就職戦線は売り手市場だそうだ。ただし、「即戦力」という言葉に企業側も学生側も振り回されている。学者は机上の空論に強く実戦に弱い。教え子たる学生も同じだ。だが、現代社会はそれを許さない。余裕のない企業は即戦力人材という見果てぬ夢を追う。そして学生は無理なロールモデルを押し付けられ消耗する。 果たして、どんな学生ならば即戦力として活躍するのだろうか。ここでは、学問の世界から様々な形の戦場に飛び出し、しかも成功した例を書籍の中に追ってみよう。本当の「即戦力」の意味を知ることができるかもしれない。

「この戦争のなかから、革命の生まれる可能性が胎動していた。しかし、その可能性を現実化する主体の側には、そのために必要な『意識』が欠けていた。…なぜ、このときにヘーゲルだったのか。」
- 著者
- 中沢 新一
- 出版日
- 2005-06-16
いくつかの偶然と、いわゆる家柄という強力な背景があったとはいえ、彼女の資質は当時の世界情勢が要請した稀有な能力だった。それは前例のない事態に対し的確かつ勇気ある決断を下し、実施する能力。
- 著者
- 緒方 貞子
- 出版日
- 2002-11-30
パラダイム(社会全体の基本構造)が変換するとき、従来型の知識と経験しかない旧体制側は「机上の空論」に歯が立たない。村医者・村田蔵六は新技術と新体制の現実世界への窓口でしかない。オランダ語と蘭学書が花咲か爺の灰であり、彼はその灰をばらまいただけで陸軍総督「大村益次郎」となった。
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
- 1976-09-01
キリスト以前の人々の来世はどうなるのか?欧州各国の勢力関係は?シドチの予想通り、白石の追求は鋭く論理的でその知能レベルは尋常ではない。神学論争は譲らず、欧州情勢の説明には誠意と博学を以ってシドチは対応する。
- 著者
- 新井 白石 村岡 典嗣
- 出版日
- 1936-10-15
「文と武、ひとりの人間の中に、このふたつのものが自然同居し、しかも、自らがそれを実践して、柔道という体系を作りあげてしまったというのは、ひとつの奇跡のようなできごとと言っていい。」
- 著者
- 夢枕 獏
- 出版日
- 2014-09-11
現実は反復と一回性の二面を持つ。学者は記録(データ)から「法則」を導き出すことで満足する。実践者は経験から導き出した原則とノウハウを現実に適用し、失敗し、また作り直す。どちらも反復する現実、いわゆるルーティンには強く、一回性の現実、いわゆる想定外のアクシデントに弱い。
実践者の成功体験は無力であり、自己模倣も危険。先輩も上司も無力。今回紹介した「実戦に強い学者たち」の共通点は、時代状況が大きく変わる瞬間に実践者たち、もしくは時代そのものから召喚されたことである。彼らは想像力と構想力を駆使して、未知なる現実に対処する。
フィクションである学問が現実を創り出す時、本当の学問の力が発揮される。「即戦力」とは「実戦に強い学者」と同様に、現状の実践者たちがルーティンの対応力ではニッチもサッチも行かなくなり、進退に窮した時に召喚される存在なのではないか。とすれば、それは結局、幻なのである。