春といえば桜。私はいつからか桜を見ると「畏れの念」を抱くようになりました。散り際などは特に。幻想的、と言ったら聞こえはいいですが、それ以上に自分の意識が圧倒されるような「恐ろしいもの」に見えてしまうのです。もしかしたら同じような感覚をお持ちの方もいるかもしれません。「美しいものには棘がある」というような言い方もあるように、美しいものには何か「魔性」で「外道」なところがあるような気がします。今回は、桜を切り口に「魔性」や「外道」が垣間見える3作品を紹介します。

ある峠の山賊の男は、通りがかった旅人を身ぐるみ剥がし、気に入った連れは自分の女房にしていました。この峠にあるものはすべて自分のものだと豪語する彼ですが、唯一桜の森を異様に怖がります。なぜならば、「花の下は涯(はて)がない」という漠然とした不安に駆られ、満開の桜の下では「怖ろしくなって気が変に」なってしまうからです。そんなある日、妖しくも美しい女と出会い、彼の生活が一変します。ここから先は読んでのお楽しみですが、桜の森の満開の下においては、美醜、生死といったものが清濁併せ呑まれてしまう大きな力があることに気付かされます。
- 著者
- 坂口 安吾
- 出版日
- 1989-04-03
気に入った美しい女を見かけると、何かに憑かれたようにその後を追ってしまう奇行癖のある男・銀平が、女からの告発を恐れて季節はずれの軽井沢に逃げてくる場面から物語は始まり、銀平の行動を追った「現在」を軸に、適時銀平の「回想」と女の物語が語られていきます。
- 著者
- 川端 康成
- 出版日
- 1960-12-25
『少女外道』は、戦中戦後の少年少女の歪んだ想い、芽吹いていく性への関心など、いわゆる思春期特有の無垢の残酷さが描かれた皆川博子の短篇集のうちの一つです。
- 著者
- 皆川 博子
- 出版日
- 2013-12-04
今年の花見は今回紹介したような本を携えて物思いに耽ってみてはいかがでしょうか?もしかしたら今まで過ごしてきた春とは少し違った不思議な経験ができるかもしれませんよ。