スタイリッシュな絵と美しい世界観にファンが多いジョージ朝倉。しかし最大の魅力はどこか壊れた登場人物たちでしょう。普通でない彼らの物語は結晶のように繊細で、かつエネルギッシュです。今回はその魅力が恋と綺麗にマッチした物語6作品をご紹介します。

「俺たちは殺伐とあるべきなのだ」(『夫婦サファリ』1巻より引用)
新婚旅行中にも関わらず、こんなモノローグから始まる本作。ジョージ朝倉節が炸裂した、ファンにはたまらない、初見の人はもしかすると少し戸惑うかもしれない作品です。
主人公は漫画家の祭田。編集者・丹下の作品をパクったとして彼女から脅迫され、結婚に至った人物です。
しかも彼女が結婚したい理由は相手が好きだから、などではなく、適齢期で子供もほしいからというもの。それで7年間同棲していたヒモ彼氏を捨てたというのですから、恐ろしい決断力です。
- 著者
- ジョージ朝倉
- 出版日
- 2014-07-08
本作は「殺伐とあるべき」な、「愛のない」関係のふたりが、夢のない現実と、ついつい強くなってしまった繋がりの間でせめぎ合いながらも、愛を深めていく物語です。
始まりが愛のない結婚だっただけに、確かに殺伐とした雰囲気も顔を覗かせます。しかし彼らがゆっくりと心を通わせていく様子は、始まりなんてどうでもいい!誰かと愛し合うって素晴らしい!と思わせる力があるのです。
さまざまな現実がとっちらかっていても、とにかく愛があればオールオッケー!という暴力的ともいえる展開を見せる本作。ジョージ朝倉の独特な世界観と、愛という普遍的なテーマが見事にマッチした作品となっています。
それだけ聞くと王道過ぎる設定だと思われますか?それだけで終わらないのがジョージ朝倉の世界です。
- 著者
- ジョージ 朝倉
- 出版日
- 2013-11-13
右京も素直になれない性格をこじらせ、蘭の髪をハサミで切ったり、蘭を「遠くの札束よりも近くの1円玉」と称しながらも、そのあとに「あぁ蘭(中略)君の手段ときたらなんてロマンチック!」と彼女に心で詩を詠むのです。
ギャグ色の強い1巻ですが、2巻からは少しずつシリアスな面が増えていきます。そのふり幅がこの作品の魅力です。
ジョージ朝倉デビュー7年目にして初めての連載作品。彼女の独特なエネルギーの高さや美しい世界観の芽が感じられる作品です。
- 著者
- ジョージ 朝倉
- 出版日
- 2002-05-10
表題作「水蜜桃の夜」は再婚で血のつながらない兄弟になった少年と少女の話です。このような、漫画でよくある設定の話は、その過程でどこまで読者を引き付けられるかが作者の腕の見せ所。
全体に漂う性と暗い雰囲気の湿度が感じられ、まさに果実が滴っているような雰囲気は作者の力量を感じます。そしてその雰囲気の中発せられる言葉がまた強い。
「痛いのは恋愛にはなれないから
それでも強く強くひかれてたから」
(『水蜜桃の夜』より引用)
刺さるような言葉にも注目してほしい、ジョージ朝倉の初期作品です。
- 著者
- ジョージ 朝倉
- 出版日
- 2001-03-09
「あたしたぶん消えちゃうけど覚えていて」
(『恋文日和』より引用)
ある雪の降る日、田舎に住む少年龍平に差出人不明の手紙が届きます。雪のように儚いその言葉に、田舎では浮いてしまうほどの美少女千雪を重ね、龍平は彼女に春を待つよう返事を書きます。
「俺に花を見る手伝いをさせてくれないか?」
(『恋文日和』より引用)
この物語は何といっても映像的な美しさが際立った作品です。肌の赤さ、唇の色、暗い川、雪…それらがカラー映像のように見えます。その色が龍平や千雪の感情を際立たせ、とても綺麗。季節の移ろいを肌で感じたような読後感が味わえる作品です。
仕事をやめてから彼氏にも振られ、全部やりなおしたい、と心機一転引っ越します。隣に住み、偶然バイト先の店長だった京志郎に恋心を感じますが、彼には無愛想で美人な彼女がいて……。
- 著者
- ジョージ朝倉
- 出版日
- 2004-05-08
- 著者
- ジョージ 朝倉
- 出版日
- 2005-03-11
本作はよく青春と言われる爽やかなものよりは、学生時代の思い出したくもないような強い自意識を描いたものです。
学生時代、誰しも自分の手に負えない煮詰まった感情や考えに悩んだことがあるのではないでしょうか。この作品を読んでいると、思い込みが激しくてまっすぐすぎたエネルギーがフラッシュバックします。その身近な記憶をひとコマひとコマ鮮やかな画力が後押しした名作です。
以上、ジョージ朝倉の恋愛漫画を6作品上げさせていただきました。彼女は画面の光や色の調節がとても上手。春夏秋冬、明暗が鮮やかに迫ってきます。そしてその絵の中、刺さる言葉に乗せられた感情は読者に肉薄します。ドラマや映画にとどまるのはもったいない!ぜひこの原作でこの世界観を味わってください。