グッと寒さが増した今日このごろ。本来なら温まるような本をご紹介したいところですが、今回は逆に寒さを助長するような本を3冊ご紹介します。郷愁に駆られる想いと何かを恐れる記憶は、個人的に紙一重だと思っています。歳を重ねれば重ねるほど、色んなことがわかったり理解するようになりますが、その一方で実は怖いものが増えているのかもしれません。今年読んだ本の中で、そんなことを改めて考えさせられるものを厳選してみました。一年の締めくくりとして、年末のお供にどうぞ。

12編が収録されているオムニバス形式の本書は、一人の少年が近所にある誰も訪れない「首屋敷」に忍び込み、地下室で見つけた人体模型と出会うところから始まります。いずれも身体の器官がタイトルに入っており、その器官にまつわるちょっとゾワッとするオチで終わります。
- 著者
- 中島 らも
- 出版日
9作の多種多様な作風の短編が収録された本書は、全体的に上記したような「老い」や「記憶」を考えさせられるようなものばかりです。とりわけ個人的にお気に入りなのが、「BB/PP」と「四人目の男」、そして「ミステリオーソ」です。タイトルにもなっている「BB/PP」は、グリム童話の「青ひげ」を下地とした近未来SFで、現代で言うラブドール(ダッチワイフ)が登場します。生身の女に興味を示さなくなったBBと、ヴィリエ・ド・リラダンの『未来のイヴ』や、2016年に日本公開した映画『エクス・マキナ』(監督:アレックス・ガーランド)をどことなく彷彿とさせるPP、この青ひげと未来のイヴのラブストーリーの結末は圧巻です。
- 著者
- 松浦 寿輝
- 出版日
- 2016-06-21
現代アートの鬼才・藤本由紀夫とコラボレーションした本書は、9つの「平和」で「平等」な世界をまとめた黒い寓話集です。寓話として書かれてはいますが、程度の差はあれ、あり得なくはない世界(もしかしたらあったかもしれない世界)がそこには広がっています。「平和」で「平等」な世界は悪夢と紙一重である、そんなことが、読み進めれば読み進めるほど頭をもたげてきます。
- 著者
- 嶽本 野ばら
- 出版日
- 2011-12-24
いかがでしたか? 今回はすべて短編集のものをご紹介しました。いずれも読んでいるとどこか郷愁に駆られ、そして次の瞬間にゾワッとするものばかりです。たまには寒さを助長させる本も良いかもしれませんね。