2017年12月1日から実写映画が公開される『鋼の錬金術師』。この記事ではその名作少年漫画の綿密に練られた設定と、魅力溢れるキャラたちの13の秘密についてご紹介します!ネタバレも多く含みますので未読の方はご注意ください。

- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
2017年12月1日に映画が公開される漫画、『鋼の錬金術師』。序盤から衝撃のシーン、エピソードで読者を引きつけ、ストーリー以外も様々な魅力的な登場人物で人気を博した荒川弘の代表作とも言えるダークファンタジーストーリーです。
今回はそんな本作の知られざる裏話をご紹介!登場人物たちのあまり知られていない設定をご紹介します。雑誌「ユリイカ」の「2008年6月号 特集=マンガ批評の新展開」、「2010年12月号 特集=荒川弘『鋼の錬金術師』完結記念特集」の一部からの内容ですので、さらに詳しく読みたい方はそちらからも「ハガレン」の裏話を読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに本作はアプリで無料で読むこともできるので、実際に漫画で裏話を検証するのもおもしろいかもしれません!
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2008-05-26
- 著者
- ["荒川 弘", "三宅 乱丈", "藤田 和日郎", "小泉 義之", "佐藤 亜紀"]
- 出版日
- 2010-11-27
とある片田舎に生まれたエルリック兄弟は幼いながらにして錬金術師としての才能を育てた人物。しかし彼らの家庭環境は決していいものとは言えず、父は失踪、母が女手一つでふたりを育てますが、病気で帰らぬ人となってしまいます。
そこで兄のエドワード(以下エド)が考えついたのは、錬金術で母を蘇らせること。人体錬成は禁忌であるものの、幼い彼らはただもう一度母親に会いたいという一心で錬金術の鍛錬に励みます。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2002-05-22
しかし、錬成は失敗。
等価交換という原則からエドは左足を奪われ、弟のアルフォンス(以下アル)は身体すべてを「持っていかれて」しまいます。
しかも出来上がった母親は人間とも呼べないもので、エドは血まみれになりながら呆然とします。
しかしアルフォンスまで失ってしまうことに耐えきれなかった彼は、自分の右腕と引き換えにアルフォンスの魂を近くにあった鎧に定着させます。
一度は希望を失い、廃人のようになってしまったエドでしたが、国家錬金術師のマスタング大佐に喝を入れられ、再燃。
そこから自らも国家錬金術師として軍に入り、使えるものはすべて使って、アルフォンスの元の体を取り戻すための材料「賢者の石」を探す旅を始めます。
しかしその賢者の石には様々な人物の思惑が絡んでいて……。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2005-03-11
当初は読み切りとして始まったという『鋼の錬金術師』。そのストーリーは、旅をしていたエドとアルが砂漠の街に寄って、そこに悪い領主がいて……という流れの勧善懲悪の水戸黄門のような話だったのだとか。
そこで手に入れた賢者の石を街の人のために使ってしまい、でもまた探せばいいよ、という結末の話だったそうです。
- 著者
- 荒川弘
- 出版日
- 2005-07-22
読み切りから連載の話くぉ持ち出された荒川。その時には等価交換という発想はあったものの、それが物語全体を支配するような重みはなかったと言います。
つまりそこから連載開始の2ヶ月弱でこの独特の世界観を作り上げたんですね。すごいです。しかもその時点で多少変わっているところはあるものの、最終回はほとんど変わっていないのだとか。
さらに荒川は打ち切りのことも考え、5ヶ月バージョンの話運び、10ヶ月バージョンの話運びも考えていたと話します。どこまでもストイックで準備のいい漫画家なんですね。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2006-03-22
少年漫画の王道をつくるキーワードが「友情、努力、勝利」というのはもはや多くの人が知っているところかと思いますが、実は主人公のエドはそれをまったく体現しない人物だと荒川は語ります。
そもそも努力しまくって母親を錬成し、失敗するというところから始まるストーリーなので、その過程を見せ場にすることはできません。
また、当初荒川の頭に浮かんだイメージにほとんど子供が登場しないことから、エドには友達があまりいないだろうということで(笑)、友情も無理。
ここまでで王道は無理だと判断し、何と作者は勝利まで無くしてしまったというのです。
確かにエドが大活躍して敵を倒すということは少なく、大抵他の登場人物の力があり、最強ポジションはマスタング大佐だったりもします。
そしてその展開も白黒ついて勝利というものではなく、荒川いわく「グダグダ」。
しかしそんな非王道の物語がここまでヒットしたのですから、作者の力量には驚かされます。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2006-07-22
荒川はインタビュー時に等価交換の不可分のなさがバブル経済に似ているとインタビュアーに指摘され、確かに似ている面があると返します。
そもそも荒川は農家出身なので、日本のバブル経済期にはあまり関わりがなかったそうなのですが、外から見ていてこれだけ大きな経済の動きがいいことだけで終わるはずがないだろうと不自然に思っていたそう。
そして確かにその後バブルは崩壊するのです。
エドたちも母親を生き返らせるという禁忌の代わりに、それぞれの体を失います。確かに、そんな等価交換の残酷なまでの不可分のなさが、バブルという社会現象に通じるところがありますね。
- 著者
- 荒川弘
- 出版日
- 2007-03-22
物語の始まり、エドたちが錬成した母親のエピソード、そして有名な父親によって愛犬と錬成されてしまったニーナという少女のエピソード。実はこのふたつのエピソードは荒川がクローン牛に対する違和感を持ったことから生まれた内容でした。
荒川が実家の農家にいた頃はクローン牛の飼育が全盛期で、彼女の家はその地域でも特に力を入れていたそう。
