3位:薄もやの中に見えてくる世界
①線の細いイケメンキャラクター60% ②濃厚で少し暗い世界観40%
古くから伝わる反魂香というお香は、煙の中に会いたい死者が浮かび上がるという不思議なものでした。そんな幻のようなお香を取り扱うという噂がある二藤香堂分店は、下町の路地裏にひっそりとあります。そこには様々な想いを抱えたお客がやってくるのです。
ある日、反魂香の仕入れをしていた五嶋の孫である美少女・えみるがやってきます。彼女は田舎の雪国で村八分にされており、祖父の五嶋が亡くなり身寄りも行くあてもなくなってしまっていたのでした。そして彼女は二藤香堂分店のイケメン店主の兄弟、仁藤千彰と晴臣と暮らすことになり……。
- 著者
- 桜小路 かのこ
- 出版日
- 2013-12-26
桜小路かのこの演出の素晴らしさを堪能できます。おそらく、自身が好きなモチーフや要素を詰め込んでいるのでビジュアルが完成されており、読んでいる方も入り込みやすく酔えるのです。
今回のお話は全体的にスモーキーパープルな色が見えるような世界観。夢の中にいるような幻想的で儚いものとなっています。反魂香という伝説上のお香がキーとなって、えみるの寂しい生い立ちや恋愛模様、仁藤兄弟の複雑な関係性をふんわりと包みます。
そしてそこに現れるイケメン兄弟!!美しい、美しすぎます。今回は茶髪犬系男子と金髪秘書系メガネ男子というイケメンです。しかし、そんな軽めな見た目にもかかわらず和服……。手を突っ込みたくなる胸元の三角地点……。店に出るためにいつも和服の兄弟はむしろ制服姿が新鮮なほど。その軽めの見た目と和服姿のギャップがたまらないイケメンです。
特に作者が描きたいと言っていたクライマックスのシーンは美しく感動的。実在の場所をモチーフにしたというその地は、物語の美しい世界観の締めを飾るにふさわしい舞台です。香りのようにつかめないのに記憶に残る物語をご賞味ください。
2位:運命に翻弄されるメロドラマ
①線の細いイケメンキャラクター、②濃厚で少し暗い世界観、③乙女心をくすぐるキュンキュンな設定すべてマル!
江戸時代の遊郭・吉原、そこは男女が化かし合う、かげろうのような場所。そこに15歳で吉原一の太夫になるために廓入りした朱音がいました。彼女は、もとは武家の生まれで教養もある娘です。しかし親を殺され、その真相を暴くために江戸随一の社交場であり、情報が集まる吉原に自ら身を沈めたのでした。そんな嘘も誠も無いカゴの中で高利貸しの若旦那と出会い……。
- 著者
- 桜小路 かのこ
- 出版日
- 2015-10-26
花魁漫画は数多くあります。既に手垢がつき、それでもなお豪華絢爛なビジュアルと悲恋の美しさに人気のあるテーマです。そんなビジュアルが魅力のキーポントである作品はやはり自分の好きな作者の絵で読むのが一番です。
本作には桜小路かのこの得意とする俺様黒髪王子・若旦那が出てきます。そして彼女お得意の悲しい世界観が上手く花魁の恋というテーマを作り上げています。
この漫画の見どころはままならぬ愛に苦しむ一途なイケメン若旦那。あまり多くを語らない彼が耐えきれずにこぼしてしまうセリフはどれも胸が掴まれるものとなっています。
両親の死の真実を突き止めるという覚悟を持って遊郭へやってきた朱音。その覚悟のために色恋に溺れることはできません。しかしどうしても若旦那への気持ちは膨らみ、隠しきれなくなっていきます。ある日、朱音は若旦那の見合い話の噂を聞いてしまうのです。
その噂を聞いてからしばらくして若旦那が綺麗な人と腕を組んでふたり連れで吉原にやってきます。その様子を見て朱音は若旦那を前に涙を流し駆けていきます。そのあと若旦那が彼女を捕まえて言った言葉が……。
ままならない運命に翻弄される二人(特にイケメン若旦那)の姿が、言葉が美麗でメロチックでございます。ちょっとした劇をみているようなセリフのすばらしさをご賞味ください。
1位:桜小路かのこの名作
①線の細いイケメンキャラクター100% ②濃厚で少し暗い世界観100% ③乙女心をくすぐるキュンキュンな設定100%の名作!
大変長らくお待たせいたしました……。私たちの永遠の黒髪キング・匡サマが降臨です。桜小路かのこの大ヒット作であり、彼女の描いた匡サマと濃い世界観は一時代を築いたと言っても過言ではありません。
原田実沙緒は幼い頃から妖怪が見える特殊体質。慣れることのない不安な毎日が続き、幼い頃に妖から守ってくれた鳥水匡が忘れられません。彼は「いつか迎えにいくから……」と優しい手を差し伸べてくれた初恋の人です。
そんな彼が約束通り大人になって戻ってきました。しかしそこで実沙緒は自分が「仙果の娘」と呼ばれる妖に力を与える特殊体質だと知らされます。16歳になるとその力が現れ、仙果の血を妖が飲めば寿命が延び、肉を喰べた妖は不老不死になり、花嫁に迎えればその一族に繁栄をもたらす、そんな妖たちが欲しくてたまらない食料のような存在だというのです。 そして、待ちわびていた匡も妖だと知ります。しかし2人はどうしても惹かれあってしまい……。
- 著者
- 桜小路 かのこ
- 出版日
- 2007-01-26
この漫画は先にあげた魅力点の3つすべてを兼ね備えた作品です。濃厚で悲しいストーリーよし、可愛いヒロインよし。しかし全てを兼ね備えた作品でありながらも、やはりこの漫画は匡様がすべてなのです。一途で深い愛で実沙緒を献身的に愛しているのもたまらなく魅力的です。
妖として、男として実沙緒を手に入れたいという気持ちと理性の間で揺れる彼。その線の細い端正な横顔はとても男性的でかっこいいのに、美しいものです。この世に匡サマを生み出してくれた桜小路かのこ先生には尊敬と感謝の念でいっぱいです……。
また、ちょっとしたギャグパートや欲望と理性の間で揺れる匡サマのエロい一面も惹かれてしまうポイント。イケメンが一途でエロいのは言うまでもなく鼻血ポイントです。
福山雅治も斎藤工もエロさや日常感が感じられなければただの観賞用の花なのです。隙があるからキャラは萌えるもの。匡サマはもちろん配下の天狗集団や匡サマの兄・祥、妖狐一族も見逃せませんし、イケメンが群雄割拠。イケメンの楽園と見まごうような世界なのです。
桜小路かのこの強みであるキャラクターを彩る世界観もいつも通り素晴らしいです。美しい世界に血や運命の痛みはつきもの。それを飾る曼珠沙華や黒い羽が美しく、画面に赤と黒が見えるのです。そんな美しくも哀しい世界をご覧ください。