仕事に込められた「オリジナル」
デザインに限らず、仕事は効率が良いに越したことはありません。摩擦もない方が楽ですし、妥協することは一つの処世術とも言えます。
それらを上手くまとめるとかなり仕事が「出来る」人になれるように聞こえますが、それで捗る仕事の方法に価値は生まれるのでしょうか。価値が生まれる仕事の仕方とはどのようなものなのでしょうか。
『装幀のなかの絵』は、雑誌のデザインや書籍の装幀などを主に手がけているデザイナー・有山達也氏が、自身の仕事について綴った連載をまとめたものです。
一見手がかからないような仕事でもとにかく手間をかけ、作業に時間のない状況でも話し合いに時間を割き、経験のない領域にも臆することなく踏み込んでいく。効率や妥協などに縛られない仕事の向き合い方が、そこには描かれています。
与えられた仕事に質実と想いを込める有山氏の姿勢には、デザインという仕事に限らない普遍的な哲学を感じ取る事ができます。それは、マニュアルや仕事術などの知識に頼らない自分だけのオリジナルであり、仕事に価値を生むシグネチャー(印)でもあります。
- 著者
- 有山達也
- 出版日
- 2011-11-25
緑色のリゾットをつくるために
どんな仕事にも最初に「問題」があり、そこから「解決」に向かいます。その間に様々な工程が配置されていき、それらを活用して問題の解決案にたどり着きます。そんな、普遍的な問題にあたって、想像的な視点で方策を描いているのが本書『モノからモノが生まれる』です。
著者のブルーノ・ムナーリ氏はプロダクトデザイナーとしてよく知られている人物ですが、その活動領域は多岐にわたります。絵本や映像についての作家であり、教育者でもある氏の創作メソッドは、いくつもの書籍で紹介されています。
その中でも本書は、氏のデザイナーという職能と社会的役割に対しての情熱で溢れています。デザインの問題解決がどこに潜んでいるのか、どのようにアイデアに結びつけるか。その豊かで力強い規範に勇気が出るようです。
また冒頭では老子を引き合いに出し、美や豪華さに取り憑かれた不毛なプロダクトの愚かしさを書いています。さらに、良質なデザインの例として、素朴ながらも純粋に機能を求めた日本のクラフトマンシップに関心をよせていたりと、東洋的な理解がしやすいのも本書の特徴です。
しかし原書副題で「企画の方法論のための覚え書」と示されている通り、デザイナーならずとも、企画提案から問題解決に携わる方々にとって応用できる必見の内容となっており、企画から解決方法の選択、問題の定義づけ、アイデア、データの収集、創造力など、問題解決の為の配列が様々な実例と合わせてユニークに書き記されています。
本書の導入部分で紹介されている“緑色のリゾットの作り方”で示されている客観的な創造性は、企画の解決に悩む方々に是非一読していただきたい部分です。
- 著者
- ブルーノ・ムナーリ
- 出版日
- 2007-10-24
モノに内包している「コトのデザイン」
本書『インテリアと日本人』は国内外で活躍しているインテリアデザイナーの内田 繋氏が、日本のインテリアと空間感覚について書き記したものです。その奥行きのある論考は、東洋と西洋、環境や土着、茶室から近代建築、身体と心など様々な領域で紡がれています。
モノよりコトの評価が重視され始めているいま、本書の視座は、おそらくこの本が出版された時よりも強い求心力をもっています。
一般的なデザインの指南書とは違い、その視点を日本の住まいの文化的背景に据えているところに本書の輝きがあります。つまり形だけのインテリアをデザインするのではなく、その精神的な領域までデザインの範疇とすることに、インテリアデザインの本質があるということです。
自身の仕事の領域を拡張し、そのリーチを「モノ」だけではなく「コト」にまで伸ばす内田氏の思想は、共感すべき様々な哲学を内包しており、いま改めて読まれるべき一冊と言ってよいのではないでしょうか。
- 著者
- 内田 繁
- 出版日
- 2000-03-01