もともと自分たちで育てた牛を自分たちで殺すという商売をしている彼女は命を扱うことへの罪悪感は薄かったものの、クローン牛の生後1週間の死亡率が高いことから、生命の操作は何か不自然なものなのだろうと感じていました。
そんな技術の凄さと恐ろしさを表現したかったと語る彼女。その思惑どおり、その気持ち悪さはふたつのエピソードからまざまざと感じられます。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2007-12-22
本作に登場するホムンクルスたちですが、お父様と呼ばれるものから生み出され、それぞれの感情を持ち、変化しながら生きるというところではあまり人間と変わりありません。
この人間とホムンクルスの違いという曖昧な線引きは、荒川が農家だった時に感じた疑問からきています。
牛や馬でもペットになるものもいれば、肉として殺されるものもいる。彼女は、中身は同じなのに曖昧な人間の線引きで生死が分かれることが不思議だったと言います。
荒川自身はその線引きに対してインタビューである考えを語っていますが、あなたはその線引きをどうつけているでしょうか?この機会に考えてみるのも面白いかもしれません。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2008-03-22
はじめからまとめて7人キャラ付けをしていたらしいホムンクルスたち。しかしそのキャラ付けもそれぞれシルエットにした時に分かればいいのでは、というくらいのものだったそう。
そしてそのうちに人型でなくてもいいのでは、と思ったところからセリムが生まれたと言います。その同時期に大統領ブラッドレイも完成。やはりトリを飾るホムンクルスたちは似た時期に生まれたのですね。
そして彼らの能力もまた、それぞれの話に合わせて徐々に決めていったのだと言うのですから、その物語の面白さを生み出す能力の高さには感心してしまいます。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2003-01-22
エンヴィーの最後といえば、潔い自害だというのが記憶にありますが、実は彼は荒川いわく「けちょんけちょん」にしてやろうと思っていた存在でした。
実はその頃荒川は、マスタング大佐の気持ちに強く感情移入していたらしく、ヒューズを殺したこと、そしてそれを悪びれもせず語るエンヴィーがとても憎らしかったのだとか。確かにヒューズの殺され方は奥さんに化けたエンヴィーに殺される、というあまりにも悲しすぎるもので、その気持ちも理解できてしまいます。
しかしストーリーでリザがマスタング大佐を止めたように、荒川がそうしようとしたところ、他のキャラたちが止めに来たのだとか。キャラたちが作者のストーリー展開を進める手を軌道修正させるとは、面白いですね。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2009-12-22
ラスボス的な立場で物語を締めくくってくれたブラッドレイですが、彼に対しての展開は自分でも予想外な部分があったよう。大統領については、こんな風に語っています。
「大統領はラスボスみたいでしたね
もうこいつラスボスでもいいや、と思いながら描いてました」
(「2010年12月号 特集=荒川弘『鋼の錬金術師』完結記念特集」より引用)
ゆるすぎるw
おじさん好きだということについては熱く語ることの多い荒川ですが、設定に関してはこんな一面もあるんですね。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2004-11-22
マスタング大佐の部下であり、くわえタバコがトレードマークのハボック。実は彼は当初は死ぬ予定の人物だったのだとか。
そこには担当編集との「人の死は簡単に感情を動かせるけれども、生かすことでもっとすごい感動を与えられるかもしれない」という話し合いがあり、そこから最後まで生きることになったんだそうです。
漫画家と編集者の二人三脚の重要さを感じられる言葉ですね。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2007-08-11
自身が一番近いキャラについて聞かれた荒川はスカーやイズミ、エドなどと言われたことがあると話したあと、特にアームストロング姉については「これは荒川さんから出てくるキャラだよね」と言われたと語ります。
もともとアームストロング姉は感情的だと言われがちな女性から感情を取り払ったらどういう人物になるのだろうか、という実験的な試みから生まれたキャラだそう。たしかに一般的な女性らしい部分は彼女にはあまりないですね。
荒川自身も物事が一気に押し寄せて来た時、本当に必要なものはなにかという優先順位をつけ、それで不要なものはどんどん切っていく、合理的なタイプなのだとか。
例えば連載が決まった時にはやりかけのRPGをバッサリとやめ、それ以降ゲームはしていないと言います。すごい意思の強さ。確かにアームストロング姉に近い部分があるように感じますね。
- 著者
- 荒川弘
- 出版日
- 2005-11-21
シン国皇帝の後継を巡る展開でエドたちの国にやってきたリンたちとメイたち。アメストリスでは、結局賢者の石よりも今目の前にある危機をこの国のために排除することを選びました。
選択に迷う場面ですが、これは王としての器を試されるものだった、と荒川は語ります。また、部下にまかせずに自分の命を張って目的を果たそうとするところも、現皇帝から評価されたという裏設定もあるそう。
シン国の現皇帝は過程も評価する、できた王だったんですね。
一般人が頑張るのが好きだという愛情深いことを語る荒川。そんな彼女のつくる物語で、脇役にも関わらず1巻から登場し、いい感じに小狡い味を出しているのがヨキ。
荒川も「まさかこんなに頑張ってくるキャラになるとは……」「贔屓にしちゃってるのかも」と彼を評します。
確かにヨキは狐のような小狡さはあるものの、どこか憎めない雰囲気があるんですよね。読者の私たちと同じく、ずるいところもあり、主人公になれないタイプなのに頑張る彼は、もしかすると一番共感度の高い人物なのかもしれません。
以上『鋼の錬金術師』をご紹介させていただきました。これらの裏話をふまえて作品を読んでみるのもおすすめです。全27巻の濃厚な旅をあなたの手で紐解いてみてはいかがでしょうか?