『GANTZ』『いぬやしき』など、数々の人気作品を世に生み出してきた漫画家・奥浩哉。そんな彼が放つ独特の世界観で描かれた衝撃作、それが本作「ギGIGANT(ギガント)」です。巨大化とAV女優という、およそ共存しそうにない2つの要素を、作者特有のリアリティある描写で見事に融合させたSF作品となっています。 今回は、そんな本作の魅力を2巻までご紹介。ネタバレ注意です。

映画監督を目指す気弱な高校生・横山田零。彼は好きなAV女優・パピコを中傷する貼り紙を見かけ、剥がしていたところ、なんと憧れのパピコ本人と出会ってしまうのです。
- 著者
- 奥 浩哉
- 出版日
- 2018-05-30
一方のパピコは、謎の老人から右手首にダイヤルのようなものを取り付けられてしまって困っていました。そしてなぜかそのダイヤルによって巨大化する事が出来るようになってしまうのです。
やがて零の熱烈なアプローチによって付き合う事になったこの2人でしたが、そんな彼らを、さらにとんでもない事件が襲う事になります。
果たして、彼らの運命はどのように展開していく事になるのでしょうか。
奥浩哉作品は強烈なインパクトを持つ設定と、その設定を活かした先の読めない展開が魅力。本作についてもその持ち味は健在で、およそ簡単には考えつかない、常識を超えたストーリー展開が数多く用意されているのです。
本作ではある日突然、パピコが謎の老人から巨大化出来るダイヤルを身体に取り付けられるという、印象的な非日常から始まります。
当然、彼女はその能力に戸惑い、日常生活にさまざまな支障と影響がおよぶ事になるのです。
そんななか世間でも、ある不思議な噂が広がっていく事になります。それは、謎のサイト「ETE」について。なんでも、そのサイトで提案された案が可決されると、現実になるという、とんでもない内容の噂だったのです。
パピコとETE、これら別々の事象と思われた2つの異変が、いつしか交じり合って、さらに複雑な大事件へと発展していく事となります。こうした巨大な混沌がうまく融合され、先の読めない、続きが気になる展開を繰り広げます。
先の読めない意外な展開が魅力的な作品であるとご紹介しましたが、奥浩哉作品の妙は、それだけではありません。そうした超展開とうまく調和するように描かれた、日常的な風景そのものにも魅力の秘密であるのです。
たとえば登場人物についてですが、奥浩哉作品に登場する人物というのは、それほど特殊な経歴や素性を持っているというわけではありません。むしろ、どこにでもいそうな普通の人物達が主役であることが多いのです。
そのため読み手としても、超常的なメンタルや身体能力を持ったヒーローではない人物達に対して、感情移入がしやすくなっているといえるでしょう。
また人物以外にも、街の風景や屋内についての描写でも同様の事がいえます。本作に登場する建物や室内の描写は、そのどれもがどこかで見た事があるようなものばかりであり、日常感が強調されるような印象を受けます。
そんな何という事はない風景が多く登場するため、大きく心情を揺さぶられるような景観は少ないかもしれません。ですが、そうした日常に突如として異常が紛れ込んでくるからこそ、衝撃度が増すのです。
こうした日常と非日常の緩急が非常に巧みなことも、奥浩哉作品の魅力の一つです。
本作の主役はどこにでもいそうな人物達であると紹介をしましたが、主役はもちろん、登場人物達の動きにも注目して頂ければと思います。奥浩哉作品に登場するキャラクター達は、実に人間臭い人物達が揃っており、そのリアルさが、さらに作品としての魅力を高めているのです。
作品に登場するのは、よくも悪くも普通の人達。そのため、喜んだり楽しんだりといったプラスの感情もありますが、ささいなことで怒ったり悲しんだりというマイナスの感情も当たり前に描写されているのです。
その表現はとても泥臭く、等身大の人間が描かれているため、決してカッコいいものやキレイなものばかりではありません。時には恐怖に怯えて逃げ出しもすれば、激昂して泣き叫んだりもします。
しかし、それこそがよりキャラクターの動きにリアリティを生み出し、活き活きと見せてくれるのです。
ぜひ作中で、必死に足掻き続けるキャラクター達の活躍を楽しんで頂ければと思います。
ここからは各単行本の内容について、見所をご紹介。
本巻では、主役である横山田零とパピコの出会いから始まり、パピコの身に降りかかる巨大化の異変についてが中心に描かれています。
映画監督を目指すという零の高校生活や、DVをくり返す彼氏と付き合っているパピコのプライベート、さらに仕事風景といった描写が多く、彼らに対する理解が深まる内容です。
そのうえで、巨大化技術をパピコに託した謎の老人や、その老人の残した謎の映像といった、詳細のわからない非日常的な要素が次々と盛り込まれていきます。
そして、パピコから零に巨大化の秘密を打ち明けた事によって、今後どのような事件が巻き起こるのか期待させる展開へと続いていくのです。
- 著者
- 奥 浩哉
- 出版日
- 2018-05-30
そんな本巻の見所は、なんといっても零にパピコが巨大化の秘密を打ち明けるシーンでしょう。
これまでAV女優と高校生という、およそ交わる事のない人生を歩んでいた2人ですが、零がパピコの中傷ポスターを剥がす場面に出くわした事をきっかけに、彼らは距離を縮める事となります。
近況などを連絡し合うなかで、それぞれ相手への好意がどんどん膨らんでいき、いつしかお互いに大事と思える存在に変わっていくのです。
そんな彼らが、ついに後戻りの出来ない秘密まで共有しようとするほどに、信頼し合える関係にまで発展していくのでした。
ちょっと危険な関係を予感させる2人の絆に、ドキドキさせられる展開といえるでしょう。
前巻のラストで、零に巨大化の秘密を明かしたパピコでしたが、その際に服が破れて全裸になってしまっているところを、帰ってきた彼氏に目撃されてしまいます。
当然激怒した彼氏に殴られる零でしたが、パピコはそんな彼氏を押さえつけて、ついに別れを切り出す事になるのです。
自分を助けてくれたパピコに対し、感情のままに告白する零。パピコは、1度はそんな彼の想いを断りましたが、その熱情に根負けして交際を開始する事になったのでした。
そんな幸せな2人をよそに、謎のサイトETEで「破壊神」が可決される事になります。そして、その破壊神による大虐殺によって、街が蹂躙される事になるのです。
零は、破壊神によって蹂躙される街中であわやという危機を迎えてしまいますが、そんな彼の窮地を救ったのは、なんと巨大化したパピコだったのです。
- 著者
- 奥 浩哉
- 出版日
- 2018-10-30
本巻の見所は、やはりこの巨大化したパピコによる、零の救出シーンでしょう。
ここに至るまでの破壊神による人類大虐殺という衝撃的な展開によって、これまでの日常感が一気に破壊され、焦燥感が募る雰囲気が演出されていきます。
そんななかで、紆余曲折ありながらも交際にまで発展した若い2人の男女に迫る命の危機という描写は、盛り上がらずにはいられないのではないでしょうか。
これまで、さほど重要な役割を持たなかった巨大化能力について、本格的に事件の根幹に関わるような使われ方をした場面であるともいえるでしょう。
ここから先の展開が楽しみとなるような、インパクト大の場面です。
謎多き設定の注目作品「ギガント」。まだまだ展開の気になる作品です。ぜひ、この機会にご一読ください。