探偵事件簿2:親思いの偽東大生に協力せよ!
いつも通り暇な五郎とグレさんは公園の芝生でお昼寝中。そんな時、ひとりのおばあさんにこの近くに探偵事務所はありませんか、と聞かれ、自分たちの事務所に連れていきます。
依頼内容を聞くと、東大に通っている息子に教えられた下宿先を訪ねたものの、そこに彼がおらず、どうにか探して欲しいとのことでした。
しかし東大に彼の学籍はなく、ターゲットの一郎が嘘をついていたことが分かります。情報が少なすぎる人物を見つけられる訳がないとあきらめかけたその時、偶然の力で(作者いわくページ数の関係で)あっけなく見つかります。五郎は彼になぜ嘘をついていたのかを聞きます。
一郎が嘘をついていた訳は実は母親のため。依頼人の彼の母親は70歳という高齢で、彼は遅い時期の子供でしたが、上の兄ふたりが亡くなってしまい、彼にかかるプレッシャーは大きくなっていったのです。東大に入れば安心だと思っている母親のために、そしてもう長くはないであろう彼女に余計な心配をかけさせないために、一郎は五郎に嘘をつき続けさせてくださいとお願いします。
心を動かされた五郎は協力することを決め、一郎は母親に嘘をついたまま彼女と再会、観光に連れていきます。自分の大学だということになっている東大、二重橋に新宿の超高層ビル、東京タワー。一郎は年老いた母親を心配しながらも田舎からきた彼女に様々なものを見せてあげるのです。嘘はついてはいるものの、母親を大事にしたいと言う気持ちが伝わってきます。
その翌日、事務所にお礼をしにきた一郎の母親。最後に東京大仏を見たいという彼女を五郎が案内することになります。
そこに案内され、大仏の前で長いこと真剣な表情でお願い事をする彼女。五郎が何を祈願してるのかと聞くと、一郎が来年こそは大学に合格しますようにと願ったのだと言います。驚く五郎に、彼女はこう続けます。
「最初からわかってましたよ(中略)
あの子はきっとあたしを安心させようとしてウソをついたんや…
昔からそういう性格の子やった…
探偵さん…あたしが気がついたということは内緒にしておいてください
あの子に余計な心配はかけとうないんです…」
そんな彼女の様子を見て、何と声をかけていいかわからなくなってしまった五郎はせめてもとお寺を降りる階段をおんぶさせてくれと申し出ます。遠慮する彼女を説得し、五郎は彼女をおぶって階段を降りていきます。
「長生きしろよ おばあちゃん」
そう五郎が語りかけた彼女の熱い涙が彼の首筋を濡らしていた頃、あかつき事務所ではお昼寝の時間に入っていました。
母を思う子の気持ちと、子を思う母の気持ちがねじれた状況でまっすぐに心に響いてきます。どちらも相手を大事に思うからこそ嘘をついていたのですね。そしてそんなじんわりと気持ちが暖かくなる話の終わり方も秀逸。くどくなりすぎず、あっさりと人情を描いた1話です。
ハラハラしない名作探偵漫画『ハロー張りネズミ』を読もう!
- 著者
- 弘兼 憲史
- 出版日
この後もシャブ中のストリッパーから訳ありカップルまで様々な依頼人が登場します。すべて笑えて人情が沁みてと味わい深い話です。そのじんわりと癒される雰囲気は作品でしか味わえないもの。ぜひ本編でその世界観を楽しんでみてください。
コミックス版は全24巻、文庫版は全14巻で完結しているの一気読みもおすすめです!