不条理でナンセンスな作風が熱狂的な支持を得ている長尾謙一郎。2014年に連載が突如「とある権力からの勧告」を受け打ち切りとなり、物議を醸した作品『クリームソーダシティ』が、ついに完結します。言い得ぬ狂気をはらんだ彼の作品を振り返ります。

1999年から2005年までの6年間にわたり連載され、初期はただそのギャグの過激さをおもしろがる側面が強いですが、回を重ねるごとに印象が変化していきます。セツコやその家族を中心としたドタバタ劇が、いつのまにかただ破天荒なだけだったサブキャラクターの内面を描写する群像劇となり、最後は宗教や精神世界を描くカルト的な展開に。序盤から過激な描写はあるため、後半も確実に地続きではあるのですが「これは笑っていいのか?」というシーンが増えていき、読みながら自分の笑いの瀬戸際を探るスリリングな体験になっていきます。笑いの瀬戸際は、倫理観の瀬戸際でもあるからです。
- 著者
- 長尾謙一郎
- 出版日
自室に10年以上引きこもり、夜な夜な「ギグ」と称したイタズラ電話をかけるロッカー風の男・竹ちゃん。彼を偏愛し、頼まれたら渋谷に覚醒剤まで買いに行ってしまう母親。スピード感のあるコマの運びとすぐには理解できない登場人物の行動に、緩急の激しいジェットコースターに乗っているような感覚を覚えます。
- 著者
- 長尾 謙一郎
- 出版日
- 2008-03-01
江ノ島で2人きりの夏を過ごすバンさんと彦一の感情描写は度を超えて耽美。ですが、バンさんは禿の中年男で、彦一も美青年とは言い難く、強烈な絵面は完全にギャグ漫画。純愛ロマンスとギャグ漫画、2つの要素が切り離すことができないまま混在しています。ただ笑うのもちょっとはばかられ、かといって純粋なラブロマンスとしては突き抜けすぎている。、アンビバレントな読書体験は、笑いの瀬戸際を探るようだった『おしゃれ手帖』ともリンクします。
- 著者
- 長尾 謙一郎
- 出版日
- 2010-12-01
今回の主人公は漫画家の謙一郎。そう、長尾謙一郎本人をモチーフとしています。ある熱帯夜、いつものように原稿を描いていた謙一郎の家に、シモーナと名乗る大柄な黒人女性がやってきます。シモーナは、自分は謙一郎のファンだと言い、インターホンのモニター越しにしゃべりはじめ……。
- 著者
- 長尾 謙一郎
- 出版日
- 2010-11-29
狂信的ともいえる正義、国家権力の陰謀など、テーマは前作『PUNK』で描かれたものと地続き。しかし享楽的なクリームソーダシティのイメージが、鬱屈した現実世界の話の中に不自然な明るい静けさをもたらしています。
- 著者
- 長尾 謙一郎
- 出版日
- 2017-06-13
ギャグ漫画家としてスタートし、次第に不吉なシチュエーションで緊張感のあるストーリーを紡ぐ唯一無二の存在へと変貌した長尾謙一郎。どの作品においても、不穏な空気感の中で予期せぬ笑いが繰り出され、その緩急が癖になる作家です。気になった方はぜひ手にとってみてください。