的な存在に逃避していると述べ、それを乗り越えた者が強者になれると主張しました。
超越的な存在に逃避するのか、それとも「永遠回帰」という聖なる虚言に賭けて自らの生を肯定するのか……ニーチェの人生を追いながら彼の思想を知れる入門書。著作を読む前に、触れておきたい一冊です。
ニーチェの代表作である『人間的な、あまりに人間的な』と『アンチクリスト』の2編をもとに構成された物語。
「ルサンチマン」「ニヒリズム」「超人」などの概念を漫画で知ることができます。
- 著者
- ["ニーチェ", "バラエティ・アートワークス"]
- 出版日
西洋文化の柱となるキリスト教への批判をしたニーチェ。伝統的な信仰を破壊するような新しい考えは、どのように生み出されたのでしょうか。生死をくり返す虚無の世界、永劫回帰、善悪や真理などの概念が生まれる過程を知ることができます。
漫画になっているので、視覚で具体的にイメージしやすいのもポイント。哲学的な描写はどうしても曖昧な表現になりがちですが、初心者でもわかりやすい構成です。単純に物語としても楽しめます。
先生と生徒の対話形式で、ニーチェの哲学を解説する作品。
口語調の文章は初心者にもわかりやすく、肩肘張らずに基本をおさえられる一冊です。
- 著者
- 飲茶
- 出版日
哲学や科学などの学問を解説する作品を多数手掛けている、飲茶の作品。初心者に向けて、ニーチェの哲学を解説しています。
ニーチェは、人生の目標がなくただ時間を潰すだけの人間を「末人」、弱いことを善いことだとしてただ従うだけの人間を「奴隷」、そして常にチャレンジを続ける人間を「超人」と定義しました。
そのうえで本書では、実在する世界を、自らの意志で「善い」と肯定して生きることができる「超人」を目指すべきだと言及。永劫回帰な世の中を前向きに生きる方法は、自分で自分の人生に価値を見つけて、肯定して生きることなのです。
生徒役の登場人物が読者の疑問点を代わりに聞いてくれるので、整理しながら読み進めることができるでしょう。明日から役立つ、人生の教訓になる一冊です。
ツァラトゥストラは、10年以上山奥に住んでいる賢者です。常日頃から、自身の経験によって得られた知識を人々に広めたいと思っていました。
街に出て説教をしようと、下山を決めたツァラトゥストラ。その過程で、神の死を再認識したり、超人の思想を教えようとするも失敗したりと、さまざまな出来事が起こります。
- 著者
- ["ニイチェ(ニーチェ)", "生田長江"]
- 出版日
1883年から1885年にかけて、ニーチェが発表した作品。4部構成になっています。翻訳は、日本で初めてニーチェの全集を個人で完訳した生田長江が手掛けました。
物語の大半は、ツァラトゥストラの心理描写。神が死んだことを知った彼が、キリスト教的な理想に代わる「超人」を人々に伝えようとするもののうまくいかず、再び山に戻って高等な人に出会い、喜んで交流するというストーリー。「神の死」「超人」「永劫回帰」などの思想が現れています。
文語調の文章は格式高いものの、読みづらさはありません。歴史に名を残したニーチェの哲学と言葉を存分に楽しむことができるでしょう。