青い暴走3
ユウはジュンヤに中1の頃の話をする。リョウスケとともに売店に向かったシンゾウはコーヒー牛乳を買おうとするが……。

中1の頃といえば、ユウの愛想が悪くなり始めたと言っていた時期だ。直接的なきっかけとか、中1のいつ頃かは聞いていないけれど、クラスで浮いてしまったと。
ユウが浮いたことと、呉道は何か関係あるのだろうか。
「呉道とは、学校祭委員を一緒にやってたんだ」
ユウはおれの方ではなく、正面を見ながら言う。
胸の奥がうずく。
学校祭委員を一緒にやるっていうのは、他の委員会をやるのとは違う。クラスをひとつにするために、密にコミュニケーションを取らなくちゃいけない。学校祭委員のカップルができることもある。事実、うちのクラスの学校祭委員の花村と花上は付き合っている。
「今考えると、つまんない展示だったけど、当時は結構頑張ったんだ」
中学1年の学校祭は、全クラス展示企画と決まっている。クラスでテーマを決めて調べて発表するというもの。受験生と生徒の親くらいしか見に来ない退屈な企画だ。
「それで呉道と対立したとかか?」
「ううん。当時は呉道もあんな感じじゃなくて、クラスをちゃんとまとめてた。企画の出来もそんなに悪くなかったと思う」
じゃあなんで? と聞こうとして、ひとつ考えたくない答えが頭をよぎる。
個人的には最悪の答え。
ユウはおれを見て、口を開きかけて、そのままかたまる。
視線の先はおれというより、おれの後ろ。
振り返る。
今一番会いたくないやつがそこにはいた。
「楽しそうだな。おれも混ぜてくれよ」
呉道。
「ハニー」
スキップが小走りにかわって、売店に向かう松本。
「ダーリン」
手を広げる安藤。
そのまま抱きしめ合うふたり。
……ナチュラルにそういうことやるのやめてもらえないかな?
あいつら流の挨拶だったのだろうか、すぐにハグを解く。
「シンちゃんハリーアップ」
僕に向かって、大きく手招きする。
急がなくてもコーヒー牛乳は逃げない。そのままのスピードで売店まで歩く。
「神社で寝てた人だ!」
安藤が僕を見て言う。
見られてたのか。いや、それにしても、その記憶のされ方はひどい。
「違うよハニー。あれは寝てたんじゃなくて転んだんだよ」
不必要なフォローを入れるな。
「そうだったんだ。受験生じゃなくてよかったね!」
「正月から滑ってこけてたら、受かるものも受かんないからね!」
いや、実は生徒会長選挙に出ようと思ってるんだけど、割としゃれにならないんだけど。
そんな風に僕にダメージを与えて、松本と安藤はお土産を物色し始めた。
「ダーリン、お土産どうする?」
「うーん、もう木刀は買ったんだけど~」
「はやっ!」
「早いもの勝ちだからね」
「おっ、松本と原島じゃん」
後ろから声がする。振り向かなくても誰かはわかる。
「なんだよ、お土産買うなら言えよ」
「もしかして、抜け駆けして二本目の木刀買うつもりだったのか?」
「うわっ、ずり」
「おれも二刀流になる!」
「じゃあおれ三刀流!」
「3本は厳しいだろ」
「口にくわえればいける!」
「700円×3本で2100円」
「……厳しいっす」
他の班員たちである。
「今、ハニーと話してるから、邪魔しないで」
松本が軽い感じで言う。
「わかってるよ。原島、うちの部屋で人生ゲームやるんだけど、来るか?」
人生ゲームなら悪くないかもしれない。ルーレットを回すだけだし、いくらこいつらと一緒でもそんなに荒れることはないだろう。
でも、松本がここで安藤と話しているのであれば、自分の部屋に戻ればひとりになれるということだ。
「おれはいいや」
「りょうかい。じゃあ、買うもん買って部屋行くか」
そう言って、班員たちは売店の中に入って行く。
何を買うのかと思って見てみると、飲み物のようだ。
最初のひとりがコーヒー牛乳を手に取る。次の班員もコーヒー牛乳。班員たちは全員コーヒー牛乳を手に取って行く。他にもコーラとかお茶とか色々と種類があるというのに。
コーヒー牛乳は僕の前で売り切れる。
「なんでおまえらみんなコーヒー牛乳なんだよ……」
ため息とともにつぶやく。
「だって風呂上がりはコーヒー牛乳だろ? 何言ってんだ原島」
いや、それはそうなんだけど。
班員たちは、僕をおいて部屋に戻って行く。
「ダーリン、なんか怒られたって聞いたけど大丈夫だった?」
松本と安藤は売店の中まで入ってきたようだ。
「そんなにでもないよ」
「そっかぁ。ところで、なんで怒られたの?」
「うーんと、クレミーが池に落ちたからかな?」
「なんで呉道が池に落っこちてダーリンが怒られるの?」
「わかんない。でも、ジュンヤちゃんとかアキラちゃんも一緒に怒られた」
「えっ、村上くんたちも一緒にいたの?」
「そうだよ」
「ってことは、ユウも?」
「ユウちゃんは怒られてないけど、近くにはいたよ」
会話はそこで途切れる。それまでテンポよく話が続いていただけに気になる。
見ると、安藤が珍しく気難しそうな顔をしていた。
「ユウ、大丈夫かな?」
「ん? ユウちゃんは怒られてないんだよ?」
「ううん。違くて、ユウにとって、呉道は天敵なの」
次回:1月11日6時更新予定
青い暴走3
2015年01月01日![]()
青い暴走
高校生が主人公の青春小説「青い暴走」シリーズを連載しています。