ここ最近になって、堰を切ったようにアングラ漫画が続々と実写化されています。2016年2月13日に上映が始まった『ライチ☆光クラブ』、そして同時期に映画実写化が発表された丸尾末広の『少女椿』。前者はグランギニョル(説明は後ほど)、後者は日本の見世物小屋が舞台・テーマとなっています。「グランギニョル?見世物小屋?なんだそれ?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、妖しくも魅力的な「見世物(小屋)」が舞台・テーマの漫画を3冊ご紹介します。

- 著者
- 丸尾 末広
- 出版日
貧しい家に生まれ、花売りをしながら病身の母と2人暮らしの生活を送る少女みどりは、母親が無残な姿で死んでしまったある日の夜を境に孤児となってしまいます。以前、彼女に声をかけた山高帽のおじさんのもとへ向かい、連れて来られたのは異形の芸人たちが働く『赤猫座』という見世物小屋(寺社の境内や盛り場で臨時に掛小屋して芸能および種々の珍奇なものを見せて、入場料をとる興行物)でした。そう、山高帽のおじさんはそこの主人だったのです。
見世物小屋の下働きとして使われるはめになってしまったみどりですが、小屋の芸人たちはなにかにつけてみどりを虐め、彼女もまた障がいを持つ芸人たちを化け物呼ばわりし、嫌悪感を露にして罵ります。
ある日、手品使いと称して不思議な幻術を操る小人症の芸人・ワンダー正光が仲間入りしてから、みどりを巡る状況も一変していくのですが…。
紙芝居版では、母子不幸ものの筋書きをならってハッピーエンド(?)を迎えるのに対し、丸尾の漫画版では、終始エログロ描写と暗い雰囲気が漂い、結末も後味の悪いものになっています。
ファンからすると、「見世物小屋」と「異形の芸人たち」の描写がどのようになるのか、というところが懸念事項としてあるようです。どちらも現代ではいわゆる「見てはいけないもの」「露出してはいけないもの」というカテゴライズをされており、一時期はメディアでも取り上げられていた芸人たちもパッタリと登場しなくなりました。見世物小屋も今では風前の灯火で、そこで見せる芸も「規制」がどんどんかかってしまっています。
「規制」だらけの現代、この作品をいま実写化するという試みはかなりの挑戦だと思います。どこまでが許され、どこまでが許されないのか、行く末を見守るばかりです。
『少女椿』について詳しく知りたい方は<漫画『少女椿』の魅力をネタバレ考察!グロくて悲惨なのに、どこか美しい?>をご覧ください。
螢光町の片隅にある少年たちの秘密基地「光クラブ」では、帝王として君臨するゼラを筆頭とする9人の少年が集い、ある崇高な目的のために「機械」を作り、「ライチ」と名付けます。ライチは「美しいもの」を連れて来るよう命令されますが、「美しいもの」とは一体何なのかが理解できず、見当違いなものばかりを集めてきます。
- 著者
- ["古屋 兎丸", "東京グランギニョル「ライチ光クラブ」"]
- 出版日
- 2006-06-01
舞台は戦争末期。抑圧的で先の見えない時代に、見世物小屋の一座として糊口をしのぐ、「異形の家族」がいました。
- 著者
- 近藤ようこ 津原泰水
- 出版日
- 2014-03-24
いかがでしたか? 見世物小屋の魅力は、密室の小屋の中で行われている「いま―ここ」を共有した共犯者としてしまう空間、そして、だまし/だまされつつも暗黙の了解としてそれが許される空間です。しかし、前述したように様々な「規制」が厳しくなった現在、見世物興行は風前の灯火となっています。それは、見世物(小屋)が舞台となった作品も同様です。今回紹介した作品を通して、少しでもそれらの魅力が共有できたら幸いです(『少女椿』と『ライチ☆光クラブ』はエログロ描写が強めなので、耐性のない方には『五色の舟』をおすすめします)。