ネタバレ考察2:灰原哀のひととなり
出典:『名探偵コナン』18巻
単行本第18巻FILE.6「転校生は…」で帝丹小学校に転校生として現れた哀は、同巻FILE.8「コードネーム・シェリー」でその正体を自らコナンに明かしました。
「灰原じゃないわ…シェリー…」
「それが私のコードネームよ…」
(『名探偵コナン』18巻から引用)
しかし事の真相までは明かさず、現在の住まいであるという「米花町2丁目22番地」、つまり阿笠博士の家へとコナンとともに「帰宅」したのちに、阿笠博士から真相が伝えられます。
この件で、哀の性格が幾らか捻れていることが窺い知れます。「APTX4869」という薬の名と「組織」との関わり、そして「シェリー」というコードネームを口にした上で、顔色を変えて博士に電話をかけるコナンに追い討ちをかけて、こんなことを言ったのです。
「無駄よ…何度かけても話し中…
受話器が外れたまま、彼はとる事ができないのよ…」
「もうこの世には、いないんだもの…」
(『名探偵コナン』18巻から引用)
実は博士はパソコン通信に凝っていて、そのために電話回線が使用中で、電話が繋がらなかったのです(連載当時はまだ光回線などが発達しておらず、電話回線を利用してインターネットに接続すると、その間は電話が使用できなくなったのです)。
それが分かっていながら、敢えてコナンに疑心を抱かせるようなことを哀は言ったのです。彼女のキャラクター性を読者に十二分に伝えた秀逸なエピソードでした。
このように、灰原哀という少女はいまひとつ素直ではなく、また幼児化していながら必要がない限り「子供の振り」を敢えてすることがない、冷徹な印象を与える性格であることを示すエピソードが、このほかにも数回に渡って散見されます。
その一方で、自分の存在に罪悪感を感じているようで、周囲を巻き込むくらいなら自身の死を以てすべてを解決させることを選択する傾向も、一時は見られました。第29巻FILE.3「見えない恐怖」からはじまるバスジャック事件や、第42巻FILE.5「満月の夜と黒い宴の罠」からはじまる満月の夜の二元ミステリーがその例となるエピソードです。
しかし、前出のバスジャック事件の最後にコナンから「自分の運命から逃げるな」と言われたことや、第42巻FILE.11「雨中の刻印」からはじまる通り魔事件で「逃げてばっかじゃ勝てないもん!!」という歩美の言葉を聞いたことによって、逃げない、生き抜く意志を強くしていく過程をしばしば見せるようにもなりました。
その決意の表れとして、第43巻FILE.2「灰原哀の決意」ではジョディから提示されたFBIによる証人保護プログラムを断っています。
同時に、寡黙で表情をあまり変えない、護りが堅いクールビューティというキャラクターが変容をはじめ、次第に感情や地の性格を見せるようになってきています。
ネタバレ考察3:灰原哀の意外な一面
出典:『名探偵コナン』92巻
前項で見ました通り、初期の哀は頑なな態度で自分をなかなか開かない人物でしたが、物語が進行するにつれ、徐々にではありますがキャラクターがやわらかくなってきています。
たとえば、第80巻FILE.11「バーボンの正体」ではおみくじを引いて「凶」が出てしまったコナンに自分が引き当てた「大吉」を見せて大変な「ドヤ顔」を見せていますし、第87巻FILE.10「ビッグカップル誕生?!」ではひいきのサッカー選手、比護隆佑の熱愛報道をスマートフォンで見て、点目になって路上に立ち尽くしています。
また、同じく第87巻FILE.10では比護選手の熱愛報道を信じたくないばかりに目の下にクマをつくりながら毛利探偵事務所に乗り込み、比護選手と熱愛報道の相手である沖野ヨーコの素行調査を依頼し、「もちろん無償で!!」と付け加える大胆さと周到振りをあらわにするという、初期のイメージからは想像し得ない姿を見せています。
さらには、第92巻FILE.10「真っ白な気持ち」では自分の頬に「あ」と言う文字を書こうとして失敗したナルト状の書き損じをつけたままドヤ顔を見せるなど、最早やギャグも担当できるキャラクターに昇華しつつあります。
そのほか、自称する年齢(18歳)の女性らしくファッション誌を読んだり、ブランド物をほしがったりする場面も時折見かけられます。少年探偵団の面々やコナン、阿笠博士たちには随分打ち解けて、見せる表情も連載初期と比べてかなりやわらいできています。いずれ、素直なままの自分の姿を見せられる日が来るのかもしれません。
ネタバレ考察4:灰原哀が感じる「匂い」
出典:『名探偵コナン』29巻
「わかるのよ匂いで…組織の者だけが発するあのイヤな…」(『名探偵コナン』29巻から引用)
第29巻FILE.3「見えない恐怖」で哀はこのように言い、乗車したバスに同乗した黒い服装の男性を黒の組織の者ではないと判断しました。
「別に変な匂いなんてしねーけどなぁ…」
「ふざけないでくれる…?」
(『名探偵コナン』29巻から引用)
哀の言葉を受けて彼女の衣服をかいだコナンに呆れていることでわかる通り、この「匂い」とは実際に鼻でかぎわけるものではなく、当該人物が発散させる「気」のようなものや雰囲気的なものと捉えるのが妥当でしょう。
このとき同時に、第24巻FILE.7「裏切りの街角」からはじまる杯戸シティホテルでの一件のときにもピスコやベルモットの匂いを感じていたと哀は語っています。
この「匂い」による察知能力の感度はかなり高いものです。第38巻FILE.1「新兵器」では面識もなくただ擦れ違っただけの赤井秀一の気配に気付き、第64巻FILE.1「一角岩」では沖矢昴に対して「匂い」を感じています。
沖矢昴の正体はかつて黒の組織に「ライ」として潜入していた赤井秀一ですから、これ等の例は「匂い」による組織の構成員の判別としては「当たらずとも遠からず」と言えますが、感度は高くとも精度が高いとは言えないようです。
その一方で、第35巻FILE.9「消えた光彦」では末端とは言え黒の組織に属している沼淵己一郎を目視しながらも何も感じることがなく、哀自身が「どうして?」と自問しています。やはり末端の者と幹部クラスの者とは発散するものが異なるのでしょうか。
また、第78巻FILE.1「ミステリートレイン〔発車〕」からはじまるベルツリー急行車内での一連の事件以降、たとえば第80巻FILE.11「バーボンの目的」からはじまる花見でのスリ事件に容疑者として関わっていた弁崎桐平とその妻・素江は安室透ことバーボンとベルモットが変装した姿だったのですが、不審を感じるものの、「匂い」即ち気配を感じ取るまでに至っていません。
このように、「匂い」による黒の組織を察知する能力は、ベルツリー急行での事件を境に徐々にではありますが、弱まってきていると考えられます。