エピソードの集まりが文学作品を構成する。全体を積み上げる煉瓦として地味に力強い話もあれば、一気に作品全体を切り裂き破壊してしまう話もある。ここに示すのは後者である。あなたに読む力があるならば、エピソード一つで作品、いや世界全体を捕まえることも可能だろう。

小説の中に本筋と関係ないエピソードが唐突に入る。
- 著者
- ハメット
- 出版日
- 1961-08-25
「野ざらしを心に風のしむ身かな」
- 著者
- ["松尾 芭蕉", "中村 俊定"]
- 出版日
- 1971-11-16
悪魔に魅入られたカラマーゾフ家の次男のイワンは弟のアリョーシャに「大審問官」と呼ばれる不思議な物語を語る。一つのエピソードにしては、これも重過ぎるだろう。イワンが「否」を突きつける相手は「神」なのだから。
- 著者
- ドストエフスキー
- 出版日
- 2006-11-09
旅の途上、行き暮れた道で一人の僧侶が野宿をする。夜中に咽喉の渇きを覚えた彼が手探りすると、水の入った器に触れる。手に結んで飲んだ水は天井の甘露のごときうまさだった。翌朝、目覚めた彼が見たのは、行き倒れの髑髏に溜まる腐った水だった。
- 著者
- 三輪 太郎
- 出版日
- 2015-11-11
桜は春の瞬間に咲き乱れる。
花に満ちた平和で華麗な風景が本当の世界なのか? 花が隠す汚物にまみれた世界が本当なのか?
文学上のエピソードも花の様に世界を顕現する。もしくは世界を隠す。
時には一つのエピソードに拘ってみよう。