3位:高校教師が計画する完全犯罪『女子高生に殺されたい』
センセーショナルなタイトルで話題を集めた『女子高生に殺されたい』は、古屋兎丸の画業20周年記念作品として注目されました。
「女子高生」に「殺されたい」と願う主人公・東山春人の願望と妄想を軸に、どうやったら「殺されることができるか」を綿密に練っていくという斬新なストーリーです。被害者が完全犯罪を企むって、通常では考えられませんよね。そんな東山の異質な気持ち悪さ、執念を存分に堪能できる1冊です。
- 著者
- 古屋 兎丸
- 出版日
- 2015-02-09
東山のひたすら気持ち悪い(褒めています)願望のために淡々と計画を実行していく様子が、高い画力とポートレイトのようなコマ割りで強調されて、次から次へとページを捲ってしまいます。
「自分が殺されることを考えると性的興奮を感じる」東山が理想とする殺され方が非常にめんどくさいです。
「一発で死ぬのはだめ」「何回も繰り返され、自分の想像を上回る苦痛がいい」とか「できれば文科系の細い女の子」とか、「自分のために罪を償わせないために完全犯罪がいい」とか、めんどくさい。そんなの実行できるわけない! と思いきや、実行できちゃう理由があったんです。
東山は無事本懐を遂げることができるのか?と気になって、最後まで目が離せません。
淡々としながら戦慄するようなラストが待っていますよ。気持ち悪さに耐性がある人は、ぜひ読んでみてください。
2位:絵を使って人を助ける『幻覚ピカソ』
王道の学園ものに、「死んだ人間が現れる」、「絵の中に入っちゃう」というファンタジーな内容を盛り込んだ『幻覚ピカソ』は、古屋にとって初となる少年漫画です。そのためか、エログロは控えめな印象ですね。
事故に巻き込まれて死んでしまったはずのピカソこと、主人公の葉村ヒカリ。本当は死んでいるため、体は腐敗を始めています。しかし、「人助け」をすれば腐敗も止まり、生き続けることができるため、仕方なく、得意の絵を使って「人助け」をしていくという展開で物語がはじまります。
- 著者
- 古屋 兎丸
- 出版日
- 2009-02-04
人助けをしないと、自分が腐って死んでしまう……! というのにも関わらず「だって僕他人がどうなっても別にかまわないしっ」などとのたまいます。……ひどいですね。ひどいです。
人間の深層心理を絵として描きだすことができるようになったヒカリが、その絵の中へダイブすることで人間の心の奥底の悩み苦しみを解決して「人助け」をしていきます。人助けをし続ける先に、ヒカリは何を思うのか……。「絵が友達」だったヒカリが、人助けを通じて友人を増やしていったり、ヒカリ自身も成長したりと、個性豊かなキャラクターがたくさん登場して物語を彩ったりと読み応え満点です。
コミカルでわかりやすい学園生活の描写、ファンタジー要素、描きあげた絵から深層心理を探る謎解き……と盛りだくさんの内容ですが、設定に破綻がなく無理もない。これで面白くならないはずがありません! さらに最終章へ向かうストーリー展開にいたっては、ハラハラする要素も加わりページを捲る手が止まりません。
圧倒的な画力で描かれるアートのような絵の世界は、ずっとみていたくなるほど素晴らしいです。スッキリとまとまりよく完結する物語は、爽やかな読後を約束してくれるはずですよ。
1位:真面目に愚直に一直線に、時々不正も行います『帝一の國』
映画化にもなり話題を集めた『帝一の國』は、日本一の超名門・海帝高校での「生徒会長選挙」をめぐる、男達のアツい物語です。
「総理大臣になり自分の国をつくる」という壮大な目的のためにまい進する主人公・赤場帝一と、彼を取り巻く個性豊かな(豊かすぎる?)登場人物たちとが繰り広げる学園コメディ漫画です。総理大臣になっても自分の国がつくれるかどうかはともかく、そのために海帝高校の生徒会長を目指す帝一の、戦いの行方はいかに?
- 著者
- 古屋 兎丸
- 出版日
- 2011-03-04
目的は「選挙」に勝つことのみ! それ以外は何もいらないという主人公・赤場帝一の、清々しいほどの目的意識、見習いたいものです。
生徒会長選挙に勝つためなら手段を選ばず、高校生のくせに買収、選挙妨害や姑息なまでの勢力の取り込み工作など、「選挙」という一見地味にも思える設定に彩りを加え、ワンイシューの物語でありながら、全く飽きさせず、逆に何倍にも魅力的にみせる演出が随所にほどこされています。さすがです、古屋兎丸。
さらに、帝一と恋人の美美子、そしてライバルの1人、大鷹との三角関係や、ライバルたちとのアツき戦いといった青春特有の青臭さもプラスされているため、物語に緩急とコミカルな要素がうまれ、グイグイとひきこまれていきます。大真面目なはずなのに、どこか笑いを誘うのは、物語全体に流れるアツさのせいではないでしょうか。ツボにハマると爆笑してしまうんですよね。
名門高校の「生徒会長選挙」を軸に非常にシンプルかつ、青春の暑苦しさもうまく表現した展開で最後までスイスイと読み進めることができますよ。肩肘張らず、でも一風変わった作品を読みたいという人に、特におすすめです。